第333話
声が聞こえた瞬間に武器を出し、まだ体調の戻らないアルマとRを中心にして円陣を組む。魔力感知もしっかり使っているため死角はなかった。
「安心してよ。今は戦う気ないから」
笑いながら話すその声に警戒度を高めながら静かに続きの言葉を待つ。その態度がつまらなかったのか、笑うのを止めて淡々と話し出す。
「他の道は塞いでる。このまま真っすぐ進んで来い」
そう言うと同時に建物の周りが塞がれ始める。日が入ってこなくなったため真っ暗になったが、すぐに壁に掛けてあるランプに火が灯り始める。
周りを見れば無機質な黒い結晶の様な物で来た道が塞がれていた。
「こんな物で閉じ込められると思っとるんかの。壊してみるか?」
「ここは大人しく進んだ方がいい」
壊そうとしていたシャリアを止めたRはフラフラしながら立ち上がる。Rはその足取りのまま壁に手を付く。
「……城に付けられた緊急防衛装置だね。これを壊した上にハルマとラスター君と戦うのは、おすすめ出来ないかな」
「壊れるか試してみたかっただけじゃ。壊すと言っとらん」
アルマとRの体調が戻ったため、カイ達は廊下を道なりに進みだす。
途中で普通ならば分岐になっているであろう場所に当たることもあったが、そこは全て塞がれていたため真っすぐと迷うこと無く進んでいく。
すると広い場所に出る。先程までの石造りの床から土に変わっており、大きな結晶が不規則に地面から生えていた。先程の物は不透明で先を見ることが出来なかったが、ここにある結晶は透明度が高く、向こう側を見透かす事が出来た。また色はさまざまで城と同じ赤黒い物もあれば白色の物、赤、青、黄など本当にたくさんの色の結晶があった。
「ここは」
「備え付けられた訓練場。でも、この結晶は……」
「魔力の結晶体」
先程も聞いた声が聞こえて来たため全員が声の方向に武器を構えて向く。そこにハルマが笑みを浮かべたまま剣を片手に佇んでいた。そのハルマは皆が見ていたのにも関わらず目の前からいなくなり、カイの真後ろに現れる。
「お前から殺すって言ったもんな!!」
縦に素早く振り下ろされた剣をカイは纏っていた腕の氷で受け止め、反撃で拳を腹に叩き込もうとする。拳が当たる寸前にハルマは先ほどと同じ様に目の前から瞬時にいなくなり、拳がギリギリ届かない位置に移っていた。
「反応速すぎなんだよ!」
伸びきったカイの腕目掛けて攻撃を仕掛けるが、周りにいるのはカイだけでない。
横から飛びだしてきたシャリアがハルマのことを殴り飛ばす。衝突したことで結晶が凹み、欠片が地面に落ちる。
「どいつもこいつも邪魔ばっか!うざいんだよ!」
ハルマが地面を殴りつけると、カイ達のいる地面が隆起し始める。跳んで避けたカイにハルマは瞬間移動を使って空中で攻撃を仕掛けるが、ハルマが現れた場所に黒い羽が飛んでいく。その羽をハルマは剣を振ることで叩き落す。
「もう!邪魔なんだよ!」
最初にいた場所に飛んだハルマは持っていた剣を深々と地面に突き刺す。
「気を付けて!」
Rの声が響くと同時に先程地面が隆起した時と同じ様に地面が揺れ出し、壁が現れ始める。その壁はここに来るときに道を塞いでいた不透明な結晶と同じ物で、訓練場にあった結晶と違って、天井まで伸びて行った。
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