第313話
カイが途中待機していた偽アルマ達を倒し最初にいた場所に戻った頃には、サーバ以外が戻って来ていた。
シャリアは疲れたと言いながら床に座っており、周りには倒れた偽アルマの姿が数人いたため先程まで戦っていたのが伺えた。フラージュとミカは横にいる糸や紐で縛られている偽アルマ3人の監視をしていた。ラウラとリオの周りにも倒れた偽アルマがいたため、シャリア同様に戦っていたのだと分かる。
リオが戦った偽アルマは糸でグルグル巻きにされている上に口にも大量の糸が巻かれており、喋れない様になっていた。そんな彼女は抵抗する術はないと判断しており、暴れること無く目を閉じて横になっていた。
フラージュの戦った偽アルマはとても元気が良く、縛られているこの状況でも暴れ叫び続けていた。ここに着いた時には寝ていたのだが、起きて状況を確認した途端に「解け!」「殺してやる!」など、どんなに話しかけてもそれらの言葉しか返ってこなかったため、今では前の偽アルマと同じ様に口を塞いでいた。それでも暴れるため、近くにいるミカ達が抑えている状況だった。
ラウラが戦っていた偽アルマは最初は喋りずらそうにしていたが、麻痺が治った途端よく話だし、今はミカと楽しそうに話していた。
「カイも戻って来たの。あとはサーバ殿だけか」
「色々教えてくれたよー」
ミカの言葉を聞いて全員が捕まえた偽アルマの元に集まる。
偽アルマの話しをまとめると、地下4階で問題が起きた時点で偽アルマ達は待機しており、モンスターが下りて来た時のためにいたと言う。だが予定とは違いカイ達が下りて来た。侵入者だったために万が一のマニュアルに乗っ取り行動したと言う。
自害した偽アルマもいたことを言うと彼女は「あいつららしいねー」としか言わなかった。
「それで、ここまで来たってことは博士の身柄確保?それとも……」
「知らなくて良い」
誰も彼女の問いかけに答えようとしなかった。このまま固定して追ってこれない様にでもすればいいと思っていた矢先に、彼女の体に見慣れた黒色の羽が突き刺さる。
それに対して彼女は驚くこと無く「なんだ。そう言うこと」そうつぶやいて灰と化す。
振り向けばそこにはRに肩を貸された状態で歩いてくるアルマの姿があった。
アルマの姿を見て、先程からずっと暴れている偽アルマはより暴れ出す。そんな彼女の隣にいる偽アルマも目を開き、憎たらしい物を見るかの様ににらみつける。
そんな2人にもアルマは黒い羽を突き刺し灰にしていく。情報を聞き出し切れていない可能性もあったため抗議しようと近づいたが、アルマの体勢が崩れ地面に座り込んだため動きが止まる。しっかり見れば彼女は大量に汗を流しており、痛みに耐えているような表情をしていた。
「標的はあっち……。親衛隊が少なくとも1人はついてる……。それを倒せば後は博士だけだ」
「急かすだけ急かして私達に情報を与えない様にしてる風にも見えるんだけど」
「人には知られたくない秘め事の一つや二つ、必ずある物だろう?許してあげられない?」
苦しそうにしているアルマをゆっくりと寝かせると、Rは敵意や罠が無いと証明するためか笑って少しふざけているような雰囲気を出しながら話しかける。
「君達は調査って言ってたけど、モンスターの生産を止められればかなり嬉しいはずだ。魔国でモンスターの生産、合成をしているのはここしかないからね。そして研究の責任者と施設を破壊出来る絶好のチャンスが今目の前にある!これを見逃すなんて……しないよね?」
雰囲気はふざけていたが視線が真剣そのもので、カイ達のことを見つめるR。
しばらくその状態が続くと、Rは視線を外してアルマの元に近づく。
「アルマ・ヒューがさっき教えた方向には博士だけじゃなくてね、サーバ君だっけ?彼も向かってるよ。彼は君達より魔力感知が使えるみたいだからね。博士の位置を自力で見つけたんだろう。さぁどうする?僕とアルマ・ヒューの言葉を信じる?それともここで僕達を消す?」
カイ達に背中を向けて、アルマの体調を確認するR。サーバがいつまでも戻ってこないことを気にしていたため、アルマ達の言葉を信じてカイ達は教えてもらった方向に駆け出す。
「だから言ったんだ。さっきチップを抜いたばかりなんだから痛いに決まってるって」
Rに言われそっぽを向くアルマ。Rが腕に巻いていた包帯をきつく結ぶとアルマは痛みから飛び跳ねるが、悲鳴は何とか押し殺す。
「分かってる。でもトドメを討たれるわけには……」
「そうは言うけど、普通手術したらしばらく安静にするものだからね」
「分かってる!そこまで世間知らずじゃない!」
寝ながらRのことを叩いたアルマはゆっくりとだが立ち上がろうとする。それをRが支え立ちあがらせるとさっそく歩き出す。カイ達の跡を追って。
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