第297話


 門が開くと、白衣を着た大量の研究員と全て隠れるように布がかけられた状態の大きな荷台が出て来た。研究員たちは手分けして先ほど赤熱化した地面やその周りを調べ始める。


「良い感じだな~。いやぁー頑張った頑張った!」


 あまりにも大きな声だったため、カイ達のいる場所まで話し声が聞こえて来た。その調査員は他の者に何か言われると調査し始めた。

 そのあいだ門はずっと開いており、門番のような物は見えなかった。


「入るなら今だろうと思いますけど、あれだけ人目があると……」

「分かってる」


 魔力感知が引っかからないギリギリの位置にいるカイ達。そこから研究員を見るサーバの目には焦りが垣間見えた。

 しばらく見つめることしかできなかったカイ達だが、魔力感知に反応が引っかかったためその場を離れ戦闘体勢に入る。


「良い反応速度!いいね~」


 バザッバサッと音が鳴るかのように翼を羽ばたかせながら現れたのは以前の少女だった。


「アルマちゃんがお助けに来てあげたぞっ!」


 少女は降り立ち翼を少しだけ畳むと、目の横でピースを作り決めポーズを決める。

 サーバはすぐさま攻撃を仕掛けるが簡単に倒され、アルマはその背中に乗ってしゃがみ込む。


「止めろって。暴力反対。な?」

「先に聞かせていただきましょう。なぜ私達に証拠を残して呼び出したのですか?」


 リオの言葉にアルマは笑いかけると、降りてサーバのことを立たせる。サーバは今の自分では敵わないと分かりアルマのことを睨みつけることしかできなかった。


「ウォッシュから角を回収出来て良かった~。出来なかったら計画が頓挫も良い所だ」

「こちらの答えになってません」

「個々人に目的がある。それが必ずしも組織と重なる訳でない。だろ?」

「そう言うことですか……。それであなたは何をしてほしいと」


 その言葉を待っていたと言わんばかりに少女は笑みを浮かべ問いかけたリオに詰め寄る。


「殺してほしい奴がいる。アンタらの目的の奴だ。協力してくれよ」


 先ほどまで話していた少女だとは思えないほどに冷たく低い声で言ってきたため全員が狼狽えたが、アルマはすぐに後ろに下がり再度笑いかける。


「殺すのはちょっと怖いから変わりにやってくれると助かるな~と思って」

「……この前のウォッシュは?」

「それは仕方なく?」


 疑問形で首を傾げながら言ってくるアルマは少しの間だけ考える素振りを見せると「まぁいいよな!」って満面の笑みで言うと、カイ達も持っている袋を取り出し、その中から大きな檻を取り出す。


「そんなこと良いから。これに入れ~」


 侵入する経路が無いのも事実なためどうするか少しだけ考えたが、この手が最善だと心に言い聞かせ檻の中に入っていく。


「私は檻の上にいるよ。貴方が裏切らないとも限らないから」

「好きにして。それじゃ行くよ」


 フラージュが檻の上に跳び乗るとアルマは羽ばたきフラージュの隣に移動する。少女の腕力だと思えないほどの力で軽々と檻を浮かせるとラトイルの街に向けて飛び出した。

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