第356話
地面に寝ていることに気づき自分に何が起きたのか整理し始める。
(後ろから声が聞こえてすぐに応戦した。したけど当たらなくて、感知すれば数歩後ろにいつの間にか移動してて。次の瞬間には目の前に管理人の顔が目の前にあった……)
腹部に痛みを感じながらも頭を動かしながら飛び跳ねるように起き上がると、上に反応を感じたため視線を上げると遥か高い位置に管理人がいた。
その管理人が徐々に大きくなっていたことで落ちてきていると分かったカイは自分の上に何層にもわたって氷の壁を生み出す。
その壁が破壊されている音がし始める。魔力感知を使えば、勢いが弱まるどころか増して近づいてくる。
最後の壁が壊される瞬間に横に退けてれば、目の前から轟音が響き渡る。それは地面にぶつかったことで起きた音だったが、かなり重い物が落ちた時にしかしない音と振動で、管理人の体の大きさでは出るはずのない音だったことに驚きを隠せないカイ。
「これは便利な体だ。それ故にこれの全てを知るのに時間がかかってしまった。だがそのおかげで色々知ることができた。例えば……」
途中で止めて一瞬にしてカイの目の前に移ると、管理人は腕を上げており以前リオが使った剣とほぼ同じ大きさの剣が握られていた。それを素早く振り下ろしてきたため受け止めると、今まで感じたことがないほどの重い一撃だったためすぐに横に流す。そのため先ほど降りてきたとき動揺に振動は轟音が響く。
「こやつが保管していた
「他にも」
今度は氷を溶かすときに使った炎の尾がカイに迫る。
炎であれば凍らせることができると、蒼炎を纏い触れると先から蒼炎となりだんだんと氷になっていく。そうなれば動くはずがないのだが、氷の粒がパラパラと落ち始めカイめがけて伸びる。紙一重とそれを避けると追尾してくるため、氷柱を作り出し受け止める。
「自分の魔力で生み出した物であれば、今後いっさい魔力を加えなくても操作できる物」
そう言うと、ぶつけて止めたはずの氷が横から伸びてまた追いかけまわし始める。
走りまわるカイに管理人が手を向ければ、炎・雷・土・水を作り出し次々と放たれ始める。
放たれた魔法を避けてもいつまでも追尾してくるため、氷と炎を飛ばし相殺させる。だが、次々と生み出し放たれるためカイが防戦一方となる。
「空間を圧縮し消滅させることも」
カイが次に着地しようとした場所が歪みだしたため氷で足場を作り離れると、その氷の一部が抉れたように無くなる。
相殺させるために放った魔法を圧縮によって消されてしまい、炎か氷を纏った状態でしか対処できない状態になったが、諦めることはなく勝負を仕掛ける。
後ろに大きく氷と炎で層になるように壁を作ると、その壁を蹴り管理人に急接近する。管理人が魔法を飛ばしてくるが生み出した剣でそれを叩き落す。その流れのまま管理人の目の前に剣を叩きつける。叩き落した剣が砕け管理人の視界を奪う。カイはすぐに管理人の上を飛び越えると背中に攻撃を仕掛ける。
腕と手に氷を纏わせる。指をまっすぐにそろえたため刺突のように突き出せば人間など貫通させるのが容易だと思えるほど鋭利になった状態で手を伸ばす。
「自分の意志にかかわらず自動で守ってくれる物などもある」
管理人の尾骶骨あたりから大きな炎の尾が一本出てきてカイの拳に纏わり付く。炎によるダメージはないが、腕を強く縛り付け動かすことができない。そのため足が止まってしまった。それが命取りになることをカイが一番分かっていた。
「終わり、か……」
炎の尾の周りから雷と水、風の大きな尾が生み出される。それが一斉にカイに向けて伸びる。追加でカイのいる空間が氷が消えた時と同じように歪みだす。
腕を抜くことはできず、防ぐことが出来なければ尾で貫かれる可能性があり、防ぐことができたとしても圧縮され消滅してしまう。
「……まだやれるか」
管理人の後ろでは砕けた氷が散漫しており、離れた場所に胴体に切り傷から血を流した状態で片腕に蒼炎の纏ったカイがいた。その腕からは定期的に氷の粒が落ちており、その氷は赤色の氷だったが熱は全く発しておらず地面に当たると同時に砕け溶ける。その場に赤色の、血の跡が点々とできていく。
「逃げ切ることができたようだが、我の想像以下だ。始まりの王と戦うにはまだまだ足りん。準備運動にもならんぞ」
肩で息をしているカイに対して管理人は全く疲れてない様子。その管理人をカイは睨みつけていた。
「息を荒げおって……。もう魔力が枯渇したのだろう。フッ、可哀そうだ。この体は無限の魔力持っている。多様な
喜びが隠せないように声色に歓喜が混ざった管理人の言葉を聞き、カイは睨むのを止め下を向く。それを諦めたのだと勘違いしてもっと気分を良くし大きな声で高笑いをする。対してカイは口角を上げ静かに笑っていた。
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