5章 反撃開始
第294話
現在、カイ達は真剣な表情でいながらも、隠しきれない笑みを何とか隠そうとしている姫のことを見ていた。
サイクロプスの集団とウォッシュの撃退を行った日、たくさんの兵士が犠牲になったことに町で待機していた者達は胸を痛めていたが、翌日にはその顔も少しは明るくなった。それはサイクロプスどころかモンスターが攻めてこなかったからだ。それを沿った時の姫は今まで見たこと無いほどに安心した表情をしていた。
負傷者に治療や、瓦礫の撤去、建物の修繕などを行っていると、気づいたら数日すぎていた。その数日でカイ達は戦闘による疲労を完璧に回復したところで姫から呼び出しを受けて、現在会議室に集まっていた。
「皆様お待たせいたしました」
「姫様、少しは表情をお戻しください」
後ろに待機しているバルターが声をかけるが、彼自身も喜ばしいことがあったのか、いつもより表情が優しい物になっていた。それはサーバとメイドも同じで、サーバの目からは戦意が溢れていた。
一つ大きく咳払いをすると姫が話し出す。
「サイクロプスとの戦闘。また、ウォッシュの撃退・遺体の回収。本当にありがとうございました」
「その言い方、その雰囲気、何か発見がありましたね」
「えぇ、ここから反撃し始めます」
姫の言葉にバルターは資料を取り出し、カイ達の前に置いて行く。その資料を見ると数人の魔人の名前と出身地など個人情報が書かれていた。
「魔人と人間はそこまで違いはありません。人間よりも強靭な肉体と角。能力があるだけです。互いに魔力を持っている点は一緒ですから。そして、魔力は個人個人違う物になっています。これは皆様もご存じですね?」
バルターの言葉に全員がしっかりと頷き返す。そして、バルターは魔人達よりも太く、黒々しい角を取り出し机に置く。
「これは国が出来るよりも前、初代国王が見つけたとされる
「……そう言うことですか。このリストはウォッシュの遺体から回収できた魔人の角の情報を元に出した個人情報ですね」
リオの言葉に姫達は1回大きく頷く。
「ダメ元で調べたところ、角には本来の所有者の魔力情報が残り続けるようです。そのため、ここまで調べることが出来ました」
「でも、ここには10人以上……。角は10組しかなかったはずです」
「回収する時に損傷した」
「私達もそう考えております」
ラウラのひと言に姫が賛同する。
角自体は10組あったのだが、角を奪い取るときに損傷。片角が使い物にならなくなったから片方の角を他の人で代用した。その結論に行きつくのは必然だった。
「バルターさん、魔力を登録するのは魔人達の義務何ですか?」
「はい。魔国にいる者は登録することを義務にしております。また、それを魔国内で共有できるようにもしておりますので、権利がある物はいつどこでもそれを見ることが出来ます。現状その権利があるのは私と姫様だけですが」
「……おかしくないですか?だって、私達はウォッシュの遺体を回収させられたんですよ?」
少女が言わなければウォッシュの遺体を回収するこは出来なかった。そのことが嫌と言うほど分かっているカイ達は警戒度を強める。
「分かっております。ですが、登録されている情報を改ざんすることは不可能です。私達がラスターに初めて攻撃されたとき、国に関するシステムを凍結。表面上は消去したことになっていますから」
「……この情報を信じていいんですか?」
不安をぬぐい切れない現状にカイ達が心配になるが、姫は真っすぐな視線でカイ達のことを見る。バルターもその様子を見てすぐに口を開く。
「確かに得るように手引きされた情報です。ですが、これに賭けるしかないかと」
「守るだけではこちらが消耗しきって終わりです。今こそ反撃する時なのです。どうか、協力していただけないでしょうか……?」
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