第315話


 息子に剣を抜かれたことに対して男、ヴァリス博士は呆れた表情で大きくため息を吐いて、後ろを振り向き機械を再度いじり出す。


「ベータ、ガンマ、そいつらを排除しろ。私は忙しい。決して邪魔させるな」

「はい、マスター」


 後ろに待機してる2人の偽アルマ、ベータとガンマが感情が無い声で返事すると同時にそれぞれに背中に背負っていたハルバードを抜く。2人とも同じハルバードを同じ型で反撃の構えに入る。


「そこを退けぇ!」


 声を荒げ突進を仕掛けるサーバについて行く様にカイ達も突進を仕掛ける。

 ベータは臆すること無くサーバの剣を受け止める。サーバはハルバードを弾こうとするが、横からガンマが攻撃を仕掛ける。ギリギリで後ろに避けたサーバと交代するようにカイとミカが前に出る。カイは氷を纏った拳で、ミカは槍で斬りつけて攻撃したが、それぞれの攻撃は相手に吸収されてしまった。

 ミカが斬りつけてもガンマから血が出ることは無く、斬れた場所も跡が出来たがすぐに戻った。振り切って隙が出来たと判断したガンマは、表情を変えること無くハルバードの先で突き刺そうとしたが、振り切ってからも動きを止めなかったミカは体勢を低くしながらハルバードを上に弾くことで避けた。

 カイは正拳突きの様に攻撃したのだが予想外のことに、拳が腹の中に入り固まりかけていた。表面が紅氷で纏われていたためか、飲まれた場所の周りが液体が沸騰するかのようにブクブクと気泡が生まれていた。腕が飲み込まれかけている状態でハルバードを振り下ろされたため、カイは空いている手に蒼炎を纏わせ柄の部分を掴む。そして掴んだ瞬間にハルバードを手ごと凍り付かせていく。

 斬撃も打撃もあまり聞いてい無さそうだったが、カイは凍り付かせた腕をミカは槍を回転させ石突の部分で素早く付きを出す。それと同時に2人をラウラとリオが ヴァリス博士に攻撃を仕掛ける。

 ベータの腕は氷ごと砕け、ガンマの腹は石突が貫通する。普通ならばここで反撃するところだが、2人は何は迷うこと無くヴァリスに攻撃を仕掛けたラウラとリオの反撃に回る。

 ベータは腕が砕けなくなったため、ラウラのことを薙ぎ払う様に横から蹴りつける。

 ガンマは腹から槍を引き抜き、自分が傷つくことなど躊躇わず爪を全て受けきる。そして爪につながっている糸を束ねるように掴むと爪を投げ捨てる。


 蹴られたラウラと攻撃をしたカイとミカは下がり、リオは投げ捨てられた爪を回収する。同時にラウラが風の球を大量に生み出し撃ち出す。攻撃の範囲にはヴぇリス博士も入っており、2人は身を挺してヴァリス博士を守る。

 腕は無くなり、深々と突き刺された傷、風によって切り傷が大量に出来た2人だったが、ヴァリス博士には傷1つ無かった。そんな2人だが、傷は合っても血は一滴も出ておらず、すぐに傷が直っていく。ベータの腕も体から透明な液体が出てきて腕の形になったと思ったら服ごと直った。攻撃を仕掛け、重症を与えたと思っていたが気づいた時には最初の状態に戻っていた。


「大きいの撃つ」


 ラウラは一言だけ言って杖に魔力を溜めて行く。その余波か弱い風が吹き出し、全員の髪がかすかに揺れる。それでも2人は攻撃してこなかったため、カイ達が仕掛ける。


 再度、受け止めると思われたが、ベータは迎撃にガンマはヴァリス博士の元に駆け出す。


 ベータはカイの打撃をそのままくらう。先程の様に拳を飲み込まれカイはすぐさま体の中から凍り付かせていく。その状態でベータはカイのことを掴み、ヴァリス博士の元に走るサーバに向けてカイのことを投げつける。受け止めて足が止まるサーバ。

 カイを投げたこと、また体の中から凍りつけられたためミカが攻撃するとベータは砕け落ちる。また、崩れ落ちた欠片をミカとリオが武器を使いもっと細かくしていく。だが、細かくした途端氷は液体に変わっていき集まり出す。


 ヴァリス博士の元に向かったガンマは何もない所に向かってハルバードを振る。同時に金属と金属がぶつかった音が響き渡る。そこにフラージュが現れる。フラージュ得意の透明化だった。ガンマはハルバードで薙ぎ払おうとするが、フラージュの力もかなり強くお互いぶつかったまま動かない。力が拮抗している隙に接近したラウラが拳に力を込める。

 がら空きだった背中からの攻撃は、カイの打撃同様に飲み込まれる。だが、カイの時とは違い、ガンマは膝を地面に付ける。ガンマに接近する前にラウラはカイに紅氷に撃ってもらい、小手に吸収させていたのだ。それをガンマの体内で放出すると、ガンマが崩れたのだった。そして、崩れたガンマは頭から液体になり溶けだしていく。そして液体はベータ同様に集まり出す。


 液体が集まったことには警戒したが、ヴァリス博士を襲うには絶好のチャンスだったためサーバが突進する。すると液体は目にも止まらぬ速さで動き、振り下ろされたサーバの剣を受け止め、サーバのことを殴り飛ばしてくる。

 液体はだんだんと人間の形を生成していき、戦闘開始の時の様にヴァリス博士の後ろにベータとガンマが立っている状況になる。


「排除はまだか」

「申し訳ございません、マスター」


 呆れた声色で呟くヴァリス博士の手にはドス黒い色の液体が入った試験官が握られていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る