第281話
人工的にモンスターが作られ、王国で何があったのか。それを何も知らない姫達に伝えた所、本当に人工的に作られた物なのか。それを調べることになったため、町中に運ばれているキメラの死体を調べることにした。だが、キメラ達が切り刻んでも切り刻んでも倒す事が出来なかったため、ほとんどの死体がバラバラで調べると言っても難しい現状だった。カイが凍らせた物も全てが進軍して来る他のキメラに崩されたり、確殺をするために砕いたため綺麗に残っている物は無かった。
本当に稀だが、綺麗な状態の死体が数体だけあったため、それは厳重に保管されており、それをカイ達は少し離れた場所で見ていた。保管されているキメラの中には、それぞれのモンスターのつなぎ目に縫い目が有る物と無い物があり、どうしてそうなっているのか分からない現状だった。
「あれだけモンスターがいたのに、残ったのはこれだけか……」
「バラバラにしないといつまでも動いてた。仕方ない」
「電気を浴びせてもしばらく止まるだけで、また元通りに動き出しましたからね」
そんなことをカイ達が話す中で、死体処理班に回っていた魔人達が保管しているガラスのケースを外し、数人係で巻いていた複数の鎖をほどいて行く。
そして、巻いていた鎖が残り1個となったところで、キメラの指がピクリと動くのをカイが見た。だが、それは魔人たちには見えておらず、誰も気づいていない。カイはすぐさま駆け出す。その行動を誰も予測していなかったため全員が驚く。だが、次の瞬間、目を開いたキメラが腕を上げ、すぐ近くにいた魔人の頭を握りつぶそうと動いたため、カイより数秒遅れて走り出す。
カイは手袋に魔力を流しながら接近すると、握られそうになっている魔人のことを突き飛ばし、出した剣を使ってキメラの指と腕を細切れにする。切った物が真上にあったため、カイに大量の血がかかるが、そんなこと気にせずに頭と体を切り離しすぐに胴体の方を凍り付かせる。
「すぐに保管を!!」
「は、はいっ!」
急いで鎖を巻き直していると、他のキメラ達も鎖をジャラジャラと音を立てながら、ケースの中で暴れ始める。いくら頑丈に鎖が巻かれていると言ってもかなり乱暴に暴れているため、壊れるのは時間の問題というのが目に見えていた。
ミカとフラージュはキメラが入っているケースに近づくと、フラージュが取り出した槍を使い、ケースを破壊しようとする。だが、ケースは簡単には壊れず、10回程全力で殴ってようやく壊すことが出来た。壊れたケース隙間からミカが雷を流し始める。雷を受けたキメラは痺れ、暴れなくなった。
「つなぎ目がある奴を確保したよ!」
シャリアもフラージュと同じ様にケースを破壊すると、モンスターのことを掴む。そして、そのまま力づくでケースから取り出す。鎖が台座につながれていたが、それすらも力づくで引きちぎったため、出て来たモンスターはすぐに暴れようとする。それを、また力づくで押さえつける。それでも腕と足が自由でジタバタさせていたが、ラウラが足を風で斬り飛ばし、リオが糸で腕を地面に固定させる。
「つなぎ目が無い奴も確保した。最悪この2体だけ残せば問題ないの」
カイ普通の剣から青い炎で作った剣に持ち換えると、未だにケースの中で暴れるキメラに近づいて行く。
「全部開けてください!」
「はいっ!」
「待て!万が一仕留めきれずに町中に放ってしまったら、大量虐殺が起きるぞ!人が来るまでケースの中に閉じ込めるんだ!」
サーバの一声に最初にケースを開けようとした魔人の手が止まるが、先程カイが突き飛ばした魔人がケースを開けるボタンを押していく。
「お前何やってるかっ!!」
「分かってる!人が死ぬなら施設が壊れた方がマシだって分かってる!でもよ!さっきあの人は俺を助けてくれたんだよ!だからあの人が開けてくれって言うなら俺は開ける!」
話しながらも手を詰めなかった魔人は、最後のボタンを押すとカイのことを見て大きな声で「全部開けましたっ!」と報告した。
ケースが開いたからと言って、まだ鎖は残っているため、比較的簡単にカイはキメラの腹に剣を突き刺しては内と外から凍らせていく。順調に凍らせていったが、凍らせるのには数秒かかってしまうため、最後の1体だけは、剣を突き刺す前に鎖を引きちぎってしまった。
近くにいた魔人は退避し、離れた場所にいたラウラとバルターが魔法を飛ばしていく。魔法を受けてもキメラは周りをキョロキョロするだけで攻撃をすることが無かった。あまりにも奇妙な行動だったため、警戒して2人は魔法を撃つのを止めて防衛体制に入る。カイも急いでキメラに近づく。だが、カイが剣を突き刺すよりも先に、体内から膨れ上がり爆散してしまった。
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