第302話
襲い来る霧に対してラウラが風で押し返そうとするが、威力が桁外れで速度は遅く出来たとは言え霧は徐々に近づいてくる。
偽アルマの相手をラウラがしている隙に、カイとミカ、リオが攻撃を仕掛ける。始めにリオが爪を飛ばす。さっきと違うのは先程は捕まえようと糸の部分が当たる用にしていたが、今度は爪の部分が当たる用に調節されていた。その爪を飛んで避けたタイミングでカイとミカがそれぞれ魔法を放つ。先にミカが放った雷を避ける。避けたのだがその動作はおかしく、何もない空中で何も無いところを蹴るとその場に足場が出来たかのように移動したのだ。
それを見てからカイが氷塊を飛ばそうとすると、偽アルマは避けるのではなく腕を前で交差させて防御態勢に入った。それでもここで攻撃すべきだと判断したため氷塊を飛ばすと、紫の霧に触れた瞬間爆発が起こる。そこまで威力がない爆発だったため怪我をする事は無かったが、突然起きた爆発に全員が怯む。
「痛い。痛いよ。痛いよぉおおお!!!」
煙が晴れて偽アルマのことを見ると、火傷を負った偽アルマが地面に膝をついて苦しんでいた。それでも敵は敵なためシャリアとフラージュが近づく。
「さっきの霧。たぶん風魔法が混ざってた」
「ってことは私の攻撃よけたのも」
「風の足場作り避けたのでしょう。器用な方です」
会話をしながらも偽アルマの動向を注意深く見ていると、懐から何かが落ちる。物が落ちた音を聞きシャリアとフラージュは少し下がると、フラフラの状態になりながら偽アルマがゆっくりと立ち上がる。その手には先程落としたと思われる棒が握られていた。その棒をよく見てみれば矢のような形になっていた。
その矢を少女は何も見ること無く後ろに投げつける。ノーモーションで起こされた行動だった上に後ろに投げられたことで誰も反応できず、その場に警戒しながら待機する。
「痛いよ~。なんでこんなことするの?酷いよ……」
涙を目に限界まで集めポタポタと落とす姿になんとも言えない空気が流れるが、すぐにピリついた空気に戻る。
偽アルマに出来ていた火傷の後が煙を立てて治って行っているのだ。そして、先程投げた矢を見てみれば、寝ている研究員の1人に刺さっており、その研究員の顔にだんだんと火傷の後が出てきていく。そして偽アルマが引っ張る動作を行うと矢が引っ張られ偽アルマの手元に戻る。
「あー痛かった。なんでこんな酷いことするの?美少女の顔を火傷で気づ付けるなんてありえない。酷すぎぃ」
偽アルマは持っている矢をクルクルと回転させ遊びながら話しかける。誰も返答しないでいると、つまらなそうな表情になってから矢をカイに投げつける。その矢を纏っていた氷で受け止めようとした。ぶつかる瞬間もしっかりと見てはじき返そうとしたが、矢は何の抵抗も感じてないかのように氷を貫通して来る。それを見たカイはすぐさま体を逸らし避ける。矢が後ろの壁に刺さり止まったことを確認してから纏っている氷を見れば、抉り取られた跡がしっかりと残っており、あと少しでも遅れていれば腕も抉れている所だった。
偽アルマが矢を投げたと同時に、ミカとシャリアが前に出て攻撃を仕掛ける。ミカの槍が腹を突き刺し、シャリアが顔を殴りつける。2人の攻撃を受けて飛んで行った偽アルマに向けてリオが伸ばした爪を突き刺し、透明化を使って接近したフラージュがミカと同じ様に槍を突き刺す。最後にラウラが風を打ちこむと偽アルマはその場から動かなくなる。
カイは抉れた部分の氷を戻してから矢を回収する。その矢に魔力を流そうとするが、拒絶してしまい流すことは出来なかった。弾かれるような感覚がしたが強く、矢が曲がるのではないかと思うほどの力で握り離さなかったのだが、矢がひとりでに回転し始める。あまりにも速い回転だったため手に纏っていた氷が剥がれ始める。危険だと察して手放すと、その矢は偽アルマの元に飛んでいく。
地面に矢が突き刺さると、体中から煙が出ている偽アルマが動き出し矢を握る。
「あいつに負けないくらい強いんだね。でも私達が負けることは無いから!不死身だから!」
「バレる嘘をつくのはよろしくない」
リオが言葉と同時に、先ほど矢が突き刺さった研究員のことを見る。それにつられて偽アルマもそちらの方を向く。先ほど矢に刺された研究員は大量の血を流しているのか血だまりが出来ていた。そしてその研究員の真横にはサーバが剣を構えて立っていた。
何をするのか分かった偽アルマが矢を投げるが、高速移動を使ったミカが叩き落す。先ほどのカイへの攻撃を見れば脅威になるのは矢先だと考え、矢の中腹を殴りつけたのが正解だった。矢は地面に落ちてそれ以上はサーバの方に飛んで行かなかった。落ちた矢を回収して再度投げつけようとしたが、接近して攻撃を仕掛けるカイとフラージュ、サーバを守るためにシャリアはリオが近くで待機している状況。そのような状況で矢をぶつけるのは不可能だった。サーバは躊躇うこと無く剣を研究員の首目掛けて振り下ろす。
カイの打撃とフラージュの斬撃が入る。フラージュの攻撃は腕に入ったため、観察するにはうってつけで、いつまで経っても偽アルマの傷が治ることは無かった。
その後も変わりながら偽アルマに攻撃を仕掛けていく。先程までとは違い怪我
が治ること無く、だんだんと傷ついて行き、遂には立っているのがやっとの状況になった。
「酷い……酷いよ!!大人数で攻撃してきて!ズルいよ!」
血や涙を流しながら、憎しみに満ちた目でカイ達のことを見つめる偽アルマ。
震える手で矢を投げようとするが、もう力が入らないのか矢が地面に転がる。
「ズルいなんか言う?世の中弱肉強食だって嬉々として言ってた覚えがあるけど」
「っ!?やっぱりっ!!!」
聞き覚えのある声。目の前の少女と同じ声が後ろから聞こえてくる。
階段から現れたのは翼を生やしたアルマだった。だが、いつものアルマと違い白かった翼は黒く漆黒の翼となっていた。そして彼女に生えている角も普段よりも、気持ち暗い灰色に変化していた。
漆黒の翼を生やしたアルマは翼を大きく広げると、瀕死のアルマに向けて羽を飛ばす。1つたりとも外すことのなかった羽が深々と突き刺さると、瀕死のアルマは後ろに倒れる。
「……そんなに偉いの?!そんなに」
「
羽が突き刺さったアルマは足先から徐々に灰と化していき、最後には原型をとどめず完璧に灰と化し、風に吹かれて無くなって行った。
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