第265話
クリミナルを元の姿に戻してから数日、カイ達はその数日の間にメイドの誰かに案内される形で公国を見て回っていた。
今日も観光をする予定だった所、リオに呼ばれてオムニの部屋に来ていた。その中にはクリミナルの姿もあり、目を閉じて壁に寄りかかっていた。
「呼んでごめんねー。それで急なんだけど、魔国に行くかどうか決めた?」
以前聞かれたこと、いつかは聞き返されると覚悟していた。そして、答えを出す決めてが最後に欲しかったカイはオムニのことを真っすぐ見る。
「……俺が行かなくてもラスターは倒せるんですか?」
「無理だね。でも倒すことが出来なくても色々やれることがあるよ。クリミナル」
「……俺の隠れ家に棺がある。それを持ってけ」
「それじゃ分からないって。クリミナルが持ってる棺は、もちろん
「……ふーん」
楽しそうに自信満々に言っているオムニだが、クリミナルとオムニの様子がおかしい。クリミナルはまた壁に寄りかかったが、視線は真っすぐオムニのことを見ている。そのクリミナルは、顔は普段通りにしているが、よく見れば汗をかいており、何か隠そうとしているように見える。
「……
「へ!?なにも無いって~。封印が出来る優れ物。これでカイが無理する必要がなくなったってことだよ」
焦りながら言い続けるオムニに対して、リオとクリミナルがため息を大きく吐く。
「諦めろ」
「そうですね。参加させたくないのは分かりますが言うべきですよ」
2人の言葉を聞いて、オムニもため息を吐いて諦めた顔で話し出す。
「棺なんだけど、色々欠点があるんだよ。まず事前知識として、この前教えた魔人領にある瘴気。あれは魔国の中心にある
「棺は魔力を吸うと、その瘴気を出すんだよ。瘴気が駄々洩れになってる物を持ってくるわけにはいかないし、魔国に保管するわけにいかないからね」
「保管出来ない?」
「使ったことが無いんだよ。だから中から開けることが出来るかもしれないし、もし開けられなかったとしても、誰かが蓋を開ければ出てきちゃう。もしもの時に止められるのは僕だけだからね」
「じゃあ、オムニさんが魔国に行けば……」
「ごめんね。僕は公国を長い間離れるわけにはいかないんだ。ちょっとワケありでね」
そこまで聞き、カイがどうするか言おうとした所で、クリミナルを元に戻した時と同様に懐から四角い物が出てくる。
「オム……聞こえ……」
「姫様、大丈夫ですか」
以前と同様に映像が乱れていたが、音声が前よりも聞こえやすくなっていた。
「ごめ……。今はす……戒して。ラ……ターが……」
そう言うと、ガラスが砕けたような音が響く。あまりにも大きい音だったため全員が耳を塞ぐ。そんな中オムニだけはすぐに壁に掛けてある杖を取ると、魔力を流し始める。
「リオ、任せた」
「了解しました……」
そう言うと、オムニは流しながら走って部屋から出て行く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます