第319話
ヴァリス博士のとの戦闘を終え、残党が本当にいないかの確認作業をしているカイ達の元にアルマとRが合流する。アルマはカイ達と会った時同様にRに肩を貸してもらった状態で現れた。
「博士は倒したの?」
「あの女が持ってる剣で一刀両断していた」
サーバは剣を担いでいるリオを指さして言うと、すぐに他にも残党がいないか探しに戻る。
「それは凄い!一刀両断!見てみたかったね~」
Rは楽しそうに言うと懐を探ってコンパクトな小さい杖を取り出す。
「さてさて、君達の目的とアルマの目的は達成されたわけだ。それで?これからどうするのかな」
ニヤケながら言うRに少しだけ怒りを覚えながら、シャリアが前に出る。
「どうするも何も、残党がいないと確認取れたら戻るだけじゃ。来た道を戻る。外に出れば人も数人おるじゃろうからな。そこに紛れ込めば問題ない」
「それは難しいんじゃないかな~」
タイミングよく全員が戻ってきたため、Rは持っている杖を軽く振る。すると空中にホログラムで出来た画面が数個現れる。そこには大量のモンスターが徘徊している様子が映っていた。
「これが今の研究所の様子。上に行くのは現実的じゃないな~」
「これが?ならここにも来るはず」
「それはこちらを」
また杖を振ると今度は1つの画面が強調された。
映像は階段で、地面や壁、天井から障害物が絶え間なく出たり入ったりを繰り返しており、そこには大量のモンスターの遺体が転がっていた。
「ここは侵入者が入れないようにされてるからね」
「私達も通ってきましたけど、あれだけでモンスターを止めるなんて……」
「それは問題なし。強化して来たからね。障害物の射出速度は2倍!そして、天井からも出るように改造!いや~前から遊びで作ってた物が役に立ってよかったよ~」
「さて、これを見ても来た道を引き返す?」
肩をすくめるようにして話すR。
皆が逃がそうな表情を浮かべると、Rは笑顔になってアルマを支えたまま歩き出す。
「こっち。転移魔法陣を隠してあるよ。この人数だから魔力は取られるけど、魔人が3人もいるんだ。楽勝さ!」
Rが案内した先には壁があり、それをRが杖でつつくと扉の様に壁が開き、中には魔法陣が描かれていた。それに乗って魔力を通せば、カイ達はライトルの花園と呼ばれた所に飛んできていた。
「さぁ君達の根城に向かおうか!そこで良いことを教えてあげるよ」
空中を漂う赤い霧は左右上下に部屋の中を自由気ままに飛んでいたが、しばらく飛んで飽きたのかおいてあった椅子の上に移動する。
「詰マンネェ~。早ク攻メヨウゼ!」
「うっせぇな!ただでさえ煙てぇんだ!動くんじゃねぇよ!クソガキが!」
「オッサン!今日モ元気ダナ!ソレト、俺ハ煙ジャナクテ霧ダ!」
扉を粗々しく開けて入って来た男は武器を肩にかけながら来ると、壊れるのではないかと思うくらい荒々しく座る。
「元気デ良カッタ。ソウダロ!?」
「……」
霧は再度飛び回り、最初から部屋にいた本を読んでいた女性に話しかける。だが、女性は反応せずに本を読み続け、本のページをめくることしかしなかった。
「またあのチンチクリンはサボりか。無口女とクソガキの相手させられる俺の身にもなれってんだ」
男が文句を言うと同時に、3人が座っている椅子の前に画面が生まれ、3人は同時に跪き首を垂れる。
「集まったな、お前達」
画面に映っている映像は首から下だけだったが、この3人は誰だかわかるからこそ跪く。
「ラスター様もお変わりなく……」
「お前が話すのを許可した覚えはないぞ」
画面越しだと言うのにラスターから発せられる圧はかなり強く、男は冷や汗を流し始める。その圧は隣にいる女性と霧を当てられており、女性は顔色悪く、霧は先ほど以上に体がユラユラと揺れて今にも消えそうになっていた。
「……ライトルが落とされた。魔物が外に逃げてはたまらん。処分しに行け」
「はっ!」
それだけ言うと画面は消えた。消えたのだが、男達はしばらくその場を動くことが出来なかった。
ラスターが命令を出している頃、ライトルを遠くから崖の淵に立ち見つめる小柄な少年がいた。
「うんうん。良いね良いね」
ライトルはモンスター達で溢れていた。外からの攻撃を防ぐために作られた防壁があったおかげで外に出ることは無かったが、モンスター達が外に出るのは時間の問題な様に見られた。
それを見て、満足そうにうなずいた少年は振り返り、ライトルから離れるように歩き出す。
「楽しみだねお姉ちゃん!」
そう言って少年が数歩だけ歩くと、ライトルを覆うほどの火柱が立ち、ライトルは一瞬にして灰燼となった。
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