第345話


 大きな物に押しつぶされようとしているからか、自分たちに近づく手の速度がとてもゆっくり見え、カイ達の周りにいる数人は動きが固まる。それが命取りになるとは思わずに。

 実際にはカイやシャリアが上から手をたたきつける速度と遜色ない、もしかしたらそれよりも早い速度で振り下ろされており、常人よりも素早く振り下ろされるそれに反応できた人は数少なかった。


 危険だと感じ動けた物はすぐにその場から離れるように動き出した。

 そして巨人となったベッセル城の腕がゆっくり動いていると思い固まった者たちは、動こうと思ったときにはすでに遅かった。

 巨人の手が地面と衝突すると同時に轟音が響くだけでなく地面が大きく震える。

 風圧も強く、着地したカイ達に強風が襲い掛かる。着地と同時にしゃがみ込んだ者達は地面にへばりつくことで飛ばされなかったが、立っていた者たちは遠くに飛ばされていく。

 揺れや風が収まったと思うと、今度は逆の手を振り下ろそうと動き出す。それに対して全員が身構えたが、それはフェイクだった。

 上を見ていたカイ達がだったが、横から音がしたためすぐにそちらの方向に視線を送る。すると巨人が今度は片足を上げていた。対処するために動き出したが、それも遅かった。後ろに上げられた片足は蹴る動作をはじめ、地面を抉りながら前に進む。

 カイ達と3人の魔人は避けることができたが、それ以外の魔人達は蹴り飛ばされていく。飛ばされた彼らは目視できなくなるほどまでに遠くに飛んでいく。

 蹴り上げると同時に手も振り下ろしてきたため、カイ達は避けてから再度地面にしゃがみ込む。そして、手を上げようとする瞬間に、ミカとリオが腕に乗り移り、腕を駆け上がって行く。

 それに気づいた巨象はすぐにミカ達のいるところに残りの片手を叩きつける。だが、ミカには高速移動、リオには爪による瞬間移動があるためにつぶすことができずにいた。そして、そんな二人に続いてカイとシャリアも巨人に向けて駆け出す。その二人の手にはリオが使っている爪が握られていた。リオは変えだす前に爪を2本ずつ、合計4本を二人に投げ渡していたのだ。

 カイとシャリアもリオを習って、魔力を爪に込めてから巨人の足めがけて投げ飛ばす。突き刺さったのを確認すると、二人はその場に跳び抱き着く。残った爪を上に方に向けて飛ばし、刺さったのを確認してから近くの爪を回収して次の場所に跳ぶ。それを繰り返して少しづつ上に向かっていく。

 地上に残ったラウラは下から鋭利にした風を飛ばし、巨人の体を削っていく。そして、翼があるアルマとRは飛んで巨人の頭に向かう。いつの間にか透明化を使いいなくなっていたフラージュは、ミカとリオに離れてついて行っていた。


 突き放すために暴れまわる巨人だが、ミカとリオはそれぞれの魔法使いよけ、アルマとRは器用に飛び回り避ける。ついて行っているフラージュは巨人にばれていないのか落とされないように走るだけだった。離れているラウラは影響を受けていなかったため、魔法を放つのに集中する。

 足にしがみついているカイとシャリアが一番影響を受けており、とにかくしがみついて振り落とされないようにしていた。




 暴れまわる巨人の影響で周りは穴が開いたり地面が抉れたり、荒れ放題になっていた。

 ミカ達が肩の部分に到達するのと同時に巨人の体内から強い光が漏れ出し、発光し始める。それと同時に巨人の体内から強い魔力が放たれ始める。

 そして光が収まると巨人の体がはじけ飛んだ。そのため体に乗ったり、しがみついていたカイ達は全員が一様に吹き飛ばされた。

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