第354話


 目の前に広がる白い空間に衝撃を覚えながらも警戒しながら前に進むが、いくら進んでも何も変わらない。そしてこの空間に変わってから先程まで大量に周りにまっていた魔力が消失していた。


 しばらく進むと先の方に何かが見えてきたため、走って近づくとそれは薄い水色の球体だった。その球体は鼓動のような音が聞こえ表面が定期的に波打っていた。剣先が届く距離まで近づいた瞬間に、球体から雫が次々に落ちる。ポタポタと落ちる雫はすぐに次が落ちるまでの間隔が短くなり、下にできた水溜まりをすぐに大きくしていく。それはすぐにカイの足元付近に届くまでになっていた。

 水に触れるよりも前に剣を振り下ろすが、それは球体から出た水の触手で防がれてしまった。

 触れるのはよくないと感じ大きく後ろに下がると水がピタリと止まり、地面に広がった物が逆再生するかのように戻りだす。


「~~~~~」

「なんだ……」


 空間内に無機質な音が響く。その音が何だったのかは全く理解ができずについ声が出るのと同時に球体からまたしても水が球体から出る。それは先程とは違いただ水を出すのではなく人間を形作っていき、ついには人間の形が完成する。最初は質感が水だったそれも時間が経つと人間の肌と同じ質感になっていき、ついには人間が目の前に完成する。作られたその顔はどことなくオムニに似ていた。


「~~~~~。成功」


 しばらく先程と同じ理解のできない音声が流れていると、とたんに理解のできる言葉が流れてきたため驚きカイの肩が動く。理解はできたはその声は無機質なものだった。


「侵入経路の追跡を開始。結果……不明。対象を404として登録」


 言い切るのと同時に目の前にいる人間、男性とも女性とも言える中性的な見た目をしたのが目を開く。最初光っていたその瞳も時間と共に収まっていき、黒色の瞳となる。


「……あ、あー。声帯の調子を確認!調子は……絶好調!」


 先程までの無機質な声とは変わり今度は人間のような声になり、その声もオムニに似ている物となっていた。


「データの転送を要請~。来た来た!!……ほとんどが壊れてるね~。ねぇねぇ君は何かわかる?」

「……何も」

「嘘はついてなさそう……。じゃあわかることだけ教えてあげよう!」


 それは両手を腰に当て得意げに話し始める。


魔法道具マジックアイテムの管理とそれの能力とかを収集・整理して保存をしておく場所なのであ~る!!」

「……魔法道具マジックアイテムの保管場所ってこと」

「そうそう!!君頭いいね!」


 嬉しそうに頷くそれは後ろを向き数歩歩くと再度カイの方に向く。


「私に使いたい魔法道具マジックアイテムを教えてくれればどこにあるのか、どんな状況にあってるのかと、いろんなことがわかるのだ!!」

「へぇ~」

「その目!!疑ってるでしょ!!前の管理人から受け継いだばっかりだけど、できるから!君の持ってる魔法道具マジックアイテムだってどんな物なのかすぐにわかるから!」


 ふてくされたような表情を浮かべてから手を横に振ると空中に半透明の板が生まれ、その板に向かってキーボードを打つように指を動かしていたがすぐに顔を曇らせ固まる。


「ふ、不明……。未確認の魔法道具マジックアイテムってこと?!」


 焦ってすぐに独り言と共に板に打ち始める。


「保管されてる魔法道具マジックアイテムは!?……えぇ!!消えてんのあんだけど!ダンジョンに行っちゃいけないのもダンジョン行きになってるし、どうなってんの!?」

「ちょっと……」


 カイの言葉など届いておらず焦ったまま指を動かし続けていると、板の横に垂直に新しい板生まれると今度はそれをいじり始める。


「下に行った魔法道具マジックアイテムは……っ!?」


 次の瞬間その板から水が出てきて管理人を名乗ったそれに纏わり付き始める。それは球体から出た水ではなく、見慣れた黒い水だった。


「外部からの浸食を検知。対処を開始……。失敗。Oレイヤの分離を開始……」


 最初に流れてきた来た無機質な声が流れてきたら、白い空間が赤い空間へと変わりついには黒い空間となる。

 その間に目の前にいた管理人の肌の色が肌色から褐色肌になり、目も白目が黒色に徐々に変わっていく。


「ウ、ィルスの、侵入……!!こ、こまで、強、力だと。……ね、ぇ君。私を、止めて!!」


 白目が完全に黒色に変わり瞳が赤色になると、苦しそうな表情が一変して口角を大きく上げ笑みを浮かべる。


「コんな所にイタのか」


 大きく咳払いすると戦闘態勢に入ってから、まっすぐとカイを見つめ今にでも飛び掛かろうとしていた。


「お前の魔力今度こそいただくぞ、カイ!!!最終決戦だ!」

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