6章 侵入 魔都トラビタル

第320話


 Rと術後で消費しているアルマに警戒しながらカイ達はスワイドに向けて歩を進める準備をしていた。

 準備と言うのは、Rが自前の袋から取り出した物を組み合わせることだった。本人曰く、これを組み合わせれば簡単にスワイドに戻ることが出来るとのことだった。

 そのRは機械を組み立てる腕を動かしながら、彼の周りには光の球が3つ程浮いていた。その光の球はモンスターが接近してきた場合に先行して眉間を貫いて倒している状態だった。最初はRが組み立てている機械をカイ達も手伝おうとしたが、素人が関わっては正常に動かない可能性があると言うことで監視をしながら休憩をしていた。


「にしても、その角を作った職人は良い腕してるね~」


 最も近くで監視をしているカイにRは腕を止めることはもちろん、視線を送ることもせずに話しかける。カイが返事をしようとする前にRは話しかけ続ける。


「君が、いや、君達と言った方が良いね。素性を隠しながら過ごしてるのは分かるよ。魔国領の外、公国から来たんだろ?魔国は公国とは秘密裏にやり取りをしていたからね。ラスター君が上に立ってからはしてないけどね。君達が強力してる姫様は未だにやり取りしてそうだけど。まぁこれは置いといて……」

「ちょっと待ってください!」


 ここまで一息だけで話し続けるRにカイが待ったをかける。その言葉を受けて、Rは手を止めはしなかったが、喋るのは止めてくれた。


「角が作ったって、何言ってるんですか?」

「お嬢は君達が倒したウォッシュの教育係みたいなことをしてたんだよ?ウォッシュと王国で何があったのか、それも知ってる。だから君達を施設で見てすぐに人間だった気づいた。にしても本当に本物の角にしか見えないねぇ~」


 改めてカイ達の額に着いた角をまじまじと見て頷いてから、手元の機械いじりを再開する。


「さて、君達に信用してもらうためにラスター君達のことについて話しておこうか」


 この一言にカイ達の表情が真剣な物に変わる。


「ラスター君には頼れる部下がいるわけだけど、その中で特目立った存在が4人いるんだ。その4人はそれぞれ秀でた能力があってね。 1人は潜伏能力。霧の体を持ち、どんな所でも入り込む。霧の色も好きに変えられるみたいだね。 もう1人は魔法を得意としてるんだけど、守りがすごいんだとか。何十人で魔法を撃ちこんでも、その人が張る障壁を破ることが出来ないとか。 そしてもう1人は参謀をしていて、情報の多さに混乱していても、参謀にかかれば数分で治めることが出来るとか。その人自身が最前線で戦いながら作戦を実行することもあるんだとか。 最後に、ラスター君が持っている戦力の中で一番の戦力を持つ存在。1000人でも1万人でも1人で瞬殺出来るとか。魔法の腕はもちろんのこと接近戦も出来るって。まぁこれ全部噂なんだけど、あながち嘘ではないと思ってるよ。実際に霧にはあったことがあるからね」

「俺達も会ったことがある。姫様がいたあの場に現れたとなれば潜伏能力はかなり高いと言える」


 4人の部下のことを話したRは立ち上がると、大きくノビをしてから今までよりも力強い声で話す。


「こいつも出来たことだし、話しの続きは姫様がいるところでした方が良いかな?」


 そこには銀色に輝きながらも機械なのだと認識させられさせられる馬がおり、Rは全員が乗れる程大きな馬車を取り出すと、馬につなぎ始めた。

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