第314話


 モンスターの生産、キメラの合成の研究の責任者であり、今回カイ達が標的にしているヴァリス博士。それがこの方向にいる上に、サーバが向かっていると言われカイ達は急いで向かっていた。


 前に魔力の反応が2つ確認できたため、進める足を緩め警戒しながら進む。

 2つの反応は物陰からゆっくりと出てくる。

 それはサーバと、サーバの喉元にナイフを突きつけた偽アルマだった。

 サーバはかなり怪我をしており、身にまとっていた鎧の間から血が流れていて床にポタポタ跡を作っていた。それを見てカイ達はすぐに足を止め睨みつける。


「止まりな!こいつがどうなっても良いのか!」


 偽アルマはより近くナイフを近づける。血を流し過ぎたのかサーバをあまり反応を見せない。思った反応をされたことで気分が良くなった偽アルマはより強く笑みを浮かべ始める。


「ほらほら!いつまで武器を構えてんだ!下ろせよ!」


 ナイフを強調する様にちらつかせて来るためカイ達は大人しく武器を下ろしていく。それが嬉しかったのか偽アルマは下品に笑い出す。その隙を見逃す事なく、ミカが高速移動を使い接近し蹴りつけてサーバと離す。倒れ込んだサーバを跳び越えて、ミカが追撃していく。それにラウラとラウラも参加していく。カイとフラージュ、リオはサーバの治療に入るために駆け寄る。

 偽アルマは最初蹴りつけられらことにイラついて顔を真っ赤に染めていたが、3人で同時に攻撃されたため真っ青のして避けに徹していた。


 サーバを寝かせるとすぐに治療に準備に入ろうとしたが、カイ達の手は止まった。血特有の鉄の様な臭いを全く感じなかったのだ。案の定これは罠で、カイ達の手が止まった瞬間に襲って来た。

 懐に隠していたナイフを取り出しカイの顔目掛けて振る。少しだけ後ろに反って避けると、カイは胴体目掛けて蹴りを入れる。蹴りの入ったサーバは数回転がると苦しそうにせき込む。すると頭から水の様な物が零れだし、それと同時にサーバの姿も変わっていく。液体が流れ切ると偽アルマの姿になっていた。

 遠くから先程カイ達を脅してきた偽アルマの悲鳴が聞こえたため見てみれば、そこにはサーバが剣を振り下ろしている姿があった。

 ミカ達は戦闘が終わって途中参加して来たサーバに近づこうとしたが、それをカイ達が止める。


「本物ですか?」

「こいつを切る意味がないだろ。こっちに来たなら丁度いい。反応があっちにある。行くぞ」


 付いた血を振り下ろし、剣を仕舞ったサーバは一足先に進み始める。

 そしてある程度進むと止まってこちらを見ずに話しだす。


「信用ならないなら、離れて付いて来ればいい」


 さっさと進んでいくサーバについて行く形でカイ達は進み始めた。




 サーバと合流して数分後、反応に近づいたことで警戒度を強めながら足を進める。サーバが感知出来たのであれば、相手の魔人も反応を感知出来ていると予想できたため、カイ達は走って近づく。

 目視できる所まで近づくと、1人はこちらに背中を向けて機械に何かしており、その後ろで2人待機していた。


「私は忙しいと言ったはずだ。アルファに命令を出した。アルファの言うことを聞け」


 そう言いながら機械に何かを打ち続ける男。その後ろに待機している2人は目を閉じたまま止まっていた。


「何をしてる。早く行け」

「俺らが命令を聞く必要は無いはずだ」


 サーバの声を聞き、男は動かしていた指を止める。そしてゆっくりとこちらに振り返る。


「俺が出て行くとき貴方は覚悟を聞いてきた。そのとき「姫様の敵になるならば、私は貴方にでも剣を向ける。その時は容赦しない」と、しっかり貴方に誓いを立てた。忘れたとは言わせない」


 剣をゆっくりと抜き、鋭い眼光で男のことを見つめるサーバ。サーバが剣を抜いたためカイ達も武器を構えだす。


「その時の誓いに則り貴方を倒す」

「誓ったとは言え、私に剣を向けるか……息子よ」

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