第337話
遊ぶ。そう言うと同時に両手を斜めしたに下ろし手を開く。すると城壁や魔都を覆っていたツタのような物と同じ色の物体が球体となってラスターの手のひらに集まりだす。最初は米粒ほどの大きさだったそれは、数秒もしないうちに手のひらと同じ大きさまで大きくなる。それが手のひらと同じ大きさになると、彼はゆっくりと、まるでボールを軽く転がすかのように両手を上げ始める。そのゆっくりとした動作と相反して両手に出来た球体は高速でカイ達に向けて飛んでいく。カイ達にだったが、正確にはカイとミカに向けてだった。
自分に向かって飛んできていると分かったカイは、手に赤い氷を纏わせその手を伸ばして受け止めるか、握りつぶして消滅させようとする。
だが、伸ばしたその氷の手は少しも抵抗することなく消滅していく。魔都に入るときのツタ同様、それは魔力を吸収する能力を有していた。失速すること無く接近するそれに対してカイ達は避ける他なかった。いくら高速とは言え、カイは察知しているし、ミカは高速移動をする手段を持っている。避けることは困難ではなかった。
危険を感じさせない動きで避ける。そのため標的がなくなったそれは壁に当たる。衝突した箇所は球状抉れる。それはまるで衝突した箇所を消滅させたようだった。
「ふむ。この速度では当たらぬか。ならばこれでどうだ?」
今度は地面と平行になるまで右手を上げると人差し指だけをさすように向ける。同じように指先に集まった物体。だが、先程とは違い米粒サイズでそれ以上大きくならなかった。
指先から放たれたそれは先程の球体とは比ににならない速度で速く、すぐにカイ達の元にたどり着く。
指先の角度からどこに飛んでくるのか、それが分かっていたカイ達は各々回避行動に移る。一撃では倒し来ることができないとラスターも分かっていたのか今度は左手の人差し指も向けて放ってくる。
最初は交互にゆっくりと放たれていた攻撃も、だんだんと放たれるまでの感覚が短くでたらめになり始める。
縦横無尽に放たれるため、次々と部屋の壁が破壊されていく。
高速で次々に放たれる攻撃をカイ達が避け続ける。固まっていたカイ達だが避け続けると同時にどんどん離れ離れになっていく。そのためラスターの狙いもどんどん広くなり、狙いを合わせるまでに時間がかかり余裕をもって避けられるようになっていた。
それを好機にミカが背中側に高速移動で、リオが爪の
両手を左右に大きく広げていたラスターは前後の攻撃を防ぐ方法はなく、背中から槍が刺さり、前から殴られたためにより深く槍が突き刺さる。その刃は背中から貫通し腹から突き出る。
「刃が貫通したところで我には意味ないぞ」
顔色1つ変えずに目の前にいるリオを睨みつけるラスター。危険を察知したリオが後ろに跳んだのと同時に元いた場所にラスターの攻撃が落ちてきて地面を抉る。
このままここにいるのは危険と分かったミカは刃を抜いて脱出しようとしたが、ラスターが刃を握っているため槍を動かすことができなかった。そのため槍を手放し後退する。その選択は正しく。ミカが元いた場所にも、リオの時同様に魔法が降りかかる。
腹に刺さった状態の槍が邪魔だと判断したラスターは槍を抜きとる。ここで抜き取るとなれば刃を押し出し背中の方から抜くかと思うが、彼は刃の方から引っ張り槍を抜き取った。
「多少切れ味がよかろうと我を殺すまでは至らなかったな」
槍を完璧に貫通させたことでぽっかりあいた腹をそのままに、ラスターは槍をポイ捨てするかのように投げる。
「我にどれだけダメージを与えようと殺すことは不可能。諦めるがよい」
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