第270話
トレント達は仲間が氷像にされたとしてもお構いなしにカイ達に向けて根や枝を飛ばしてくる。その全てにカイが青い炎を飛ばすと、一瞬の内に根などは氷つく。枝についていた葉も一緒に氷凍り付いたためカイ達が走り去った道には青色の葉による道が作られていく。
カイだけに対処させまいとシャリアとラウラも応戦しようとしたが、それよりも先にカイが凍り付かせるため、全員は走るしかなかった。
順調に進んでいたが、突然今までとは比にならない程に大量の枝が伸びてきたため、カイは手に纏っている炎を赤い氷に替えて、目の前に氷の壁を生成する。
作ってすぐには氷を砕く音が響くが、それと同時にモンスターの叫び声は森中に響き渡る。
警戒しながら壁を解除すると、そこにはひと際大きな幹や枝、葉を持つトレントが全身燃え上がり悶えている所だった。通常サイズのトレントならば地面に倒れ、転げ回っていたかも知れなかったが、目の前のトレントはひと際大きいため、根が邪魔して倒れることが出来ない。
燃えているのをただただ見つめていれば、この森全てを燃やしつくす程の火事になる可能性があったため、カイはすぐさま青い炎をぶつける。当たった瞬間に青い炎は普通の炎を飲み込む。先程まで燃えて熱かった空気はすぐ様冷やされ、寒さで震える程に変わり、もしも戦闘をしていなかったカイ達は迷わず肌を摩っていただろう。
「カイ、私達も」
カイの隣に跳んで来たミカはカイのことを横目で見ながらそう言うと、確かに頷いた。
葉や枝先が氷はじめ、普通のトレントならばこのまま氷像になるところだったが、このトレントは普通ではない。
トレントと言う生き物は他のモンスターを食すことがあるが、どちらかと言えば傷つけられて絶命することが多い。また、食すモンスターが他にいない時には、地面からの栄養を同族で取り合いをする。そのため、枯れて長い間生きることは難しい。
それに加え、魔国であるこの地はではモンスターが森に近づくことはほとんど無く、時たま魔人が来ることがあるが、返り討ちに会うのが基本だ。
その中で、奇跡が起きていた。他のトレント達が取るはずだった栄養を独り占めし、それでも満足しない時は同族を食べてでも生きて来た個体がいた。トレントの進化形態『グレイトトレント』。それが、カイ達の目の前にいる存在の正体だった。
通常のトレントよりも生存本能が強いため環境変化に強く、同族よりも多くの栄養を吸収していることで大きく頑丈になっていた。
そのグレイトトレントは燃やしている炎がなくなったことに気づくと、大きく体を何度も何度もひねり炎を吹き飛ばし始める。その風はとても強く、近くにあった木々が吹き飛んで行き、強く踏ん張っていないと簡単に吹き飛ばされそうになるほどだった。
カイ達も最初は踏ん張っていたが、風が突然来なくなった。それはラウラが風の障壁を作ったおかげだった。
グレイトトレントが体をひねる中で、カイは両手に大量の魔力を集め出す。
「時間稼ぎお願い!」
その一言が皮切りとなり、風の障壁からシャリアとフラージュが飛び出していく。2人とも限界まで体勢を低くし、風の影響を最低限にしながら進んでいく。
未だに青い炎を飛ばそうとしているグレイトトレントは接近する2人の存在に気づかず、フラージュは持っている槍で根を斬り落とし行き、シャリアは力だけで根をへし折っていく。
根を切られた痛みからさらに叫び越えを上げるグレイトトレントはより暴れ始める。
根や枝がラウラとカイの下に届きそうになったが、届くことは無く、2人の目の前で細切れになる。斬り落としたのは2人の目の前で守るようにして立っているミカとリオだ。2人とも目に見えぬ程の速さで武器を振り、根と枝を斬り落としていく。
しばらくすると、グレイトトレントについていた青い炎は全て吹き飛び、グレイトトレントも落ち着きを取り戻し始める。
ラウラの風の障壁も必要がなくなり解除する。
「カイ」
ラウラは名前だけ呼ぶと、カイはグレイトトレントに向かって高く、大きく跳躍する。ラウラが最高点でカイに向かって風の塊を飛ばすと、カイはより高く飛んで行く。
目の前に自分と同じ位まで飛んで来た存在がいたことで、トレントは持っている枝全てを使いカイのことを串刺しにしようとする。だが、効果は無く、カイが逆に全ての枝を氷つかせる。
その氷つかせた枝を足場にカイはより高くまで跳ぶ。そして、グレイトトレントよりも高い跳躍すると、空中で大きな鋭い氷柱を作り、グレイトトレントの頭から突き刺す。
鋭さも高度も最高峰になっていたためグレイトトレントは抵抗することなく、氷柱に貫かれた。
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