第283話


 キメラの大群が攻めて来た翌日、以前までと違い警戒態勢が強くなり、町中の空気はピリ付いていた。

 カイ達はそんな町から出て、町を守る壁の外にいた。

 先日の戦いの跡がまだ大量に残る平地を魔人達が処理している状況を見ながら、キメラ達が再度攻めて来た時にすぐに対処出来るためだった。


「でも、なんで普通のキメラと作られたキメラが一緒に攻めて来たんだろうね?」

「群れで生活することもあるじゃろうから、それかも知れんの?」

「人工モンスターと一緒に行動するのは不自然」

「何が言いたいんじゃ」

「群れの中に異物が居たらそれを攻撃するはず。だけどキメラは町に一直線に来た」

「……洗脳が使われてるって言いたいの?」


 カイの言った「洗脳」その言葉だけで、全員の顔がこわばる。


「ウォッシュと言ったかの?あやつは倒したはずじゃ。目の前で見たろ?」

「見た。でもこの現象を説明するのに、洗脳が一番楽」

「楽って……」


 その発言に全員の力が少なからず抜けると、不意に地響きがし始める。そして、平地の遠くの方を見れば、黒い霧で見えづらくなっているが、遠くで砂煙が起きてるのが分かる。


「き、来たぞぉおお!防衛体制ぃいい!」


 1人の魔人の大きな声を皮切りに魔人達が大量に町から出てくる。その中には包帯を巻いている者がちらほらいた。

 走ってきていることが分かっているため、ガタイの良い大盾を持った者達が急いで壁の前で横に並び始める。


「昨日見たいに突然魔法を撃ってくるかも知れん。注意しろ!」


 魔人達が防御態勢に入っているのを横目に、壁の上にいる魔人達はキメラ達が見え始める。人間よりも目の良い魔人は壁の上に言えても遠くを見ることが可能だった。


「もうそこまで来てるぞ!急げ!」


 上からの声を聞き、焦る魔人達。すると、モンスターの大群の戦闘で爆発が起こり、大量のモンスターがやられていく。


「今回はキメラだけじゃなくて、色々のモンスターが来てますね」

「オーク、ゴブリン、コボルトにスライム。他にもたくさん。本当に多種多様ですね」


 爆発を起こしたのはカイ達だった。

 カイ達は地響きと同時にモンスター達に向かって駆けだしていたのだ。

 カイ達は姫やバルターを含め、次に攻めてきたらどうするか話し合っており、これも作戦の内だった。

 昨日のキメラ達と違い、今回は思考のあるモンスター達が集まったの、最初の一撃を受けて怯む。その隙にカイは両手を地面に付ける。そして、すぐ横に高さ4m程の赤い氷柱作ると、ゆっくりと横に広げていき壁を作っていく。ゆっくりと出来て行くため、モンスター達は正気に戻りカイのことを攻撃しようと動き出す。そのモンスター達を排除しながら、ミカ達はモンスターの大群の中に突っ込んでいく。



 皆でカイを守りながらモンスターを倒していると、魔人達の援軍が到着し、カイの後ろから魔法を撃って撃破し始める。魔法部隊の後ろには歩兵隊もおり、壁が作られる前に通過したモンスター達を倒していた。


「貴方がカイ殿ですね。バルター様より話しを聞きました。もうすでに大きさとしては十分かと」

「強度は十分に高めといたので、壊されることは無いと思います」


 防衛隊長に報告するたカイは、見るからに魔力欠乏から疲労しているのだと分かる程で、よく見ればフラフラしていた。


「このような無茶な作戦に乗ってくださりありがとうございます」

「これが士気の維持につながってくれればありがたいですね」


 以前戦った時のような鎧では無く、執事用の服を着たバルターがカイに肩を貸すと、一瞬にしていなくなった。


「カイ殿の帰還を確認しました!!魔法部隊!先行してくださった皆様の道を作れ!」


 先程の防衛隊長が声を上げると、ミカ達は振り返り、唯一開いている壁の間へと走り出す。それをモンスター達は妨害しようとするが、魔人達の魔法によって倒されていく。

 魔人達の助力もあり、ミカ達が戻ると、魔法による攻撃音がより強くなる。


「皆様、ありがとうございます」

「昨日とやることは変わりませんから。それで状況は?」

「この壁のおかげで、ここは魔法部隊だけでどうにかなるかと。問題は通過したモンスター達です。予想よりも数が多いので向こうはかなり厳しい可能性が。まだ厳しくなった時に上げる狼煙は上げられていないので持ちこたえてはいますが……」


 すぐにミカ達は町に向けて走り出した。

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