第296話
キメラやサイクロプス、数多くのモンスターの進軍。その影響でラトイルへの道のりにモンスターはほとんどいなかった。
その代わりと言うことか、辺り一面にはつぶされた肉塊がありあまりにも大量のモンスターに踏まれたためか原型が残っていなかった。しかも数日間放置されていたこともあり、辺り一面が異臭に包まれていた。あまりの臭さに全員の顔がしかめっ面になる。
「……だいぶ歩きやすくなってますけど、元の道もこんな感じなんですか?」
「そんなわけあるか。こんな異臭で歩きやすいとは狂ってるのか」
「……」
「そのボケは今じゃない」
サーバを除く全員が冷たい目を向け、ラウラのひと言にサーバは大きく咳払いをして前までのことを話しだす。
「……言っても信じないだろうが、ここら一帯は『ライトルの花園』と呼ばれる場所だった。お前達を見つけた森。あれはモンスターが作った物で実際に森じゃない」
「動かない木もありましたよ?」
「あれはトレントの遺体だ。この空中に舞う濃い魔力のせいで草木が自然に生えることは無い。言うなれば肥料を上げすぎた花と一緒だ。適度な量であれば栄養になるが、多すぎれば毒になる。そんな中、ライトルは研究を続けこの濃度の魔力に耐えうる花々を作り出した。それがここらにうめられていた。ライトルから進行されたと聞いた時は無くなったと思ったが、ここまで跡形もなくなってるとはな」
悲しそうな表情になるサーバ。今までそんな表情を見たこと無かったが、何か思い入れがあるのかもしれないと言うことでカイ達は一旦話しかけるのを止めた。
「……気づいたか分からんが、ここらに花を咲かせることが出来たのは魔力濃度が薄いからだ」
そう言われて魔力感知を集中して使ってみたが、全く気付くことは出来なかった。
「人間と魔人では魔力器官の作りが違うと言われてるからな。気づけないのはそれが原因だろう」
「そんなに魔力器官が発達してるんですね」
異臭を我慢しながら長く平坦な道を進むと、前の方に要塞のような物が見えてくる。あれがライトルなのかと確認のために視線を向けると、サーバが酷く驚いた表情をしていた。
「な、なんだあれは……!?」
「あれがライトルじゃないんか?」
「……分からん。あそこまで要塞化している街では無かった。数年でここまで変わるとは……」
離れた場所から様子見をしていると、四足歩行の狼型のモンスターの集団が街に近づいて行く。
すると街を守る砦の上部が機械的に動き出し、出て来た大砲の砲口を狼型のモンスター達に向け始める。
「まさかっ!?伏せろっ!!」
サーバの言葉一斉に伏せると、すぐさま強風と砂埃が襲い掛かってくる。
砂埃が晴れ、状況を確認すると先程までモンスターがいたところの地面が赤熱化していた。
「……あれは数十年かけて計画していた防衛システムだ。まだまだ数十年は完成させられない物のはずだが」
「ですが完成している様に見えます。いくら何でもあれを防ぐのは……」
最初の予定では防衛している衛兵達の目を盗んで入る所だったが、あの防衛システムがあって無策に進んでは焼き殺されてしまう。
どうするか話し合おうとした所で、硬く閉ざされていた門が音を立ててゆっくりと開き始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます