7.試作のクッキー
クッキーを手に取り、口へ運ぶ佳宮を見つめる夏伊。そんな夏伊の事は気にせず、クッキーを咀嚼する佳宮。
今日は日曜日。クッキーを作ったのは土曜日。作ったは良いが、今回は試作にしようと決め、クッキーを作った。いつもよりも気楽に作れていることは確かだか、愛美に渡すということを考えると、やはり、力が入る。作りたてのクッキーを家族にも食べてもらったが、言われた言葉はこれだった。
“美味しい。ちゃんと夏伊の気持ちが伝わるから大丈夫よ”
“覚悟を決めろ、男だろ!”
母親──
「そんなに気になるのか? 味が……」
「いや……、味じゃなくて……」
「じゃあ、なんだよ」
そう言われると、答えられない。佳宮とは、赤い糸とは別の糸の繋がりだ。だから、夏伊の気持ちは、夏伊が作ったお菓子を食べたところで伝わることはない。夏伊が黙っていると、佳宮が何かを察した様に、口を開いた。
「神板さんに自分の気持ちが伝わるのが怖いのか?」
その言葉に無言で頷く夏伊。それを見て、佳宮がため息をついた。
「大丈夫だよ。ちゃんと受け取ってくれる、神板さんは」
佳宮を見ると、夏伊に視線を合わせず、窓の外を見ながら話してる。
「一応、おれも、神板さんとは繋がってる。お前とは色が違うけど。だから、わかるんだよ。神板さんはちゃんとお前、夏伊の気持ちを受け取ってくれる」
「ミヤ……」
佳宮を見てると、小学校三年生の時を思い出す。あの時とは逆だ。あの時は夏伊から佳宮に踏み込んでいった。
「ありがとう、ミヤ。やっぱりミヤは優しい。ミヤと友達、いや、親友で嬉しい。ありがとう」
「なんだよ、照れるから……よせよ」
そう言って、夏伊から顔を反らす佳宮。佳宮の耳は、ほんのりと赤くなっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます