第344話


 胴体が溶けたことで生まれた液体は、魔法で飛ばしていた黒い水と同じ色をしており、黒い水溜まりがゆっくりと頭の方向に集まっていく。

 その水溜まりを飛び越し急接近し始めるカイにハルマ?は目線を送るだけ何もしない。魔力も動かないため何もしてこないと判断したカイは、近づき倒すことだけに集中する。

 氷に切り替え、剣を下に向け勢いよくハルマ?の頭めがけて落とす。

 何もすることなく、ただ頭に剣が突き刺さる状況でハルマ?はただただ笑みを浮かべカイのことを見つめる。そして、笑みを浮かべたままのその顔に、カイが剣を突き刺し剣を貫通し、地面に剣先がぶつかった音が響く。その状況でもハルマ?は笑みを絶やさなかった。




 ハルマの顔はだんだんと溶けていき、胴体と同じように黒い水溜まりを作っていく。


 目に見えてハルマの頭に向けて集まっていた水溜まりだったが、目的地がなくなったからか地面の穴に飲まれていく。それは頭が溶けたことによってできた物も同じで、水がだんだん下に流れていく。

 そして、完全に黒い水が下に流れ切ると、周りを覆っていた壁が音を立てて下に沈んでいく。すると、分けられた前よりも疲れた顔をしたミカ達が壁があった場所で武器を構えた状態で立っていた。




 ハルマ?によって壁の中に分断されたカイ。残ったミカ達はすぐさま壁に攻撃を加えたが、傷一つ付けることができなかった。


「この壁、かったいの」

「魔法も全く通しません。早く中に入らないと……」

「魔力を吸収できる彼に私たちが言っても無駄かもしれない。それよりも……お客さん」


 壁を向いているミカ達の後ろ側に黒い水が地面から湧き始め、だんだんと人型になっていく。それは人型になると同時に剣や槍、弓など、色々な武器を持っており、水でできた兵隊だった。

 体が完成すると兵士たちはすぐさまミカ達に向かって飛び掛かる。全員が落ち着いて対応していく。

 先程までのハルマ?とは違い、衝撃を加えるか胴体に穴を開ければ体が崩れたため簡単に倒していく。だが数が多く、1体倒したら2体されており、どんどんと兵隊の数が増えていく。最初は1対1だったが、1対2、1対3、気づいたら1対10になっていた。その状況でもミカ達は最速で倒していき、生産速度よりも早く倒すようにしていく。

 時々、生産速度が落ちるときがあったため、その隙にミカ達は兵隊の数を減らしていった。それはカイが中でハルマ?に致命傷と言っていい傷を与えたときだったが、それはミカ達の知るところではなかった。


 しばらく耐えて倒していくと、ついには生産されなくなったためすぐさま一掃して壁際に集まったという状態だった。


「それでハルマの体に入った副団長だっけ?はどうなったの?」

「頭に剣を突き刺したら水になって流れていったけど……。まだ何か……」


 待っていたと言わんばかりに、カイが喋っているタイミングで地面が揺れ始める。それは自分たちがいる床だけでなく、城全体が揺れているようだった。

 城を覆っていた壁はなくなっていたため、カイ達はすぐさま窓ガラスを割り外に出る。

 Rとアルマ、ラウラの魔法の力を使い地上に無事着地すると、すぐに城を見つめる。

 すると予想通り城全体が揺れており、だんだんと変形しながら落ちてくる。

 城に併設されていた砦が腕となり、足となり、ついには地上に降り立つ。ものすごい衝撃にカイ達は態勢を崩しそうになるがこらえて城を見つめる。すると城の腕の部分が上から叩きつけるように動き出していた。

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