4.告白‐龍緒side
相変わらず、“たつ”と聞くと反応してしまう。それは、彩葉も同じようで、8月頃から、龍緒の“タツ”と樹深の“タツ”で一緒にいると「タツタツコンビは今日も一緒か」とよくからかわれるようになってしまっていた。龍緒としては、全く気にしていないが、彩葉の方はその言葉を聞くと、逃げる様にどこかに行ってしまう。だけど、それも12月になると、気にしなくなってくれたようで、逃げなくなっていた。
そして、12月というと、赤い糸が見えている龍緒には気になることが出来ていた。それは彩葉の小指に絡まった赤い糸。その糸の先が誰なのかも龍緒にはわかっている。そして、彩葉の左の小指に在る赤い糸は龍緒の左の小指に繋がっているのは入学式の時からわかっている。だが、龍緒自身、恋愛に興味がなく、恋愛スキルが全くない事は自覚している。だから、彩葉と友達という関係性を大切に築いてきた。でも、今は、友達という関係性だけでは、彩葉との関係性が無くなってしまう。誰かに、彩葉をとられてしまう。彩葉は誰かのモノではないのはよくわかっているが、それは嫌だった。だから、龍緒は大学の講義が終わった後、あまり人目につかない、そして、ほとんど人が来ない大学の第2図書館に彩葉を呼び出していた。
「もう帰るところ、悪いな、樹深……」
「大丈夫だけど……」
龍緒は、キョロキョロと本棚を見ている彩葉を見る。そして、彩葉と繋がっている、赤い糸を見つめる。
(赤い糸……)
そこにはもう1つ赤い糸が彩葉の小指に絡まっている。それを見て、龍緒は彩葉を見つめ、口を開く。
「あのさ、樹深は……、覚えてるか? 入学式の事……」
入学式という単語に反応し、彩葉が視線を反らす。
「あの時はいきなりで驚いた。だけど、今ならちゃんと返事が出来る。だから、オレの気持ちを聞いてくれ、……彩葉」
そう言って、龍緒は彩葉にゆっくり近づく。そして、彩葉の耳元でこう囁いた。
「オレの奥さんになってください。オレと家族になろう」
彩葉とは友達であり、恋人ではない。だから、この言葉を付き合う前に言うのはなんだか変な感じもする。これではまるで、プロポーズをしているような感じだ。そして、ゆっくり、彩葉から離れ、彩葉の顔を見ると、その顔は赤く染まっていた。
「返事を、……くれますか? 樹深、彩葉さん……」
その言葉に、彩葉がゆっくりと頷いた。
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