第300話


 下に下りるための階段は幅広く、カイ達が横並びで下りるの容易に出来る幅だった。だが、下りれば下りる程に幅は狭くなって行き、遂には1人しか通れない幅になった。

 この中で一番索敵することが出来るサーバを先頭に置き、階段を下りて行く。

 階段を下りきると、そこには壁があった。


「万が一にもモンスターを外に放たないために設置されている扉だ。開けたら面倒だな……」

「そもそもなんでここが閉まってるの」

「そんなこと俺に聞かれても困る」


 サーバが少しだけイライラした声色で話すと壁が音を立て始める。すぐに下がり警戒し始める。


「何で俺らが上に行かんといけんのかねぇ~」

「ボタン押してくるだけだろ?文句いうなって」


 扉が徐々に持ち上がり向こう側の会話が聞こえてくる。カイ達は来た道を少しだけ戻りすぐには視認できない所に向かう。

 扉が開き切ると、研究者が2人ゆっくりと歩いて来ておりその2人はダルそうに歩ていた。

 その2人が反応する前に閉め落とすと、階段の隅に拘束して寝かせる。


「あの門は開くときに音が出るからな。こいつらには感謝だな」

「思ってもないことをよく言うの」


 軽口を吐きながら先程の扉を中にいる者達からバレないように覗き込む。

 そこは先程の1階よりも檻の数が多く、モンスターが入っていない檻は見る限りない。大量のモンスターが収容されていたが、キメラの一部になっていたオークや、問題のサイクロプスなどは見えず、檻に収容されているのはゴブリンやチーター、コボルトなど比較的小型のモンスターだった。その全てが生きがとても良く、檻を叩く音、叫び声など音が常に聞こえていた。


「色々なモンスターが収容されていますね」

「全部見たことある。キメラにされてた奴じゃ」

「キメラの姿が見えないとなると、ここは収容と調査が主だろ。無視していくぞ」


 檻の中にいるモンスターはカイ達が横を通るたびに騒ぎ、うるさくなる。そのため走り抜けていく。横目に周りを見れば、奥の方に研究員が集まってモンスターを拘束しながら運んでいた。


「好都合だな。今から調査の様だ。早く下に行くぞ」


 下に行くための階段を探していると、檻がピタリと入るくらいのスペースが開けられており、上には檻をつるすためのワイヤーのような物が見えた。


「あれで上と下に送る届けてるんですかね」

「たぶん。それより階段」




 研究員に見つからないように走り回っていると、来るときと同じ見た目の物が入り口を塞いでいる場所を見つける。そこに近づくと、サーバはしゃがみ込み壁を触ると、隠してあるとっても見つけ引っ張る。すると下りて来たとき同様に音が響き渡る。


「ちょっと!!」

「反対側に研究員が集まっていることは確認済みだ。こちらに来る様子もない。行くなら今だ」

「先に行ってください」


 完璧に開いた扉の先には、下の下りる階段がありカイ達は警戒しながら下りて行く。


 階段を降りて行けば下りて行くほどに騒がしくなってくる。それはモンスターの唸り声では無く、機械音と人の声だった。


 今度は扉が完全に開いており覗いてみると、大量の研究員とオーク、小さなサイクロプス。オークと同じ位の高さで筋肉が発達していて額に大きな角が生えたモンスター、オーガが大量に筒状のガラスケースの中で拘束されていた。

 一部の研究者達が話し合いをしており、それ以外の研究員はガラスケースの前で機械をいじっているようだった。ガラスケースの中では何か機械が動いており、モンスターのことを切ったり、何か液体を注入などをしているのが遠目に見ることが出来た。


「あれは本当にサイクロプスか?異様に小さいが……」

「でもサイクロプスを施設で育てるなんて」

「無理だなー」


 後ろから声が聞こえたのと同時に魔力感知が出来るギリギリの距離に反応があったため全員が振り返ると、眠そうな表情のアルマが近づいて来ていた。そのアルマなのだが、アルマだと言うことを象徴するかの様に存在していた翼が無くなってた。

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