第291話
進めば進むほど平地だった戦地が荒れ荒れ、魔人達の死体が増えてくる。
この攻撃のおかげと言うべきか、サイクロプスは魔法に巻き込まれ全て倒されたため地鳴りは聞こえて来ない。巻き込まれなかった者や運よく当たらなかった達もお互いに肩を貸し合いながら撤退し始めている。
その様子を横目にカイ達は進んでいく。進むほどにカイ達の足は速くなりあっという間にある場所につく。そこから地面に隆起が広がっており、そこには男が1人立っていた。
「待っていたぞ。だが残念だ。ここまでしないとお前はここに来ないとはな」
男は被っていたフードを取る。そこには以前見たように額から4本の角を生やしており、目線はずっとカイのことを見ている。
「なんでお前が生きてる。確実に殺したはずだ、ウォッシュ」
「ウォッシュ……そう呼ばれるのも久しい……」
余韻に浸るかのように喋ると、次の瞬間手を地面について隆起させる。カイ達はバラバラにながらも避け切り、ウォッシュに攻撃を仕掛け始める。
一番初めに近づいたカイは鉄製の剣を振り下ろすと、ウォッシュはそれを腕で受け止め押し返す。
「こっちの疑問に答えてよ!」
「それを知ってどうする」
ウォッシュは押し返した流れでカイに向けて手のひらを向ける。中に浮いているカイは避けることが出来ないと判断して腕で防御する体勢になる。
予想通りウォッシュの手のひらから火の球が放たれる。そこまで威力がある魔法では無かったためカイは衝撃を受けるだけ抑えることが出来た。
カイに魔法を放っている隙に接近したシャリアとミカ。シャリアは真正面から殴りかかると、ウォッシュも反対の拳を出し、それを受け止める。
背中から奇襲を仕掛けることに成功したミカはそのまま槍で突き刺そうとしたが、空中で槍が止められる。それはまるで見えない手で槍を掴まれているかの様だった。ミカは強引にウォッシュの方に引っ張られると、カイ達がいる方向に投げられる。
後ろに下がるシャリアと、投げられたミカと交代する様にフラージュとリオが前に出る。フラージュが真正面から槍で突き攻撃を仕掛け、その後ろからリオが爪を飛ばす。ウォッシュは槍の突き攻撃を全て、その肥大化した大きな手で受ける。
リオの伸ばした爪も同じ様に受け止める。そのたびに傷つく腕だったが、攻撃を受けた瞬間に傷が癒え、何もなかったかの様になる。
ウォッシュは攻撃を受けながら口を開くと口から水を飛ばす。飛ばす速度が異様に早く、まさに光線と呼んでいい物だった。2人はそれを察知し後ろに飛ぶ。
ラウラが2人に当たらぬように風の刃を飛ばし始める。それも先程の攻撃と同じ様に腕で受けきる。
「かなり力が強いの」
「背中から攻撃したとき急に止められたよ!?」
「あの腕厄介ですね」
「それにさっきの水のブレス。明らかに魔法だよね。地面の隆起。カイ君に向けて撃った炎。それに水のブレス。何属性使えるの」
ラウラの魔法を受けてる隙に、カイは氷を纏い氷の剣に変え突撃する。
フラージュ達のときとは違い、今度は反撃するウォッシュ。あまりにも大きな腕なため、断ち切ることは出来ず、剣は届いても剣の途中で止まる。その隙にウォッシュはカイに向けて雷を飛ばす。カイはそれを腕に纏った氷で受け止めることで無効化する。そして剣を手放し、鋭くなっている指先で腹をつきさす。その攻撃は綺麗に入り、ウォッシュを体内から焼き始める。
「甘いな」
普通なら致命傷な攻撃。喋ることが出来るはずのないのに喋ったことにカイはすぐさま後ろに下がろうとする。だが、腕が腹から抜けず下がることが出来なかった。
そのことが分かったラウラ達はすぐさまカイの援護に入る。
カイに向けられた拳をリオが糸を巻き付けることで止め、ついでに斬り落としていく。残りの片手の攻撃はシャリアが腕を殴り飛ばし、胴が開いた隙に、ミカとフラージュがカイの腕を抜くのを手伝う。3人が全力で引っ張ったため何とか抜けたが、その時3人にウォッシュの血が少量かかる。肌に着いた瞬間、まるで皮膚を溶かすかのような痛みを感じたが、怯むことなく3人は後ろに下がることを優先する。
それを確認したシャリアも後ろに下がる。
「魔法で腕をコーティングしていなければ溶けて無くなっていた。運が良かったな、カイ」
穴が開いた腹がゆっくりと閉じて行きながら話すウォッシュ。
カイは、血が大量に突いた氷の手を下に向けて血がかからない様にして解除する。
完全に腹がふさがると、ウォッシュは今まで脱がなかったローブを脱ぐ。
「ここからが本気だ。全力でお前達を殺しに行く」
それだけ言って、口に手を突っ込み丸い石のような物を取り出す。それを握って砕く。するとウォッシュの姿が揺らぎ始める。
揺らぎが終わりしっかり見えるようになると、ウォッシュの背中から腕が2本生えており、その上背中には16本の角が。その角は同じ色が2つずつで、額の物と合わせると10色の角が生えていた。
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