2.糸の先にいた人‐彩葉side

 緑色の糸をたどり、誰に繋がっているのか確かめたい。その想いに素直に行動する彩葉。


(私だけの、大切な家族……)


 そして、相手の左の薬指に繋がっているのが目視できるところまで行き、相手の顔をゆっくりと確認する。


(強面(こわもて)……)


 それにしり込みしたくなる。だって、その強面の感じが、樹と楓を思い出すから。


(この人も……──)


 そこまで考えて、思考するのをやめた。大好きな祖母──よみの言葉を思い出したから。


“人は見た目だけじゃあ、わからないんだよ。ちゃんと中身も見るんだよ”


 よみの言葉に背中を押され、彩葉は緑色の糸が繋がっている人に近づいていく。そして、こう言った。


「初めまして、樹深彩葉です。私と、家族になってください」


 そう言って、頭を下げた。元々、恋愛に興味がなく、家族にはもっと興味がない。だから、どうやって、関係を作っていくのかわからない。そして、友達もあまりいなかった。だから、素直にそのままの気持ちを初対面の男性に言っていた。

 そして、頭をあげると、緑色の糸が繋がっている人は唖然としていた。


「はい?」


 肯定の返事ではないことはわかる。でも、この先、どうやって声をかけたらいいかわからない。彩葉が緑色の糸が繋がっている人を黙って見つめていると、緑色の糸が繋がっている人の隣にいる人が助け船を出してくれた。


「いきなり、家族、じゃなくて……。まずは……、友達からなら良いんじゃないかな?」


 そう言って、彩葉に言って、微笑みながら言ってくれた。その言葉を聞いて、そうだったと納得していた。


「ほら、タツもそうだろう?」


 同意を求めるように、タツという人を見ている。


「あぁ……。友達から、なら……。ヨロシク、樹深さん……。オレは龍緒たつお斗神とがみ、龍緒……」


 そう言って、差し出された右手。その右手と握手しながら、彩葉は、龍緒の左の薬指に在る緑色の糸を見て笑顔になる。


「斗神君、友達から、ヨロシク」


 久しぶりに、緑色の糸を見て笑顔になれた彩葉だった。

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