第267話


 光が収まり目を開けると、そこは部屋だったと思われる所だった。壁に刃物で深くまで切りつけられた後が多くあった。極めつけには壁と天井の大部分が破壊されており、そのため床には粉々になった机や椅子などの日用品と共に瓦礫が落ちていた。


「リオさんここは……?」

「ここは、姫様の根城のはずです……。ここまで破壊されてると疑いたくなりますね……」


 魔力感知を使い、自分達の他に反応が無いことを確認してから動きだす。


 壁のほとんどが破壊されていたため、外の様子を除くことは容易だった。

 今カイ達がいる場所は高い所にあり、目に映る景色からは壁面から崩れ落ちた瓦礫や、周りに生えていたであろう木々の燃えカスらしき物があった。


「ここは姫様達が身を隠すために利用していた砦です。地下に本拠地があると申しておりましたので、行ってみましょう」


 元々この砦は国が管理している物で、敵の意表をつくため内通者を使い占拠した物となっていた。




 地下に行くための扉が歪んで開けることが出来なかったが、扉を破壊することで中に入ると、中から通ってくる臭いだけで何があるか理解した。嗅ぎ取ったのは腐敗臭。酷く強烈な臭いに全員が鼻を塞ぐ。


 フラージュが道を照らしながら進むが、奥に勧めが進むほど臭いがきつくなり、壁や床には血の跡が現れてくる。


 最初の部屋を開ければ大量に死んだ魔人の死体があり、剣のような鋭利の物で切り付けられた傷や、魔法を撃ちこまれた跡などがついていた。


「遺体は私が回収しておきます。魔力感知では生存者はいないようですから、手分けして捜索しましょう。そこまで広い建物では無いと聞いているのですぐ終わると思います」


 リオは遺体を袋の中に仕舞いながら言うと、他の遺体も仕舞っていく。


 リオの提案通り捜索をすると、カイは他よりも少しだけ頑丈に作られた扉を見つけ中に入る。

 そこは先程いたラスターの仕事部屋と似た作りをしており床には紙の燃えカスがあった。ギリギリ燃えていない部分を読んでみるが、どれもが途中で切れているため内容を理解することは出来なかった。

 紙切れを拾っていると、血が焼け焦げや跡があったため、他にあるか探すと点々と血が落ちた跡をあった。それを追っていくと壁で途切れていたため違和感を感じ、カイは壁に手を付けながら歩く。すると、一ヵ所だけ押したらへこみそうな場所を見つけ、そこを氷で印をつけてからリオ達の所に戻る。




「敵の侵入経路だけど、私の調べた部屋に天井が開けられた場所があったよ。奇襲だったみたい。無抵抗にやられたような遺体が大量にあった」


 フラージュの調べた場所が侵入経路だと言う話しからだんだんと話しが広がる中で、カイも自分が調べた部屋のことを報告していく。


「おそらくそこは姫様の部屋ですね。ですが、部屋にあった血痕というのが気になりますね」

「点々と落ちてる物だったので、そこまで重症なわけではないと思います」

「そうですね……。ともかくここの調査は大体は終わりましたから、その部屋の仕掛けを作動させてみましょう」


 先程の部屋に移り、カイがつけた印の場所を押す。すると、オムニの屋敷同様に動きだし、壁が開き通路が出来る。


「血の跡はまだまだ続いてそうですね。行きましょう」


 魔国領独特の瘴気により光で奥を照らしても中々見ることが出来なかったが、数分歩いていると、明かりが現れ始め出てみると、そこには荒野が広がっていた。

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