第323話
スワイドに戻って来た翌日。
久々にゆっくりできていることに喜びを感じながら朝食を食べていると、Rが杖を振って全員の前で画面を生み出す。そこにはスワイドに戻ってくる際に見た瓦礫の山が映っていた。
「昨日のこれ。原因はやっぱり外からの襲撃だって」
話しながら呑気に朝食を口に運ぶRに注目しながら全員が次の言葉を待つ。そのRはそんな視線は無視して食べ続ける。
「続きが気になるんですけど……」
「あー、これを誰がやったのかってこと?さすがに知らないよー。来て1日経ってないからね」
笑いながら言うと、口の中に含んでいた物を飲み込んでから再度喋り出す。
「集めた情報だと爆発音は1回。つまり1回の強力な攻撃で防壁が壊れた。この町にここまで強力な火属性の魔法を撃てる人がいるかどうか聞いた所……いないってさ」
「中にまで敵がいたら敵わんじゃろ」
「それもそう。まぁ安直に予想したらラスター君の部下の攻撃だね。こんなのことを簡単にやってのける人を僕は知ってるよ」
「昨日話してた……」
ミカの言葉を遮る用に扉が勢いよく荒々しく開けられる。扉の先には息を上げた状態にサーバが立っていた。
「おい!お前、何の装置を隠してた!」
Rの首元を雑につかむと、無理やり立たせて詰め寄るサーバ。
詰め寄られてるRは何でもないかのようにサーバに話しかけ始める。
「ライトルが氷漬けにでもなったかな?それとも建物全部が吹っ飛んだ?もしかして火の海になったとか?」
「貴様の仕業か!!」
「なんのことか分からないけど、僕はやってない。自分が住んでる場所に町を吹き飛ばす装置を置くワケないでしょ」
「そこまでだ」
後に入って来たバルターはサーバの腕を優しくつかむと、サーバはRから手を離す。Rは一度息を吐いてから再度朝食に手を付け始める。
今の頭に血が上った状態のサーバでは使い物にならないと判断したバルターは下がるように命令する。渋々と言った形ではあったが命令に従いサーバは頭を下げてから部屋から出る。その様子にため息をため息をついてからバルターが深々と頭を下げる。
「申し訳ございません。先程ライトルが消滅したとの報告が来たのです」
カイ達が去った後で配属された兵士の話しでは、空を突き抜けるのではないかと疑う程の高さ、ライトル全てを包み込む程の広さの火柱が数分の間上がったのだと。
それが消えた頃には、町を覆っていた防壁も含め消えていたのだ。ほとんどの物が灰と化しており、人っ子一人いなかった。
それを知ったサーバが1人暴走してここに来てしまったのが今さっきの状況だった。
「R、お前は何か知ってるか」
「何もって言いたい所だけど、誰がやったか予想はつくよ」
ようやく朝食を食べきったRは真っすぐバルターを見つめる。
「ラスター君の部下の1人だよ。町1つ飛ばせるのなんて彼女しかいないよ」
「戦闘特化の部下。町1つ飛ばせるなんて信じられない」
「そう。言うなれば四天王!転移魔法で自由気ままに遊び歩いてる彼女がやったんだと思うよ」
「彼女が動きだしたならここからは時間との勝負だよ!ほら全員急いだ!」
「どういうことですか?!」
ラスターに押されながら部屋を出たカイ達。バルターはRに姫の元に案内するように急かされる。
「ライトルが落ちたことはヴァリスさんからの連絡が無くなった時点で知られる。あの町は武器の研究なんかもしてて、それが姫様陣営に知られたら面倒でしょ。だからラスター君陣営は町を消すかなんかして使えなくしたいんだよ」
「消されたからと言ってここまで急ぐ理由には……」
「問題は消されたことじゃなくて、消した人にあるんだよ。自由気ままで、ラスター君の命令ですら聞かない彼女が動いたんだ。あの町を消す事に彼女にとっての得は無い。それなのに命令を聞く価値があると判断して消した。そのことに問題があるんだよ」
「それじゃなんじゃ。今度はスワイドが消されるかもしれないと言いたいんか?」
「それは分からない。でも攻められたら一たまりもないでしょ?だからこっちから攻めるんだよ。出来るだけ不意をつく様にしてね」
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