7章 決戦 ベッセル城

第332話


 侵入するにあたって問題となったのはカイ達の飛行能力の無さだった。アルマとRは背中に翼があるため問題はなかったが、城は空高くに存在しているため、ジャンプやリオの爪と糸を使って届く距離では無かった。

 だがそのことはここに来る前に分かっていたことだったため、対策が立てられていた。


 ここに来るまでの準備期間中にRは人が乗れる程の鳥型のロボットを作り出していた。R曰く、以前作った馬と大した違いは無いため簡単だったとのことだ。

 緊急で簡易的に作られた物のため空中戦には向かないが、空を移動するのは問題なく出来る程の作りになっていた。

 その鳥にカイ達がまたがると1人でに飛び始めたため、Rとアルマもそれに合わせて飛び始める。




 空の移動のため障害物など存在するはずもなく、周りから視認されるのは当たり前のことだった。自分達のボスがいると教えられている城に侵入しようとする者達がいるとなれば、その存在に向けて攻撃するのは当たり前のことだった。


 飛んで来た魔法に対してカイ達はなにもしなかった。ただ1人、Rだけは忙しく杖を振り回していた。杖が振られると同時に機械の鳥は上昇や下降、旋回をして魔法を避ける。これも事前に話し合っていた通りだった。

 鳥型のロボットは全てRが動かしている物だった。城への潜入後、本人が言うには自分は戦力外になるとのこと。そのためここで魔力をほとんど使いきっても問題ないことからRの魔力で動かせるようにしていた。

 だが、いくらRでも全方位から大量の魔法を撃ちこまれてしまえば回避することは不可能。回避を可能にしていたのは本隊の働きがあるためだった。

 本隊が飛び去ろうとする魔人を優先して対処しているために、カイ達に向かって攻撃してくる敵が減っていたのだ。

 残りの攻撃を仕掛けてくる少数は、鳥に乗っているカイ達が分担して排除していく。




 そうこうしている内に地上からかなり離れており、敵との距離はかなり離れ始めていた。そのためカイ達に攻撃を仕掛ける者達もだんだんと減り、城が目前になる頃にはただ向かうだけでよかった。


 赤黒い城は近くで見るほど禍々しさを感じ近づくのが躊躇われる。近づくカイ達の額に汗が浮かびだす。

 一定の速度で近づいて行くカイ達だったが、だんだんと鳥の速度が落ちて行く。それに気づきRのことを見ると、顔色が悪くなっており、杖を振る腕もだんだんと弱々しくなっていた。

 魔力の使い過ぎかと思ったが、隣いるアルマも同じ様子のためそれだけではないと分かる。アルマの飛ぶ速度も落ち始め後ろにいたリオにぶつかりそうになったが、ぶつかると同時にリオは軽々と抱きかかえる。


「こ、これ以上は……。跳んで!」


 苦しそうに力を振る絞る用に出された言葉を聞き、カイ達は城に向かって一斉に跳ぶ。結界があれば侵入されないと思っていたのか、城は封鎖などされていなかったため簡単に侵入できた。

 床に足を付けるとカイ達はRとアルマを見る。Rはフラフラと飛びながらカイ達と同じ所に着くと、膝をつき息を荒げる。リオに支えられながら立つアルマを見れば、まだ少しだけ顔色が悪いが、Rに比べると大丈夫そうだった。


「魔人、ですら、耐えられない、濃度の、魔力に満ち溢れてる」


 息も絶え絶えに喋るRの言葉を受け、リオは急いで袋から自分達も付けているペンダントを取り出しRとアルマに渡す。すると2人とも顔色がだんだんと良くなっていく。


「幸先そんなんで大丈夫?」


 心配そうだが、どこか馬鹿にするように話しかけてくる声。その声に覚えのあるアルマはただ相手の名前を小さく呟く。


「ハルマ……」


 ここにいるのはカイ達だけだったため、その呟きは酷く大きく聞こえた。

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