第358話


 原型が分からなくなってからも膨張をし続ける管理人の向け、離れながらもカイが魔法を撃ちこむと、当たると同時に白色が多めの灰色の液体をまき散らす。

 氷を打ち込んだ時は、氷は栓となり止まると表面がウネウネと動き魔法を飲み込む。

 炎を打ち込んだ時は、表面に燃え移るが同じようにウネウネと動き炎を包み込み取り込む。




 ぶくぶくに膨れ上がった管理人だった物は、高さが10mほどまで大きくなり腕や足らしき物が残っていた。だが重さに耐えられないのか手足は伸ばし切った状態でまるまるとありえないほどに太っており、胴体の割には短い物だった。

 手足以外は認識できない塊に魔法を撃っても吸収されるだけで無意味なためどうするか悩んでいると、とつぜん灰色の塊が震えだす。かなりの強さで揺れるためカイのいる場所まで揺れる。

 その揺れもすぐに収まり、塊を見ればカイに一番近いところの皮膚?が避け始めていた。それスパっと避けるのではなく、千切るように避けていく。

 灰色の液体を大量に流しながら避けるため奥に何があるのか全く分からなかったが、あるところまで避けると液体の出も遅くなっていき奥にある物をむき出しにする。


 奥にあった物は目だった。それも人が1人横に並んだとしても高さ・大きさ共に負けてしまうほどに大きな物。人間でいう白目の部分は胴体よりも少しだけ黒っぽい色合いになっていて、黒目の部分は黒色だったがハイライトがなく小刻みに動いていて不気味だった。


 震える瞳がカイを捕らえると、腕が動き出す。動くことができず膨れすぎた胴体によってカイに届くはずがなかったが、塊は腕を伸ばしカイに届かせようとする。伸びるときに副産物として生まれたのか、灰色の液体が地面にポツポツと零れ線を作りながらカイを攻撃するために伸びていく。


 上から叩きつけるようにしてきたためカイが素早く避けると大きな衝撃音と共に突風が吹き荒れる。

 風が収まってから塊の腕を見ると、小刻みに揺れ表面が避ける。すると目を閉じた状態の人間の顔を複数浮き出す。

 その全ての顔がゆっくりと一斉に口を開き始める。


(何あれ……気持ちワル。……来るっ!)


 顔を歪めるカイのことなど関係なしに限界まで口が開くと今度は目を勢いよく開く。同時に色々な魔法がカイに向け飛んでいく。

 先程の管理人が使っていた物はもちろんのこと、雷など水といった魔法を一斉に放たれカイを襲う。

 それを自分の目の前に厚い氷の壁を作ることで一時的に防ぐと、横に飛び出し塊に向け駆け出す。

 駆けるカイに向けて魔法を撃っていたが、打ち終わると全ての顔が瞳と口を閉じる。そしてすぐに口を同じようにゆっくりと開き魔法を撃つ準備を始める。

 その隙にカイが近づくと、今度は腕だけでなく体にも顔が生み出される。

 胴体にできた顔は腕にできた物よりも大きく、口からは魔法ではなく小さな灰色の塊が吐き出される。

 その塊は床に落ちると同時に小さく震え得ると本体と同じように目を現れ、飛んで空中に漂い始める。


 小さな塊もきょろきょろと周りを見てカイのことを見つけると、それはカイに向けて高速で突撃し始める。

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