第299話
アルマが出たと同時に天井は完全に閉まり切り、室内は真っ暗闇に包まれる。常人なら見えない環境でもカイ達には魔力感知があるため、すぐに行動を開始する。
魔力感知によれば周りに反応があるが、天井が開いていた時に他にも檻が見えていたこと、暗闇の中で獣の唸り声が聞こえていることからモンスターが檻に収監されているのだと仮定して動きだす。
音を立てないように檻の扉を開け、上に透明化して待機していたフラージュと合流する。
その瞬間、自分達に素早く跳びかかってくる反応を感知したためサーバは腰に帯刀していた剣を抜き受け止める。
剣と相手の攻撃がぶつかり合ったことで火花が散り一瞬だけ相手のことを見ることが出来た。それは以前スワイドの町に来るまでに見かけ戦ったチーターだった。
サーバが剣を振りぬきチーターを吹き飛ばすと、壁に衝突した音が響く。その音につられて周りの檻の騒がしくなる。
「ん?騒がしいな。檻から抜け出したかー?」
壁はそれなりに薄いのか音が漏れたことで、隣から誰かの足音が近づいてくる。サーバは素早く剣を向けたため、カイ達がその剣を奪い手を掴む。突然のことに理解が追い付かないサーバの口を塞ぎ隅に集まると、全員で手をつなぎ合う。
開けられた扉から明かりが入って来たことで部屋の全貌を見ることが出来た。カイ達が入っていた檻は先程入って来たばかりだったため部屋の中心に置かれており、それ以外の檻は部屋の隅、カイ達の後ろに積まれていた。その檻は中に何も入っていない物もあれば、モンスターが数体入っている檻もあった。その中の1つの檻の扉が壊れており、先程飛び出て来たチーターは底から出て来たのだと想像できる。そして、その檻の近くには羽が1つだけ落ちていた。
「よっぽど生きが良かったみてぇだな。血が飛び散っちまってる。ったくこりゃいつもより大変だぞ……」
くたびれている上にしおしおの白衣を着た男は、隣の部屋にからモップとバケツなどの道具を持ってくるとすぐに掃除を開始した。
ここまでの間、白衣の男はカイ達のことを視認できていなかった。フラージュの透明化のおかげだ。そのことを知らないサーバは最初戸惑っていたが、声を出してはいけないのだと理解して頷いたためカイは手を退ける。
端にいたシャリアは男は本格的に掃除を開始したのを見て、全員に見えるように扉を指さす。「閉じろ」と口パクで伝えると、ミカが離れて高速移動を使って扉を閉める。
「何だ!?あ?誰か……」
扉が突然閉められ侵入者がいることに気づいた男だったが、それ以上声を発することは無かった。シャリアが後ろから思い切り後頭部を殴りつけたのだ。それにより気絶した男は音を立てて倒れる。
「ふぅ、酔っぱらいか~。仕事中に酒盛りは良くないの~」
「さっきチラッと外を除きましたけど、誰もいませんでしたよ」
「突然塞がれたから驚いたぞ。にしても便利な魔法を使えるな。目視出来ないようにする魔法か……」
「それよりも、サーバさんこの階層に他の反応は?」
「無いな。研究者共は下に集まってる。この階はその男だけだ」
「では男を部屋の外で拘束して下に向かいましょう」
そう言って外に出ようとしたが、血の匂い嗅いだモンスター達が獰猛になり強く檻に体当たりをし始める。
元々かなり脆くなっている檻だったのか扉が壊れる音が部屋に響く。
それと同時にモンスター達が飛びだしてくる。だが事前に来ることが分かっていたため、武器を構えていたカイ達の敵では無くすぐに鎮圧することが出来た。鎮圧できたのだが、手ごたえが全くない上に一発殴っただけで倒せたことにカイ達は違和感を感じていた。
部屋の扉を開けモンスター達の死骸を確認すると、ほとんどのモンスターが瘦せていて酷い奴だと骨と皮しかない奴がいた。
「こんなになるまでモンスターを捕まえておくなんて……」
「餓死寸前までのモンスターだったらなんでも食べる。にしても今時まだそんなことしてるなんてね」
地面に散らばった血肉を踏まないように歩き部屋から出ると、男をしっかり拘束で着ているか確認してから地下に向かい始めた。
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