第316話


 持っている試験管を見てから再度台座に置き直すヴァリス博士。

 ヴァリス博士に言われたベータとガンマの2人はハルバードを構えてからカイ達に突撃を仕掛ける。一番前で膝をついていたサーバ目掛けて同時に振り下ろす。死角からの攻撃と言う訳では無かったため、サーバその攻撃を何とか受け止める。その隙に同じく前にいたカイとミカが攻撃を仕掛け、動けないサーバをシャリアが回収する。

 2人は両腕を斬り落とし、武器を突き付ける。それでもなんともないと言った様子のベータ達に向かってラウラが足を斬り落とす様に魔法を飛ばす。それも防ぐ様子は無く、ベータ達の体が音を立てて落ちる。その時の音は大量の水が落ちるような音で、その音の通り、2人は液体と化してまた集まり出していた。それをカイが瞬時に凍らせていく。一滴も残らず。かなり広域に氷つかせ、それはヴァリス博士の足元まで届いていた。


「無駄だ。そんな氷で止められる程、私の作った物はヤワじゃない」


 こちらを見ないでヴァリス博士は手を動かしたまま話しかけてくる。再度その背中に向かてサーバは剣を振り下ろそうとする。

 その瞬間、ヴァリス博士の近くの氷が割れ、水が出てくる。それはサーバの剣を受け止めようとする。勢いを多少緩めることはできたが、水は止めることまでは出来ずヴァリス博士の背中を傷つける。傷はかなり浅かったが確かに傷つけた。

 水はすぐにベータとガンマになり、サーバのことを殴り飛ばす。ヴァリス博士は切られたことで手を止め、ただそこに佇む。


「やはり無理か。複製体レプリカでは」


 その言葉にサーバもガンマも反応を示す事なく、ヴァリス博士は横に設置されていたボタンを力強く押す。だが、そのボタンは押しても反応することなく、カイ達は突撃を仕掛ける。


「……Rの仕業か。この混乱に乗じてチップを抜いた、か」


 カイ達に聞こえない程小さな声で呟くヴァリス博士は、覚悟した表情を浮かべる。


 その頃、カイ達に方に変化があった。カイは剣は出さず蒼炎を纏った拳で攻撃していた。その拳がベータの頭を吹き飛ばすと、カイはその部分から拳を体内に突っ込む。そして、中にあった石の様な物を掴もうとした瞬間にガンマの横やりが入り、後ろに跳ぶ。


「体内にスライムの核見たいなのがあります!それが弱点だと思います!」

「魔力では壊せない核をわざわざ作り、圧倒的な戦闘力とスライムの体でそれを自由に動かし破壊出来ないようにしたが、無駄だったようだ。戦闘力で負け、スライムだと言うこともバレた。もうお前達が戦える相手ではない」


 淡々と話すヴァリス博士は先程置いた黒い液体の入った試験管を再度掴むと、何度が横に振って眺める。すると液体は黒色から赤色、青色、黄色、緑色、紫色、茶色、といろんな色に変化していき最終的には白色の液体になる。そしてそれは光を発していた。それを3本の注射器に入れ、自分の1本打ちこむ。


「戻れ」


 ずっとカイ達の攻撃を迎撃していたベータとガンマは腕を液化させ、巨大にすると上から思い切り振り下ろす。カイ達はそれを後ろに跳んで避ける。

 その隙に近づいたベータとガンマにヴァリス博士は注射器を打とうとしていた。


「今すぐあれを止めろ!」


 そう言ったサーバは闇を何の効果を与えずに、ベータとガンマによって叩き落とされる。

 カイ達も魔法を飛ばしたが、全てをベータとガンマが飲み込んで無効化していく。

 博士は中に入っていた薬をベータとガンマにゆっくりと入れて行く。


「あれの中身は!」

「分かる訳ないだろ!ロクでもないのは確かだ!警戒しろ!」


 薬を打ち切ると同時にベータとガンマの体が液体になり、地面に広がる。それもすぐに終わり、ヴァリス博士を飲み込むように水が動きだし、真っ白な巨大な水の球が出来る。それは先ほど試験管に入っていた液体と同じで光を放っていた。

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