第304話


アルマとRの2人と分かれ奥に進んでいく。横にいくつも設置してある筒状のガラスケースの中には、つぎはぎだらけで色々なモンスターが混ぜられたキメラが緑色のよく分からない液体に浸かった状態で保管されていた。

全てが全て違う見た目になっているキメラの横を通りながら、先程アルマ達に教えてもらった方向に向かう。そのたびに戦闘音が大きくなっていく上に、魔力感知の反応も増えて行く。


「やはり信用ならないんじゃないか?反応が増えるだけで階段の影も見えないぞ」

「闇雲に探すよりはマシ」

「万が一バレたら全員叩き潰せば良いからの!」

「何言ってるんですか……」


シャリアの発言にフラージュが呆れていると、ミカの姿が一瞬にしていなくなる。全員が視線を送った先には、ミカが研究員の後ろに周り絞め落とそうとしている所だった。1人はぐれている研究員が近づいていたため、一番素早く動けるミカが動き落としにかかったのだ。近くに人がいないことも確認できていたためゆっくりと確実に落としていく。


「くっ……!しんにゅ……」


最初は抵抗していた研究員だったが、抵抗もむなしく手先の力が抜けていく中で研究員はカイ達のことを睨みつけることしかできなかった。


研究員の1人を確実に落としたことを確認すると、周りに研究員が近づいてくるのを感知する。反応は1人2人とかでは無く10人以上が徐々に近づいてくる。

この反応は確実にこちらに近づいてきているため、静かにやり過ごす事は不可能だと判断して、全員が武器を構える。


「しゅにーん、この前作ったミノタウロスキメラのことなんで……」


喋って近づいてきた研究員が最後まで言い切る前にカイが顔面を殴りつける。後ろに吹っ飛んだ男に驚いている間に、他の研究員も落とすために殴っていく。

相手が魔人だと言うこともあり一撃だけでは倒す事が出来ず、フラフラになりながらも全員が起き上がってくる。


「し、侵入者だ!連絡しろ!」


最初にカイが殴り飛ばした魔人が急いで起き上がると、すぐに走り去っていく。


「おい!主任はどうした!」


連絡しろと言った魔人が聞いてきたが、それを無視して魔人達を倒して行く。その時キメラの入ったケースには一切当たらないように気を付ける。

カイとシャリア、リオは徒手空拳で。ミカとフラージュは槍の柄と石突を使いながら。ラウラは杖だけでなく、魔法も使って。サーバは剣を鞘に納めながら振り回し倒して行く。

応援に来た魔人も倒しているとガラスの割れた音がフロア中に響く。その音は1つだけでなく、ドンドン割れて行く音が響く。そして音がした方向から魔力の反応が勢いよく近づいてくる。

それは近づいてくる過程で、前にあるガラスケースや機械などを壊しながら近づいてくる。そのせいで保管されていたキメラが起きて暴れ出し、他の機械やガラスケースを壊すと言う悪循環が生まれる。

カイ達は自分達に敵対していた魔人が油断した隙に殴って倒すと、アルマ達に階段があると言われた方向に向けて走り出す。すれ違う全員が突然の出来事にパニックになっており、立ち尽くす者もいればカイ達が向かう方向に向けて走る者もいた。


走り進めると、壁を叩いていると魔人達が大量にいる場所にたどり着く。


「ヴァリス博士!開けてください!緊急事態です!」

「何があった!」


サーバはこの騒動で逃げて来た研究員を装い話しかけると、研究員は焦った様子でこちらを見ずに話しかけてくる。


「保管してたキメラ達が起きたの!万が一用に設置していた転移魔法陣も使えないし、どうなってるの……!!」


そんなことをしている間にキメラは近づいて来ており、遂に顔を表す。

大量のキメラがいたが、特に目立ったキメラが居り、頭は牛の頭で胴体は筋肉だけで出来ているのではないかと錯覚する程に発達していた。対して片腕は脂肪でブヨブヨ、もう片腕はその大きさに見合わない程に大きな腕になっていた。残りの足だが、不足歩行では無く、カタツムリの足の様になっており、歩いた跡は濡れていた。

カイが青い炎で作った剣を握り接近する。あまり素早い動きは出来ないのか、ゆっくり動く腕に対して、カイは上に跳ぶだけで避けることが出来た上に追撃は無かった。胴体に近づいたカイが剣を突き刺そうとしたが、あまりにも硬い腹筋で刃が通らず、剣は形を失い表面に燃え移るだけしかできなかった。

目の前いるカイに向けて大きな、図体に見合わない腕で薙ぎ払いで攻撃しようとする。それをラウラが風ではじき返すと、ミカが脂肪だらけに腕に、フラージュがデカい腕の方に槍を突き立てる。

大きな咆哮を上げながら、暴れ始めたため急いで下がる。ミカの槍には血が一切ついておらず、フラージュの槍は刃だけでなく柄の部分にも血がついていた。

暴れ回るキメラにリオが爪を飛ばすと、糸は空中でグニャグニャと動き、大きな手の手首の部分に巻き付く。キメラは暴れ回っていたため、手先がいとも簡単に落ちる。さらなる痛みでキメラがより大きな咆哮を上げる。

その間にキメラの懐にカイとミカが入る。カイの手には氷の剣がしっかりと握られており、2人は腕と胴体にあるつなぎ目に合わせるように刃を入れる。すると、簡単にキメラの両手が落ちる。頭を上下にして暴れるキメラに対して、2人は下に頭が来たタイミングで蹴り上げる。そのため首が良く見えるようになる。2人は先程と同じ様につなぎ目に合わせて刃を入れて振りぬくと、キメラの頭がゴトリと音を立てて落ちた。




時は少しだけ戻り、カイ達と別れたアルマとRは歩き進めていた。すれ違う研究員たちから頭を下げられながら、到着した部屋の中に躊躇いも無くアルマが先に入る。するとアルマはすぐに中に設置されていたガラスケースの中に入る。


「本当に信じて大丈夫かな?僕はまだ信じられないよ」

「良いから、早く」


Rは複雑そうな表情をしてから隣に設置された機械をいじり出す。すると空いていたガラスケースの扉が閉まる。


「お嬢、僕は転移魔法陣を壊して来るよ」

「お嬢呼ぶな!私はもう……。ハァ、何か問題?」

「まぁね。心配しなくて良いよ」


そう言うとRは部屋から出て行く。Rの背中を見つめていたアルマだったが、Rが部屋を出た瞬間に意識は途切れた。

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