第290話


 倒しても倒しても減らないサイクロプス達にカイ達は嫌気がさしはじめていたが、倒す手を一瞬たりとも止めることはなかった。

 カイは剣を、ミカとフラージュは槍を、ラウラは杖を、シャリアは拳を、リオは爪を、それぞれの武器を駆使することはもちろんのこと、身体能力の全てを使い確実に1体1体サイクロプスを倒していく。

 そんな彼らの姿を見て、勇気をもらった魔人達はようやく重い腰を持ち上げ動き出す。最初はサイクロプス1体あたりに10人くらいで挑んでいたが、時間が経てば経つほどにその形は減っていき、3人でサイクロプス1体を相手する様になっていた。




 魔人達が参戦したことによって余裕ができたため、カイ達は一時的に戦線を離れ、失った体力の回復を図る。


「皆さん、どのくらい倒しました……?」

「分からん……数えるのが無理な数というのはわかるの」

「もう魔力ない」

「私も足パンパン……」


 皆一様に疲労を感じていたが、これほどまでに多くの数の大型モンスターを一度に相手したことがなかったカイとミカは特に強く疲労の色が見えており、ミカに至っては高速移動の影響で歩くのも辛いほどだった。


「ここまでの数。どのように揃えたのか知りたいところですね」

「そうですね。それにある程度距離があると言っても、こんなに接近されるまでサイクロプスの存在に気づかなかった事も気になります」

「今はそんな事いいじゃろ。まだまだ戦うんじゃからしっかり休まんか」


 その言葉で全員が休憩を取りながらも、いつでも戦線にいけるようにしておく。


 だが、そう長い間休憩することは出来なかった。

 サイクロプスの足音とも違う何か大きな音が前線で響き渡る。




 カイ達が前線を離れて数分後、魔人達は順調にサイクロプスを倒して行っていた。

 順調倒せていれば、多くの人は調子に乗りミスを起こすことがあるが、彼らは訓練された兵士。誰1人として油断せず、警戒は怠らず、1人が隙ができて攻撃されそうであれば協力して守り反撃。1人の攻撃で倒せないのでたれば複数人で攻撃を与えることで倒す。

 そのようにフォローしながら戦っていた。


「お、俺らでもそれなりに戦えるな」

「お、おうよ。俺たちの町は俺たちが守るんだ!!」

「お前たち!1人になるな!必ず集団で動き隙が出来てから攻撃しろ!!そこ!危険だ一度下がれ!!」


 また、魔人達が調子に乗らないのにもワケがあった。以前サイクロプスが現れた際に前線で指揮をしていた男が今回も声をあげていたからだ。

 男は自分も戦いながら周りの兵士達に目配りし、危険であれば下げ、好機であれば自分から攻撃することで兵士達の統率を取っていた。


 サイクロプスの対処にも慣れてきて、動きが良くなってきたところで、サイクロプス達の動きに異変が現れる。今まで同様に攻撃はしてくるのだが、足を進めないのだ。一切進むことはなく、足を動かすのは足元に魔人達が近寄ってきた時だけ。

 そのことに違和感を感じながらも男は指揮をしながらサイクロプスを倒していく。


 違和感に気づいたから数体倒したところで、サイクロプスの後ろから1人の男が現れる。全員が逆さま警戒したが、相手の方が早かった。


「お前が指揮官だな」


 その一言を喋ると、敵は地面に手をつけ、まるで砂を飛ばすかのように腕を振り上げる。普通ならば砂が飛んでくるだけだが、敵が振り上げた瞬間、ものすごい音と勢いで、先が鋭い棘が連なったような形に地面が隆起し始める。

 硬度もかなり高く、巻き込まれた魔人達は腹などを貫かれていく。

 指揮官の男は回避の指示を出してすぐさま自分も避けようとしたが、隆起は10日ならばなるほど広くなり避けることはできなかった。


 隆起が収まると、そこには魔人達だけでなく、大量の棘に貫かれたサイクロプスの亡骸が数え切れないほど散らばっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る