4章 防衛戦線
第279話
あの赤い喋る霧が現れてからスワイドの町の様子は数日で変わった。
街中は大量の負傷者で溢れかえり、民家などの建物の大半は燃えたり倒壊し、瓦礫と化していた。被害が及んでいない場所は簡易テントが大量に建てられ、そのほとんどが負傷者を寝かしたり治療するために使われていた。
このような状況をカイ達は、疲労困憊と言った様子で見ていた。
全ては、あの赤い霧が現れてからだ。
霧が霧散した後すぐにバルターとサーバが部屋から飛び出て行った。バルターは傷が開くと言うことなど考えもせずに、全力で基地内外問わず探し回ったが、無駄に終わった。カイ達も何もしなかったわけでは無く、魔力感知を使ったのだが足取りを掴むことは出来なかった。
「あの赤い霧、王言ってましたねー。帝国か王国の王様のことですかねー」
「帝国だったら皇帝と言うはずです。そして。現在その帝国の者がここにいますよ」
場の雰囲気に我慢できなくなったのか、メイドの女性が喋るの同時にサーバが帰って来て足取りを掴めなかったことを報告する。
もちろんあのような存在をカイ達は知らないため、帝国の関係では無いことも伝える。
「王国と言う路線も無いでしょう」
先程の話しに乗って、リオが話しだす王国の現状にカイ達は驚くしかなかった。
現在の王国だが、悲惨のひと言に尽きた。
反国家組織は現在も王家の抱える兵士達と戦い続けているのだが、その王家の抱える兵士達全員が屍の兵士になっていた。
帝国兵の援軍を受け戦況が有利になった組織側は、勢いに乗り城に使い所まで攻め入ることが出来るまでになった。ここまでくると国の兵士だけでは無く、王家が抱える近衛兵などが出てくるようになったのだが、勢いに乗っている彼らの敵では無かった。
そのまま城まで進もうとしたのだが、それは出来なかった。倒したはずの敵が立ち上がり後ろから襲って来たのだ。
彼らはその場を何とか乗り切って、再度前に進もうとしたが、何度も何度も近衛騎士達は立ち上がり、城に近づけさせないようにして来る。
腕を斬っても、足を斬っても、胴を真っ二つにしても、ましては頭と胴体を離したとしても 立ち上がり攻撃して来る屍の軍勢に、彼らの指揮は下がる一方だった。そのため、現状は何とか戦線を維持していると言う状況になっていた。
「これが今王国で起きていることの現状ですね。帝国もこれを受けて援軍を追加で送る方針になっているそうですね。そして、もはやモンスターと言って良い彼らのことを聖国も人類の敵として、排除しようと動き始めています」
「公国は何もしないじゃの。ちぃと冷たすぎるんじゃないかの?」
「このような事に対して最終決定権はオムニが持っています。そのオムニは現在結界の維持をしていますからね。他に手が回らないのです。その上、万が一に結界が壊された際に魔人達を止めるための戦力が要りますから」
結界のことを話しに出されてしまえば、何も言えないシャリアは続きを黙って聞く。
「その話のどこに王国では無いと言い切れる要素がある。まさか、そのような状況だから、と言いたいわけではないだろうな?」
「考えてみてください。自国が攻められているのに魔国に侵入者を送る意味があるのか。そしてここは魔国。人間が普通は入ることが出来ない領域ですよ」
「そう言えばそうですねー。こんな魔力が多すぎる空気吸ったら人は耐えられないですよねー。つまり、あの霧が言った王ってラスターのことしかないですね」
全員がそんな分かり切ったことに今気づいたのかとメイドに視線を送っていると、姫が咳払いをして話し出す。
「近い内にラスターの軍勢が攻めてくるはずです。今から警備を強化するように通達しなさい」
姫の指示を受けサーバが部屋を出た瞬間、外から爆発音が聞こえ外を除くと、そこは火を上げて崩れる複数の建物があった。
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