第284話


 魔法部隊の後ろで、壁が作られる前に通過したモンスター達から魔法部隊を守っている部隊の先に出ると、モンスター達が見境なく攻撃して来る。


 ミカは部隊を抜けた瞬間に足に雷を纏わせ、手を伸ばしてきたオークの後ろに瞬時に回ると、迷いなく首を斬り落とす。力が抜けて倒れるオークを見守る時間も無く、ミカに向けて攻撃しようとするモンスターは多く、ミカは攻撃が当たる寸前に高速移動を使う。それにより、攻撃が当たらなかったことに困惑するモンスター。そんなモンスター達をミカは首を斬り落としたり、心臓や脳天を一突きして倒して行く。


 ラウラは攻撃して来るモンスターを捉えると、その場で立ち止まり構えると、攻撃して来たモンスターのことを蹴りつけ軌道を逸らす。体勢が崩れたモンスターの頭に付けを突き付けると、ゼロ距離で魔法を放ち頭を爆散させる。他のモンスターがその様子を見て怯むと、ミカは的確に喉元だけを切るように風の刃を飛ばしながら駆け抜けていく。


 フラージュは魔人達の部隊の間を抜けている間に透明化したため、モンスター達の前に出ても認知されることは無く、すれ違いざまにミカと同じ様に首を落すか一突きで倒して行く。だが、中には鼻が良いモンスターもおり、フラージュの存在に気づき攻撃をしてくる存在もいた。フラージュは焦ること無く、振り下ろされた拳を最小限の動きで避けると、モンスターの腕の上を歩き、首を叩き落す。


 シャリアは部隊の魔人達の間を抜けること無く、1回の跳躍で魔人達の上を超えると、モンスターの巣窟の真ん中に降り立つ。一斉にシャリアのことを攻撃するが、シャリアはそれもジャンプで避けると、そのジャンプの先にはモンスターの頭があり、まるでボールを蹴るかの様に蹴りつける。すると頭は胴体と離れ、勢いよく飛んで行く。蹴り飛ばしたモンスターのことなど気にする事無く、モンスターの1体を着地と同時に踏みつぶすと、殴り飛ばしながら前に進んでいく。


 リオは手袋についている爪をモンスター達に深々と突き刺す。痛みで爪を外そうとしたモンスターは爪につながっている糸に触れると、指や腕が抵抗することなく落ちて行く。あまりにも抵抗することなく落ちて行くため、最初は分かっていなかったが、次の瞬間、あまりの痛さから叫び声をあげる。痛みでうずくまっているモンスター達はそのままに、リオは前にではなく横に向けて走り出す。それにより、糸に巻き込まれたモンスター達は糸によってスパスパ切れて行く。最後に手を握って引っ張ると、爪を突き刺したモンスター達が飛んでくるように接近して来る。そのモンスター達をリオは残っている片手を使い、空中にモンスターの首に器用に糸を絡ませると、軽く力を入れて順番に頭を落していく。


 モンスター達を倒し進めば進むほどに、モンスター達は減っていき、前線に行く魔人達がいた。ミカ達はモンスターがいないことに違和感を感じながら進み、町のすぐ近くに着いたが、そこには戦闘の跡などは一切なかった。そのため魔人達は迎撃態勢では無く、防御態勢に入っている上に、どんどん前線に援軍を送っていた。


「状況はどうですか?」

「あ、バルター様より話しは聞いております、シャリア様ですね。それが不思議な事に町の近くまでモンスターが来ることは無く、ほとんどのモンスターが前線の魔法部隊の方に向かいました。なので私達は最小限の防衛が出来る人数を残して前線に向かっている現状です」


 ミカ達は町の方にかなりの数のモンスターが向かったと聞いて急いできたが、こちらに来る中で、最初こそは大量にモンスターがいたが、途中からモンスターが減っていた。そのため、モンスターの数は町に控えている部隊だけで対処できない程の数では無いと今では思っていた。


「あの隊長の見立てがおかしかった?」

「それか……」


 ミカが考えを言おうとした瞬間、カイの作った壁の奥で大きな爆発音が聞こえ、地響きが響き渡る。その揺れはいかなり強く、立っているのがやっとと言った程だった。

 前線の方を見れば、そこにはカイが作った壁の一角をだと思われる赤い氷の塊を持った一つ目の巨人がいた。

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