第272話
カイ達は姫様のすぐそばに突きながらスワイドの町に向かっていた。
先程倒したグレイトトレントは一部の魔人たちに任せ、他の魔人たちは姫様の前と後ろに着き、護衛をしながら向かっていた。
「貴方達が急に来て、本当に驚きました」
「こちらとしては、姫様が無事で安心しました」
リオと姫が話している中で、カイは姫のすぐ後ろに待機しているサーバのことを見ており、そのサーバもカイのことを見ていた。
カイが何故サーバを見ているのか、それは彼の容姿の変わりようからだった。以前生えていた角の片方が折られており、顔には傷と眼帯をしている上に、体中には包帯が巻かれていた。
「滑稽だと笑いたいか」
以前あった時のような敵意を放つ視線は感じず、逆に優しく接して来るサーバにカイは戸惑いを覚える。
「以前のことは謝らんぞ。お前は姫様に害をなそうとしたからな」
「俺もあれは悪いことじゃなかったと思ってるのでいいですよ」
少しの間サーバは睨みつけると、一度目を閉じて力なく息を吐く。そしてすぐに前の方を向いて話しだす。
「一瞬だった。気づいたら俺は片目を抉られ、片腕も動かなくなった」
何も感情を感じさせない声色で、サーバはただただ前だけを見ている。
「以前、お前の攻撃を受けた俺には少なからず分かる。子供の頃、モンスターは化け物だと思っていた。だが、俺こそが本物の化け物だ。あれに比べれば全てのモンスターが赤子に等しいと言って良い」
「結論から言おう。ラスターは誰にも倒せない。オムニ殿ですらだ」
ずっと感情が無く、淡々と言っていたサーバの声は今までにない程に強く、恐怖を含んだ声になっていた。
「……だとしても、何もしなかったら変わらないですよね。貴方達が俺に戻れって言うのは、ラスターにこれ以上力を付けさせないため。でも現状誰にも手を付けられないなら、これ以上強くなっても変わらない。なら問題無いと思いますけど?」
「それに1人じゃないですよ。私のお母さんに師匠。帝国最強の人だっています。それにリオさんも。どうにかしますよ」
カイとミカの言葉を聞いてもサーバの考えは変わらなかったのか「そうか」とだけ言って、それ以上は話さなかった。
スワイドの町が見えて来た頃、周りの魔人たちが止まって姫の方を向いた。
「あなた達はいつも通りでお願いします」
全員が返答すると、町に向けて歩き始めた。
姫とサーバは魔人たちと別れ、町の検問所では無く壁に向かって歩き始めた。
「私達は指名手配をされているので、正規の方法では入国できないです。それに貴方たち人間が町に突然現れたら混乱してしまうでしょう」
壁に着き、サーバが地面に隠されたボタンを押すと、壁がゆっくりと静かに通路を作り始める。通路の大きさは、人が1人通れるほどで、最低限の大きさだった。
「ここをこのまま通れば、本部に着きます。途中である部屋を横切りますが気にしないでください」
会った時と同じ様に悲しそうな顔になった姫は先に進んだサーバの後を追う用に通路に入って行った。
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