第317話
白色の球体は心臓が波打つように一定のリズムで波紋を起こしており、不気味さを放っていた。そんな球体は中で膨大な魔力を含んでおり、中で不規則で動き回っていることを感知で分かっていた。内部で動いていた魔力が中心に集まってから表面へと移動し始め、表面に集まると触手が何本も現れ始める。
それはカイ達のこと標的にするのではなく、暴れ回り目に入る物全てを破壊しているようだった。
振り回し暴れるだけでなく、時折真っすぐ伸ばして突き刺そうとする動きもしており、カイ達は各々が避けて行く。近くに触手が来たため、カイは紅氷と蒼炎を打ちこみ、ミカは電気を流す。他にもラウラが触手を斬り落とそうと風を飛ばしたり、他の者も魔法を撃っていた。
だがそのすべてが無効化されてしまっていた。カイの撃った紅氷は飲み込まれるだけで変化は起きず、蒼炎は触れても氷に出来なかった。また電気を通しても効果があるようには見えず、それは光と闇、水、風も同じだった。
ラウラが触手を切るために張った攻撃は切ることは出来たのだが、すぐの再生して襲い掛かってくるため意味が無かった。だが、一時しのぎにはなっていたため、時たま斬り落としていた。
斬り落として落ちた触手は地面に落ちると爆散してすぐに中央の球体に戻ろうとする。それを凍り付かせるが、同じ様に吸収されてしまっていた。
リオは糸と爪を使い、空中に足場を作りながら避けていると、袋からサイクロプスを倒した時に使った片刃の大剣を取り出す。それを片手で容易に振りかぶると球体の中心部分目掛けて投げる。
その攻撃に反応して触手は集まり防ごうとするが、刃に当たった瞬間にスパスパと切れて行き、遂には球体に衝突する。魔法同様に飲み込まれるかもしれないと思われたが、大剣は勢いを失うこと無く、回転したまま入って行った。
地面に大剣がぶつかったと思われるタイミングで球体がはじけ、白い液体が当たり一面に散らばる。
真っ白な床の中心には、先程までとは変わって白髪長髪で、白い装束を着た男が頭を下に向けて立っていた。
微動だにしていなかった男がビクリと大きく動くと、当たり一面に広がっていた液体がゆっくりと男の体にまとわりついて行く。まずいと判断したサーバがすぐさま攻撃するが、地面に広がった液体が鋭利な棘となり伸びてくるため近づくことが出来なかった。
液体が足からだんだんと上っていくと、それは純白の鎧と化していく。
全ての液体が完璧に鎧に変化すると、男はゆっくりと頭を上げ始める。その顔はヴァリス博士の物だったが、どことなく若返っている様に見えた。
「モンスターとの融合。悪くない。変幻自在な肉体と膨大な魔力。素晴らしい。私の研究はここに完成した!」
高笑いを上げるヴァリス博士はひとしきり笑うと、真顔になりカイ達のことを見つめる。
「あれの
真顔のまま呟いたヴァリス博士の小手から盾と剣を生まれ、盾を前に出しながら突進を仕掛ける。
まず最初に跳びついたのはサーバだった。サーバは大きく振りかぶる形で剣を振り下ろすと、剣と盾がぶつかり金属と金属の衝突音が響き渡る。
盾で防いだヴァリスは軽く押し返して剣で攻撃を仕掛けてくる。それが読めていたかの様にサーバは空中で剣をはじき、蹴りを入れ、その反動で後ろに下がる。
盾によって死角になっていた場所に高速移動で移ったミカは、そのまま盾に向かって突きをはなり、ぶつかると同時に雷を流していく。
「この体はベータやガンマと同じ物だ。つまり」
ヴァリス博士は盾を思い切り前で出す。あまりにも強い勢いにミカがその場で尻餅をつく。そこにヴァリス博士は剣を振り下ろそうとする。
「魔法の類は一切効かない」
そのままヴァリス博士。その状況でミカは、笑っていた。
振り下ろした剣は空を切る。ミカは振り下ろされた剣先の数歩前に移動している上に、座った状態ではあるが槍を横に薙ぎ払う所だった。それに合わせるように、カイも反対側から剣を腹に入れようとしていた。
「私は一介の研究員では無いのだ。魔人を超えた肉体を手に入れた私を見くびらないでほしい」
そんな2人の攻撃に反応したヴァリス博士は剣と盾を使い受け止める。
盾で防がれると同時にミカは体勢を整え始め、同時にフラージュが盾に向かって突きを繰り出し、ミカも同じ様に突いて力を込め続ける。
剣がぶつかった状態で、カイは負けじと力を籠め続ける。つばぜり合いになった状態で、サーバもカイと同じように剣をぶつける。
そんな4人の攻撃をヴァリス博士は全力で跳ね返す。4人はその反動を使い綺麗に後方に着地する。
流石に4人分の力が加われているのはきつかったのか息を荒げるヴァリス博士。透かさずシャリアが下から懐に入り拳を構える。
そんなシャリアに向けて咄嗟に剣を振り下ろす。シャリアは攻撃せずにその剣をガントレットで受け止める。攻撃が来ると思っていたヴァリス博士は油断した。後ろに跳んで来た存在に気づかなかった。
「ハッ!」
気合を入れた声を上げながら、先程投げた片刃の大剣を振り下ろすリオ。彼女の足元にはいつも付けている爪が突き刺さっていた。
その一撃は防がれること無く、ヴァリス博士のことを一刀両断する。
真っ二つにされたヴァリス博士はありえないと言うような表情を浮かべると、液体となり地面にバシャリと崩れる。
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