3.同じ‐龍緒side

 斗神龍緒の目の前で、祖父──斗神悟志とがみさとしが微笑んでいる。その微笑みを見ればだいたい言いたいことはわかるが、龍緒はなにも言わないでいることにして、視線を反らした。


「赤い糸が繋がったんじゃな」


 その言葉に、龍緒の肩がピクッと勝手に反応した。そして、龍緒の家族が、一斉に龍緒を見た。本来、赤い糸が繋がっている事はあまり口に出さない。口に出してそれを言ってしまうと、それは消えてしまうから。


「父さん……」


 龍緒の父親──斗神優斗とがみゆうとが呟く。それに答えるように、祖父はこう言う。


「今回は大丈夫じゃよ。龍緒の指に他の糸が繋がっているんじゃから」

「他の糸……」

「たぶん、それは緑色じゃろう……。ワシも聞いたことがあるだけで見えたことはない。何でも、緑色の糸は家族の糸と呼ばれ、家族との繋がりを示すそうじゃよ」


 龍緒は悟志の言葉を聞きながら、こう感じていた。


(だから……)


 今はもう冬。入学式からだいぶ時間が経ったが、入学式の時に声をかけてきた女の子──樹深彩葉の事はよく覚えている。そして、今はよく話もする。たぶん、大学の中で一番話している気がする。


(樹深も、糸が見えているのか……、オレと同じ様に)


 それを思うと不思議と嬉しくなる。そして、同時に、それは龍緒の幼い頃に思ったことが叶っているから。


“糸が見えるヤツと友達になりたい”


 家族以外で糸が見える人に会った事はない。例え、会えたとしても、それは言えない。だから、常に秘密にしてきた。これからも秘密なのは変わらない。でも、同じ様に糸が見えている。これが知れただけでも嬉しい。


「緑色の糸は何をしても消えないと聞くが、その子の事、大事にするんじゃよ。龍緒」


 その言葉に素直に頷いていた、龍緒だった。

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