第259話
オムニを先頭に部屋に入ると、そこは以前潜ったオークファイターがいたダンジョンのボス部屋と同じ位の大きさの部屋に出た。
だがダンジョンと違って部屋は黄金色で、所々に作られた台座には高そうな骨董品が置かれていた。
趣味の悪い部屋の奥には、無駄に高くなった背もたれで、宝石などがふんだんに使われた椅子があった。
そしてその椅子にはとてもふくよかで、肘置きに肉が乗っていた。その男は女性を何人も侍らせていた。
「熱い~。早く早く~」
「はいはい」
汗をかいているのか3人くらいの女性が扇を仰いでおり、他の女性は食べ物などを用意して口に運んでいた。
「ん~?お前は~……お前は?!」
扉が開いた音を聞いていなかったのか、入って来たカイ達の足音を聞いて気づいたのか驚いた顔を浮かべる。
相手はオムニのことを知っていたが、オムニ自身は相手の男のことを微塵も知らなかった。
「……君がここのボスってことで良いのかなー?」
「く、国のトップがこんな所に来るなんてな!?グヒッ。お、おい!どうしてこんなのを通してるんだよ!」
声を張り上げるが、誰も入ってこない。
「幹部はどうした!!あいつらならこんな奴に負けないだろ!」
周りにいる女性もオムニのことを知っており、ここまで来たことに焦り始める。
男が声を張り上げるが誰も入ってこない。女性達はその状況により焦りだす。
「来ないよ。倒したからね」
冷たい声、部屋全てが凍るのではないかと錯覚する程に冷たい声で、だがそんな声を出しながらも心底楽しそうに満面の笑みで喋り出すオムニ。先程までに再三受けていたカイ達は身震いしなかったが、敵たちは大きく震えだした。
「ク、クソッ!持ってこい!」
ふくよかな男がそう言うと、1人の女性がボタンを懐から出し、男は迷わずにそのボタンを叩くように押す。
すると、部屋にあった数々の台座が地面に仕舞われ、壁も音を立てて動き出す。
カイ達は警戒して背を合わせる形でそれぞれ構えだす。その時見た男の顔は不敵な笑みを浮かべていた。
壁が完璧に動ききると檻が多数現れた。その檻の向こうには魔力の反応が感知出来る。
「結構多いですね」
「……今から出てくる敵は僕が一掃するよ。ただ魔力の消費が激しいからあいつとは戦えない。あいつを倒すの任せていいかな?」
全員がオムニのことを見ると、ただただ頷く。満面の笑みを浮かべたオムニは剣を地面から取り出す。剣は最初の時と同じで鞘に仕舞われていたが、不気味な黒いオーラは出ていなかった。
オムニは雑に抜くと鞘を投げ捨てて地面に突き刺す。
「一掃!持ってけ!!」
オムニは剣を持っている手に魔力を素早く移動させて行くが、その魔力は手に集まること無く、全て剣に吸われていく。
剣は魔力を吸うと中に浮き始める。オムニは疲労から地面に膝をつく。
「好きにやって。僕は少し休むよ」
「オウヨ!マカセロォオオ!!」
魂を脱ぎるかの様に、禍々しく苦しくなる声が部屋に響き渡る。
「ア、あーー。よしっ、久々だろ話しずらいなー」
声はだんだんとオムニと同じ声になって行く。
カイ達の予想した通り、声はオムニの放った剣からしていた。敵はそんな中でも檻から出てくる。
「主様からの頼みだ。倒してやるよ。っにしても悪趣味な部屋だな~。おい、お前らそこらへんにいろよ?」
剣先を揺らし、現在いる場所から動くなと言う剣にカイ達は大人しく従う。再度空中で静止した剣はじわじわと発光し始める。
「なにをしてるか分からないけど、これだけいたら勝てないだろ?」
男は言い切ると、檻が開き中から人がたくさん出てくる。その人達は全員が目が血走っており、口端からは涎が出ていたりする。何人かは切り傷などの傷があり血はしたたり落ちていた。理性がある者は1人もいないように見えた。
「たぁまったー!!!吹っ飛ばすぜーー!!」
剣が部屋に響き割ったる声で楽しそうに言う。剣は敵が近づいてくる中でずっと力を溜めており、遂には眩しくなりすぎて見えなくなっていた。
剣は勢いよく地面に突き刺さると、地面に亀裂が入ってそのから光があふれ出す。
すると剣と地面から色々な魔法が光線の様に出てくる。
赤、青、黄、緑、茶など。色々な色の光線が出てきて敵に不規則に飛んでいく。
不規則に飛んでいく光線は敵だけでなく、部屋のあらゆる場所にぶつかり壊していく。
このような状況ならばカイ達にも当たる物だと思われるが、カイ達に当たりそうになる物だけが、目の前で突然曲がったりしてぶつからないようになっていた。
「っと、こんなもんだよな」
光線が出なくなると、呟いてからまた中に浮いてオムニの手の中に納まる。
「お疲れ様」
オムニはねぎらいの言葉をかけながら突き刺すと、魔法陣が現れて剣が飲まれて行った。
剣から視線を外すと、敵は塵も残さずいなくなっており、部屋の表面も削れて黄金色だった部屋は見るも無残な物になっていた。
そんな中でも、親玉とその周りにいた女性達だけは残されており、全員腰が抜けていた。
「さ、さっきの剣は無くなったな。ってことはもうさっきのは来ない。な、なら俺様の勝ちだ。あれ取れ!」
親玉がそう言うと、女性は震えながら椅子の後ろに仕舞っていたであろう杖を取り出す。
「こっからは俺様の番だ!ここでお前達を殺す!」
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