第260話
男は持った杖にゆっくりと魔力を流していく。その隙を逃す事なく、カイとシャリアは男に向かって駆け出す。
そんなカイ達を近くにいた女性達が相手をし始める。全員が先程までいた構成員並みに動くことが出来た。後ろにいるミカ達が彼女達を止めようとしたが、彼女達は自分の身を盾にして守り始めた。
空中でやられた彼女達を吹き飛ばしながら、進む2人。そこまで強い敵では無かったため、手こずることは無かったが、一瞬だけ止まってしまった。その一瞬によって杖には十分な魔力が流れてしまい、魔法を発動させてしまった。
「これで俺様の勝ちだ!」
男が今までにないくらい大声で叫ぶと、杖の先から赤黒い水のような物が現れ全身にまとわりつき始める。カイとシャリアが警戒して後ろに大きく跳ぶと、その水は今度は男を中心に大きな球体と変わっていく。
「あぁ、ボスが真の姿をお見せになられるわ」
真の姿と言う言葉に違和感を感じながらカイとオムニを除いたミカ達は魔法で女性達を倒して行く。全員が一様に男のことを見ており、背中を見せていたため先程よりも簡単に沈めることが出来た。
「真の姿ぁ?何ふざけたこと抜かしてんだよ」
「っ!?あの杖、あの杖が鍵だよ!」
先程までの男の声とは変わったことにカイ達は違和感を覚え、警戒を強める。先程の杖が変身する物だと考え、先程オムニが言った言葉にとっかかりを覚える。
「この体に勝てる奴なんかいねぇんだよ!」
赤黒い水がはじけると、中から見たことのない青年が出てくる。そしてはじけた時に倒れていた少女達が水を被ったのだが、その水の中に飲まれていく。
すぐにラウラが突風を吹かせ水を部屋の隅まで飛ばす。
「風かぁ。厄介だなー」
口では厄介だと言っているが、表情はその逆でとても楽しそうにしており、不気味だった。
「その杖手放し欲しいな。危険だよ」
「この杖のおかげで俺はこの地位にいるんだ。渡すわけねぇだろ」
「……あの姿は間違いなくクリミナル。見間違うはずがない。その姿でいるってことは彼が全ての根源」
あの青年こそがクリミナルだと言うことを知ったカイ達は驚きながらも警戒は決して解かない。
「そうだよ!こいつの体はすげぇよ!マジですげぇ!だからこそ全て奪いたかったのに、上手いこと逃げやがって!!」
怒り一色の顔になった途端に、体の周りに先程の赤黒い水が水滴になって浮き始める。
「あいつを見つけて今度こそ全て奪う!!」
水を怒りのままに不作為に飛ばしてきたため、シャリアは小手で、カイは氷を手に纏い叩き落としながら前に出る。
カイは普通に叩き落とすことが出来たのだが、シャリアの小手は叩き落とした瞬間に水によって小手が溶かされ始める。カイが氷の壁をシャリアの前に張ると、下がり小手を急いで袋の中に仕舞った。
「
ラウラは以前やったように風を手に纏うとローブを脱いで前に飛びだす。
ラウラが抜けた穴をオムニが何とか埋めようと結界を張り始める。
先に敵に近づくことが出来ていたカイは杖を奪おうと手を伸ばすが、水によって防がれる。
男のことを見れば白目をむき、ずっと「奪う」とつぶやき続けていた。
「暴走じゃ!はよ倒さんと魔力が尽きてそやつ死ぬぞ!」
シャリアの言葉を聞き、カイは急いで杖を奪おうとするが、飛んでくる水滴は増え、少しずつ離れ始めてしまう。
「手数が……」
「カイ、私が守る。攻めて」
水滴を叩き落しながら隣に来たラウラに頷き返しながら、カイは守るのを止めて突進し始める。ラウラはカイの前に出て風の壁を作りながらカイと同じ様に突進し始める。
近づくことが出来たためラウラが横に跳ぶ。カイは杖に向かって手を伸ばす。先程までと同じように水がそれを塞ごうとするが、ラウラがその水を全て吹き飛ばす。
「取った!」
カイが杖を掴みために手を握る。
全員が握れたと思った。だが、カイの手には杖は無かった。杖は握った瞬間赤黒い水に変わったのだ。
「正気を失ったと思ったか?んなわけあるか」
後ろから聞こえたため振り返れば、そこには無傷の男が立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます