第353話
怒りで理性を失ったハルマはただただまっすぐカイに向かってかける。
対してカイは冷静にハルマの全身を視界に入れ、どこから攻撃が来るのか、どこに攻撃を入れるかを考えながら接近し始める。二人は勢いそのままにぶつかりすれ違う。
すれ違い終わった時、カイの両手には氷と炎の剣がそれぞれ握られており、その二つの剣は常人の目には見えない速度で生み出していた。
すれ違って数秒、5秒もしないでハルマの残った腕の指先から蒼い炎が灯り始める。
カイとハルマがすれ違う刹那の時、ハルマはカイの心臓に向けて残った手を突き刺そうとしていた。それに対してカイは片手に生み出した蒼い炎の剣で受け止めてから、残った紅い氷の剣でハルマの胴体を切りつけていた。
手先から炎は灯り始めると同時に胴体にうっすらと切り目が出来その表面にはうっすらと氷の膜ができていた。炎の勢いが増し、胴体の切り傷がどんどん深くなっていく。胴体の傷からは常人ならば出るはずの赤い血ではなく、黒い水を大量に噴き出す。指先に灯った炎は腕に移っていき、指先は氷ついて行く。
「ぐ、がぁあああ!……よこぜぇえええ!!」
最初は痛みからうめき声を上げたが、すぐに振り返り叫びながらカイに攻撃を仕掛ける。その行動ですら魔力感知で分かっているため、駆け出してくるのと同時にカイは氷の剣を床に突き刺す。すると氷が地面に広がり、その上をハルマが踏みつけると同時に床から先の鋭い氷柱が生まれ胴体を貫く。氷柱が杭の役割を担いハルマのことを止めたが、本人は止まる気がなくカイに向けて手を伸ばす。振り返ったカイはその伸ばされた手を先ほど腕を飛ばした時と同じように切り落とす。
「邪魔をするなぁああああ!」
両手がなくなったことで今度か嚙みつこうとカイに体を伸ばすが届かない。それどころか氷柱は刺さった箇所からだんだんと体が凍り付き体の自由がどんどんきかなくなっていく。
「ゥガァアアアア!!」
「いい加減しつこいよ!」
全力でハルマのことを蹴りつけると表面についていた氷と杭となっていた氷柱が砕け、傷ついたハルマだけは飛んでいく。
飛んで行ったハルマはかなり遠くまで飛んでいき、ついには見えなくなりカイの視界には黒い空間しか映らなくなる。襲撃に備えて集中して魔力感知を使うと真後ろからハルマが飛んでくることを感知する。
ハルマは全開まで口を広げ胴体に向けて飛んでくる。それを氷の剣で受け止めるとハルマは白目をむきながら一心不乱に何度も何度も剣に噛みつく。その様子に不気味さを感じながらカイは首を切り落とすために炎の剣を振り上げる。
「ヨ゛ゴゼ……ヨ゛ゴゼ……ヨ゛ゴゼ……ヨ゛ゴ」
炎の剣の切れ味は鋭く、抵抗を感じさせることなく首を切り落とすことができた。すると胴体からゲル状になった黒い水が頭に向けて伸びてきたため、二つの剣を使い頭を見えなくなるぐらいに細かく切り分ける。行き場を失った水は次にカイに向けて伸びるが、ゆっくりと伸びるそれに脅威を感じさせる勢いはなくカイは先から瞬時に目に見えないほどの大きさに切っていく。
胴体の下に足を滑りこませ蹴り上げ、胴体も全て切ると、床にある細かな紅い氷と蒼い炎しかなく時と共に自然と消えていく。
「……出られない?」
魔力感知でもハルマを感じられなくなったが、この黒い空間はなくならずハルマ1人だけが残される。
どこに行ったら良いかもわからなかったが、進むしかないと思い警戒して進むカイに向けて黒い水が一直線に飛ばされる。顔めがけて飛んできたそれはかなり速く、当たる寸前に剣で受け止める。それにより視界が一度塞がれる。
「っ!?」
剣を退かした瞬間、目の前には先ほどは正反対に白い空間が広がっていた。
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