第305話
キメラの頭が落ちると同時に胴体からゆっくりと溶けて液体と化していく。その液体に触れた他のキメラは足元から徐々に溶けて行く。キメラ達は痛覚が無いのか、足が溶けながらも暴れ回り、歩けなくなったら地を這ってでも研究員のことを襲う。それを見た研究員たちは悲鳴を上げて逃げていくか、より強く壁を叩き始める。カイはいち早く腕に青い炎を纏わせ、酸の液体に向けて炎の手を伸ばし凍り付かせる。それによりカイ達の方向に接近しているキメラの勢いを少しだけ緩めることが出来た。
「ヴァリス博士!!開けてください!!早く!!お願いします!!」
背中を見せた研究員を餌だと思ったのか、キメラ達は跳びかかりかぶりついて行く。そのせいでより混乱していく研究員たち。抵抗する者達もいるのだが、腕っぷしには自信が無いのかほとんどの者がへっぴり腰になっていた。それでも着々とキメラ達を排除しているため、カイ達はそちらから視線を外す。
周りに接近して来るキメラ達を倒しながら、先ほど話しかけた女研究員が後ろでしゃがみ込んで身を守っているため、情報を聞き出そうとする。
「あの壁が地下5階に行くための階段を塞いでるけど、こっちから開ける方法は?」
「何言ってるの!?あなた達もココの研究員なら知ってるでしょ!地下5階で行われてる実験は極秘事項!機密が漏れる可能性は出来るだけ排除しておくに決まってるでしょ!」
「つまり、こっちから開けることはできんと言うことじゃな」
キメラは眠りから覚めたばかりのためかそこまで強くなかったが、これ以上倒す事は我慢ならなかったのか、痺れを切らしたサーバが首元に剣を突き立てる。
「言え。誰ならここを開けられる」
「あ、開けられるのはヴァリス博士ただ1人。それ以外に開けられる人なんて……。あ、R博士ならもしかしたら……」
女研究員はブツブツと呟きながら思考の海へと潜って行ったためサーバはゆっくりと剣を下げる。そして、キメラの排除を再開させる。
「どうする?手詰まりだぞ。神童ならばもしかしたらと言っていたな。今からでもアイツを探すか?」
「意味はないでしょう」
「あ?」
リオの言葉に不機嫌になったサーバは力だけでキメラを切り伏せ、振って血を落とすとリオのことを睨みつける。その視線に気づきながらも、リオは糸を自在に操りキメラの首に巻き付け的確に落としていく。
「R様達が私達に階段がある方向を教えた時、このような障壁があることは一言も仰っていませんでした。ヴァリスと言う者しか開けられないことも」
「騙されたとなぜ気づかない?!」
「その可能性は捨てていません。ですが、彼らが言うように地下への道はありました。それは揺るがない事実ですが」
「それも嘘だと言う可能性があるだろう!!」
言い合いをしながらもキメラを倒す2人。全く見ずに戦っている2人だったが、魔力の反応が高速で飛んできているため、口喧嘩を止めて警戒し始める。それは光を放っており、道中にキメラがいた場合は体を貫通させて飛んできていた。
それはカイに向かって飛んできていたため、カイは腕に氷を纏わせ撃ち落とす準備に入る。目と鼻の先まで来たため上から叩きつけようとしたが、それはカイの射程にはいる前で突然止まる。流れる動作でカイは残っている手でもう一度攻撃する。今度こそは当たったのだが、何も当たらなかったかのように透き通るだけだった。
横に跳んだカイがその光を見ると、それは光の球では無く、光で出来た文字だった。
『中々開けるのに手こずってね。あと数秒で開けるから待ってくれ R』
その文字はカイが読むのを待っていたかのように読んだ瞬間に霧散していく。
何が起きたのか分かっていなかったカイ以外はキメラを倒しながらカイに近づく。
「何だったの!?」
「Rさんからだった。扉をすぐに開けるって」
「あなた達R博士の関係者だったの!?それに扉を開けるって……」
「いま答えてる暇はない。教えてくれたことには感謝してる。ありがとう」
数秒で開けると書いていた通り、扉が音を立てて開き始める。
開けろと叫んでいた研究員たちが後ろに下がり始めたため、カイ達は上を跳び越え階段を駆け下りる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます