第280話
「こ、これはっ!?」
姫の後ろに控えているメイドの狼狽える声が部屋にわたる。その瞬間また爆発音がすると、今度は町をモンスターから守る壁から黒煙が立ちのぼる。
それだけでは収まらずに、立て続けに爆発音が起こり黒煙が大量に立ち上る。
すぐさま姫がバルターに指示を出すと、バルターと入れ替わりにサーバが部屋に戻ってくる。
「報告です!北側からモンスターの大群が進行中!なお、そのモンスターはキメラ種とのこと!中には見たことのないモンスターの特徴を持った物もいるとのことです!兵士達は既に防衛体制に入りました」
サーバの報告を受けると同時に大音量の雄叫びが上がり、先程よりも小さい音だが、複数の爆発音が聞こえだす。戦いが始まったのだ。
「先程の赤い霧による物かどうかわかりませんが、ここを落されてしまえばラスターの軍勢と戦い続けるのは難しくなるでしょう。皆様、どうかこの町を守るために手を貸していただけないでしょうか……」
「皆、行くぞ。モンスターの軍勢なんぞ、私達の敵では無いじゃろ?」
シャリアはそれだけ言うと、部屋から出て行く。それに続いてカイ達も扉に向かい始める。その後ろ姿を見て姫は見つめ一言「感謝します」それだけ言って送り出した。
町を守るための壁に着き、そこからモンスター達の軍勢のことを見降ろす。あまりの多さに地面が見えなくなっている様子が眼下に広がる。そのモンスター達を魔人達が食い止めたり倒しているが、数があまりにも多いため減っている様には見えなかった。
「ラウラはここで魔法撃つで良いじゃろ?。それ以外は下に下りて倒せばいいの」
「あそこらへんが崩れそうなので、あそこに下りましょう」
様子を確認できた所で、下に下りて参戦しようとしたカイ達をラウラが止める。そして、先程行くと言った最前線に杖の先をむけ、魔力を溜め始める。
大量に溜められた魔法はかなりの威力を誇っており、ラウラの放った魔法によって大群の一角が削れる。次にラウラは杖をカイ達に向けると、カイ達の体が浮き始める。
「着地は自分達でやって」
それだけ言うと、ラウラはいとも簡単に物を投げるかのようにして浮かしたカイ達を下の戦地まで送り届ける。
着地する頃には風は無くなり、落下するだけになる。その様子を魔人達だけでなく、モンスター達も見ており、ラウラがいくら倒したと言ってもモンスター達が駆け寄ってくる。
「俺がやります!」
カイ達が着地すると砂埃が起こり、そのタイミングでモンスター達も到着したため跳びかかってくる。
砂煙が晴れると、モンスター達は全員赤い氷の貫かれて絶命していた。
そして、カイ達は全員武器を持っており、いつでも戦い始めることが可能だった。
カイは貫いていた氷を消すと、モンスター達が音を立てて崩れ始める。
それぞれが散開して戦い始める。
カイは左手に青い炎を纏い、右手に剣を持って走り回る。
相手のキメラはどこか動きがぎこちなく、全力で走っている分には攻撃が当たることは無いため、カイはすれ違い様に斬ったり、炎をぶつけ凍らせていく。剣で斬られた物も火にぶつかった物も、普通の生物ならば痛みで暴れ回るはずが、まるで痛みを感じていないのか微動だにせず、カイのことを鈍い動きで追いかけ、腕や足、モンスターによっては触手などを地面に叩きつける。威力は申し分なく、地面は抉れるが、動きが遅いため当たるどころか、掠りすらもしない。
斬っても倒すことは出来ないと分かったため、カイは凍らせた奴を切りつける。
モンスター達はその崩れ落ちた仲間すらも、無視して踏みつぶしてスワイドの町に向けて進行を続ける。
数時間戦ったが、モンスター達の信仰は止まらず、最初は追い返す程の勢いがあった魔人の軍勢も、今では町にこれ以上近づけさせないために足止めするので手いっぱいになっていた。
カイ達もずっと戦い続けることはさすがに出来ないため、今は後ろに退き姫の下にいた。
「……このモンスターの軍勢、ただの軍勢じゃないね」
そう喋ったフラージュは袋の中に仕舞っていた、モンスターの死骸の一部を取り出す。それは、半分半分で肌に色が違い、境目は縫い合わせたかの様に縫い目が入っていた。
「いくらキメラ種と言っても、痛みを感じないなんてことはさすがに無いでしょ?それにこの縫い目。人工的に作られたモンスター達だよ」
人工的にモンスターを作る。このワードを聞いたことがあったカイ達は嫌な予感を強く感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます