第282話


 キメラが爆散したことでカイに大量の血液がかかる。そんな真っ赤になったカイに向かって大股で荒々しい足取りでサーバは近づき胸倉を乱暴につかむ。


「貴様ぁあ!何をしたか分かっているのか!危うく町民を殺す所だったんだ!その上、姫様もいるのだぞ!何かあったらどうする!」

「ここでモンスターの死体がなくなってれば、敵のことを調べることが出来ません。こんなに攻めて来た原因が分からない以上、また来るかもしれないじゃないですか。そうなれば俺達が不利です」

「貴様っ!!」

「サーバ、やめなさい」


 バルターのひと言に、サーバは今一度カイのことを睨むと押し出すように手を離す。

 バルターが姫に視線を送ると、姫はカイの方に手を向け、真上に水球を作るとそのまま水を落した。その水によってついていた血はある程度落ちた。

 イラついたままだったが、サーバが解剖班の者達に指示を出しに戻る。




「カイ様にとっての誤算は、最後の1体だけと言ったところですかね?」


 凍り付かせたキメラや、自分達が壊したからとケースなどの処理を手伝っていたカイ達。少しだけ疲れたカイは隅で休憩していると、後ろに来ていたバルターが話しかけてくる。


「姫様の所にいなくていいんですか?」

「姫の下にはサーバが居りますから。カイ様、ありがとうございます。貴方が気づかなければ悲惨な事になっておりました。ところで、カイ様はキメラを凍り付かせ保管することが可能だと確信しておりましたね」

「戦った時に止めることが出来てましたから。まぁ全部踏みつぶされて跡形もなくなりましたけど」

「そうでしたね」


 バルターと話していると、ミカが捕獲したキメラを解剖することになり、呼ばれたためカイはそちらの方に向かう。


「もしここが戦地であれば、カイ様は一瞬で全てのキメラを凍り付かせることが出来たのでしょうね。この状況は私達が足を引っ張ったと言うのでしょうか……。鍛錬し直さなければなりませんね。あちらにはあ奴もいることですし」


 両目を閉じたバルターの脳裏には、ある1人の男の背中姿が浮かぶ。そして、無意識の内に腕についている大きな傷跡を触る。


「もう一度戦うときは命を懸けることになりますかな」


 バルターもまた、姫の下に戻るのだった。




 キメラを解剖した結果、つなぎ目がある奴とない奴では結果が違かった。

 明らかな違いはすぐに出た。それは解凍した時だった。つなぎ目が無い方は再度動くことは無く、安全に調べることが出来たが、つなぎ目がある方は解凍した瞬間動き出し、拘束を強めることでようやく調べることが出来た。また、解剖している最中も動き続けた。それは心臓をとってもで、体内の臓器と言う臓器を全てとっても、動き続けたため、そのまま焼却処分となった。




「解析班に回したところ結果は後日になると言っていました」

「ご苦労。今日はもう休みなさい」


 解剖班の班長は報告が終わると部屋から出て行き、部屋には姫とバルターだけとなった。


「人工的に作られたかはまだわかりませんが、可能性はかなり高いかと」

「あの様子を間近で見ればそんなこと分かっています。人為的にこの町に攻めて来た。これがただの偶然ならばいいのですが、そんなことはありえないですね」


「ラスターはもう仕掛けて来てます。私達も何か策を講じなければなりませんね」

「はい姫様」


 未だ上る遠くの黒煙を眺めながら、姫はラスターを倒すための策を練り直し始めた。

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