第329話


 監視塔に入ったラウラとシャリアは呑気に歩いて監視部屋まで向かっていた。魔力感知をいくら使っても監視部屋にしか反応が無いためだ。

 監視部屋の前についた瞬間にラウラが全力で部屋に向けて拳を振れば、目の前にいた門番の様な役割をしていた2人も吹き飛ぶのはもちろん、中にいた者達も風圧で気絶していた。

 何もする事が無かったゆっくりとした足取りで部屋に入り見渡すと、杖を構えて部屋の端、天井の辺りに向けて魔法を撃ちこむ。


「どうしたんじゃー」

「監視されてた」

「ふむ。私達が狙う四天王がいる屋敷は確かあっちの方じゃったな」


 壁に手を付き大きく息を吸うシャリア。これから何が起こるのか予想出来たのかラウラは両手で耳を塞ぐ。

 ラウラはゆっくりとした動作で手を引くと、目にも止まらぬ速度で突き出す。魔法道具マジックアイテムも装備しているため壁は音を出して崩れ落ちる。

 小さな声で「よしっ」と呟いたシャリアはラウラの隣に移動すると、胴体を掴んで抱える。


「連絡はしたかの?」

「とっくに」


 シャリアが突入しようとした時点でラウラは魔法道具マジックアイテムに魔力を流し本隊に監視を倒したことを連絡したのだが、これだけ派手に壊したとなれば相手にはバレている。隠密とはどこにいったのだろうとため息をつくラウラは無視してシャリアは両足に力を込める。


「途中の軌道修正と足場づくりは頼んだ」

「……わかってる」


 諦めた表情を浮かべながら、ラウラは杖に魔力を事前に流しておく。

 壊した壁から跳んだシャリア。そのジャンプは常人のそれでは無く、建物を1つ2つと簡単に超えて行く。もちろん勢いがだんだんと失われ地面に近づいて行くが、そこはラウラの出番だった。

 杖に流して魔力を使って風によって作られた足場を即座に作成する。シャリアも魔力感知を持っているため足場がどこに出来たのかと言うのは分かるため、そこに両足が着くとまた力を込めて跳ぶ。

 それを繰り返していれば、目の前に赤黒い物質に絡まれていない大きな屋敷が見えてくる。


「どうする?」

「1つしかないじゃろ。このまま突っ込む!」


 最後に足場で特別高く跳んだシャリアは、落ち始めると同時に蹴りの体勢に入る。そのシャリアの前に風で壁を作り、壊した物が自分達に当たらに用にラウラが工夫を加える。

 屋敷には対空装備など備え付けられていなかったため、2人はそのまま屋敷を破壊して入り込む。


 潜入したそこはどこかの部屋で、右側にはモニターがいくつか設置されていて、左側には数人の魔人が座って作業していた。


「し、侵入sy……」


 声を上げる前にラウラを下ろしたシャリアがその魔人に膝蹴りを入れる。倒れた魔人をそのままにラウラは他の魔人に跳びかかり攻撃していく。

 もちろん一緒に入って来たラウラに攻撃する魔人もいたが、全て風で防いでいた。ラウラから攻撃することは無く、ラウラの視線は全てモニターに向かっていた。

 ラウラはモニターを見ている間に多対一で戦っていたシャリアは、気絶までは行かなかったが数人の魔人に一撃入れることが出来たためラウラの隣に跳ぶ。


「さっきから観察ばかりしおって。部下がやられてるのに、ボスのお主は座ったままかの?」

「シャリア、ここ監視部屋」


 ラウラに言われ横目でモニターを見れば、それはどこかの映像を映していた。見たこともない場所を多く映していた、先程跳んだ時に見えた建物も映っていたため帝都を映しているのだと分かる。そしてそのモニターの1つが砂嵐によって見ることが出来なくなっていた。


「さっき見た侵入者どもか。にしては来るのが速かったが……。おい、一撃入れられただけで何痛そうにしてんだ!」


 先程シャリアに話しかけられた男は横にかけていた、自分の身長とさほど変わらない2m近くのハンマーを掴むと立ち上がる。それを荒々しく地面に叩きつけると、先程シャリアにやられ膝をついていた魔人達がフラフラしながら立ち上がる。


「チビ女に殴られた蹴られただけでみっともねぇ所見せんな!」


 その言葉に反応したのは男の部下だけでなく、シャリアとラウラもだった。ラウラは再度立ち上がった魔人達を容赦なく魔法で切りつけて行く。魔人達もただではやられず、抵抗としてシャリアに魔法を向けるが、動き周りながら撃つラウラに魔法を当てることが出来ない上に、魔法を撃った直後にラウラから魔法が飛んでくるため防御が上手く出来ずに傷ついて行く。

 有象無象の魔人をラウラが相手している間に、シャリアは一跳びでボスの男に近づき、殴りかかる。その攻撃は宙にいたこともあり見えていたため、タイミングを合わせてハンマーを振る。男は遠心力がかかった攻撃が負けるはずないと思っていたためシャリアのことを殴り飛ばせると思っていた。だがその思惑は外れる。

 シャリアはハンマーに負けること無く拳を振りぬいた。結果ハンマーは押し返され地面に落とされる。小さいクレーターが出来たことに理解が追い付いていない男の腹にシャリアが容赦なく拳を叩き込む。

 膝をついた男に容赦などせず、シャリアが顎に蹴りを入れると男その場で気絶する。


「チビだと油断するからじゃ」


 男のことを見下すように眺めるシャリアの後ろから奇襲を仕掛けた魔人がいたが、その攻撃は空を切る。隙だらけのそれの首を握る。


「お主で良い。私達の質問に答えろ」


 尋問しようするシャリア。その後ろからまたも他の魔人が奇襲を仕掛けようとするが、今度はラウラがその魔人を殴り飛ばす。その拳には風が纏われていたため、魔人の殴られた場所は抉られた様になってたいた。


「四天王と呼ばれる者が居るじゃろ。どこじゃ」

「そ、そこに」


 怯えながら指を向けた先には、先程シャリアが倒した男が寝転がっていた。


「こんな弱いのが四天王のはずないじゃろ」


 首にかける力を強くする。魔人が気絶する寸前で力を緩めまた同じ質問をするが、男は同じ答えしか言わなかった。

 これ以上聞いても無駄だと判断したラウラは、首を掴んだまま壁に力強く投げつける。

 ラウラは他の魔人達の相手をするのではなく、倒した四天王と呼ばれた男の懐を漁り始める。するとRが話していた円柱の魔法道具マジックアイテムが仕舞われていた。

 あまりにも予想していなかったことに持ったまま驚いていたシャリアだが、飛びかかってくる魔人を回し蹴りで蹴散らしていく。


「……目的の物も手に入ったことじゃし、戻るとするか?」

「分かった」


 2人は入って来た時に使った、壊した壁までの道を作り外に出る。もちろん魔人達も飛び降りたりして攻撃を仕掛けるが、その攻撃は予想もしない形で防がれる。


 ラウラとシャリアの2人を横切る存在がいた。それが魔人達の攻撃を防いだのだ。

 それは本隊の魔人達の一部だった。


「ラウラ様、シャリア様、援軍が遅れ申し訳ございません」

「四天王と呼ばれる存在は倒し、目的の物は回収した。私達は目的地に向かう」

「わかりました。でしたら私達は残党処理に周ります」


 軽く言葉を交わしてから2人は合流地点に向けて走り出した。

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