第293話
動かないながらも、ボソボソとか細い声で話し出す。それを疲労困憊で動けないカイとミカは聞き耳を立て、他の4人はゆっくりと警戒しながら近づき聞き漏らさないようにする。
「なぜ……最強の、はず……最強だと……いずれ」
次の瞬間、ラスターの真上に何かが落ちてくる。その衝撃があまりにも強く全員が飛ばされる。
「最強最強うるさいなー。殺すって言ってたくせに、この様。なっさけな!」
上から降って来たもの、それは以前ウォッシュが現れた時に一緒にいた少女だった。
少女はつまらなそうな顔でウォッシュのことを強く踏むと、ウォッシュは苦しそうな声を上げる。
「ま、どーでもいいけど。こんな負け方した奴は要らないって言われちゃったから」
少女はウォッシュの上から降りると、足をウォッシュの上でゆっくりと徐々に上げて行き、遂にはその足を下ろした。
「はぁー……。汚れるし、死ぬところなんて見たくないのに。なんで私がこんなこと……」
ぶつぶつ文句を言う少女は足を振って汚れを落とす。次に少女はカイ達のこと、特にカイのことを見つめる。
「最後は暴走からの自滅だったとはいえ、ここまで戦えたのは単純にすごいと思う。これからも頑張ってー」
「逃がすわけなかろう」
「貴方を捕まえます」
足に付いた物をある程度落とし終わると、少女は背中の大きな翼を羽ばたかせ飛び立とうとする。そこにすかさずリオとシャリアが攻撃を仕掛ける。
2人は合図も何も出す事なく、両方から拳を伸ばす。だが、その拳は宙を切る。少女が拳が届くよりも先に飛んだからだ。まだ手が届く距離にいることもあり追撃として、リオは逆の拳を出しシャリアは蹴りを放つ。そんな2人の攻撃を少女は簡単に手で受け止める。
捕まれたことで動けなくなった2人を少女は足先から頭のてっぺんまで、体の隅々までなめるように見ると、優しくカイ達の方に投げる。空中で体勢を整えた2人は綺麗に着地する。
同時にフラージュがナイフを数本投げるが、そのナイフは少女を守る用に包み込んだ翼によって防がれる。
「戦う気ないって。はぁー、もういいや」
少女が羽ばたくたびに徐々に空高く移動していき、ついには飛んでも手が届かな所まで行ってしまう。シャリアはラウラのことを見るが、ラウラは首をゆっくりと首を振り、追撃出来ないことを伝える。
何も出来ないと分かりシャリアが地面に座り込み、ミカも手を下げると上空から少女の声が聞こえてくる。
「そうそう。早く回収しないと何も残んないからなー」
その言葉に全員が一斉にウォッシュの遺体を見る。するとウォッシュの体から煙が出ており、徐々に溶けていた。
「っ!!ハーッ!」
カイは少なくなった魔力を総動員して遠くにあるウォッシュの遺体を青い炎で包み氷つかせる。
残す事が出来たことに安心して両手を地面に付けると、そこにミカが歩み寄る。
「何を考えとる……」
「分からない」
「あちらとしてはウォッシュの遺体が有っても無くても困らないと言うことでしょうか?」
「その可能性は高いかと。それでも回収は出来たわけですし、調べてもらいましょう」
他の4人はそんな会話を交わしながら、疲れ果てているカイに近づいて行く。
カイ達の下から飛び立った少女は、飛びながらウォッシュと遠距離で会話した時に使っていた
『後輩は消し終えたか』
「それはもう跡形もなく。溶けて無くなった」
『報告は分かった。今すぐ帰還しろアルマ・ヒュー』
「フルネームで呼ぶな!アルマちゃんと呼べ!」
言い切るよりも前に通話を切られたことに舌打ちをしたが、アルマと呼ばれた少女はすぐに楽しそうに笑顔を浮かべる。
「ヒントはしっかり残した。たっっっのしみ~。待ちきれないなー」
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