第331話


 カイとアルマが合流地点に到着した頃には皆が集まっていた。

 アルマの手に円柱の魔法道具マジックアイテムが握られているのを見て、全員がカイ達の下に集まり出す。


「遅かったの。お主の所の四天王は強かった様じゃの」


 少しだけ落ち込んだ様子のシャリアはそう言いながらRを指さす。

 座っているRは目の前に置かれた3つの円柱に杖を向けて何かをしていた。


「持って来たならこっちに渡して。ちゃちゃっと壊しちゃうから」


 アルマが持っている円柱で4つ。全ての魔法道具マジックアイテムを集めることが出来たため、今はRがそれを破壊するのを待っていた。

 アルマは他の円柱と同じ様にRの前にゆっくり円柱を置く。


「私の所は四天王が持ってたんじゃが、リオ殿とミカの所は屋敷に隠してあっての。カイ達の所はどうだったんじゃ?」

「俺達の所は四天王が持ってました。それと四天王を倒しきることは出来ませんでした」


 カイの言葉に全員が眉をピクリと動かしたが、それ以上反応することは無かった。

 Rが魔法道具マジックアイテムを破壊するまで時間に余裕があり、カイ達は城へと突撃組に含まれているため、地上にいる敵軍の戦闘には参加しないことになっていた。そのためカイが座って休憩を使用としたタイミングでアルマが声を荒げる。


「何で教えなかった!」


 その声に全員がアルマとRに視線を向ける。Rは何食わぬ顔で作業を進めているが、アルマの表情は困惑と怒りが混じったような物に合っていた。


「僕の口から言っても信じなかったでしょ。敵のお坊ちゃんが四天王になってるなんて」

「それでも……!」

「それに、事前に知ってたら絶対にここに来なかった。自分で宣言して望んだことを捨てて逃げる。そうなったら後悔する。僕はそう思ったら言わなかった」


 Rのことを睨みつけてからアルマは1人にしてと言ってその場を離れる。その後を兵士達が急いで追いかける。


「俺が戦った少年のことをアルマは知ってたし、戦闘中にライトルって単語が出て来た。ライトルのことも教えてほしいけど、まずは少年のことは教えてください」


 カイの言葉に先程と変わらぬ顔で反応なんか見せないRは杖を魔法道具マジックアイテムに向けたままゆっくりと口を開く。


「あの少年はお嬢のことを『お姉ちゃん』と呼んでたでしょ。その言葉通り、彼はお嬢の弟だよ。今は四天王をやってて、それ以上でも以下でもない」

「彼は「また殺せる」とも言ってました。それについては何か?」


 今まで止まらなかったRの指が止まる。諦めたように大きくため息をついてからまた指を動かし始める。


「お嬢は一度死んでるんだよ」

「死んでるって……」

「言葉通りの意味でね。それを僕が魔法道具マジックアイテムを使って救った」


 その言葉にシャリアが食いつくように近づき、向きを無理やり自分の方に向かせ肩を激しく揺らす。


「その魔法道具マジックアイテムは?!まだあるのか!!」

「も、もうないよ。あれは1回限りの貴重な魔法道具マジックアイテムで僕の手に渡ったのも奇跡みたいな物だった。もしまた使いたいならダンジョンにでも潜らないと無理だ」


 ひとしきりRの言葉を聞いてシャリアは肩から手を離す。


「シャリア様、魔法道具マジックアイテムは消滅した際、世界のどこかでまた生成されると言われています」

「そうか。まだ望みはあると言うことかの」

「話しを戻すけど、そのお嬢を殺したのが弟である坊ちゃん、ハルマ君なんだよ」


「殺した目的も理由も知らないけど、当時現場に駆け付けた時にはお嬢は亡くなってた。ただおかしな話しでもあるんだよ」

「おかしい?」

「死んだお嬢の黒い羽を抜いて、坊ちゃんは自分でそれを刺したんだ。つまり坊ちゃんは灰になってるはずなのに生きてる。僕達は灰になるのを見たのにね」


 そう言って杖を仕舞いカイ達の方を向くR。


「ま、分からないことは本人に聞けばいい。準備は出来たからね」


 そう言うとRの後ろに置いてあった円柱が粉々に砕け、砂となったそれは風で飛んでなくなっていく。


「侵入出来るよ。さっそく向かおうか!」


 Rはわざと明るい声でそう言うとアルマが戻ってくる。


「ワタシは絶対に目的は果たす。ハルマが邪魔するって言うなら倒して進むだけ」

「良い目になったね、お嬢。必ず救い出そう」


 アルマの宣言と同時に空でガラスが割れたような音が響いた。城を覆っていた結界が割れた音だった。

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