第258話
「お腹いっぱいだよね。眠ってな」
血がついているわけではないが、血を振り落とすかのように剣を振ると、オムニが地面に深々と剣を突き刺す。すると剣を中心にして魔法陣が広がり、ドンドンと剣が飲まれて行き、遂には剣が無くなった。
「お待たせしました。どうだったかな?」
「……圧倒的。そうとしか言えない」
満足げに頷きながら戻ってくる。だが、そのオムニの後ろから剣を掲げて走ってくる構成員がいた。
「止めた方が良いのにな~」
迎撃に向かおうとしていたカイ達はその言葉で足を止める。
構成員には声が聞こえておらず、ついに剣が届く所まで来たため笑みを浮かべる。
剣を振り下ろした瞬間、その剣は地面から生えて来た剣によって弾かれた。その剣はオムニがさっき仕舞ったはずの剣で、先程と違うのは持ち手の方ではなく、刀身の方が出て来たと言う所だった。
剣は弾き返すのと同時に地面の中に戻る。そして次の瞬間、構成員のことを下突きあげる。無防備にも串刺しになった構成員はすぐに絶命する。
剣が構成員から抜けると1人でに宙に浮きだし、刀身に着いた血を振り落とすとまた地面に飲まれていく。
「剣には意思があるって言ったでしょ。その恩恵でオートガードみたいな事してくれてね。あれ程度の敵だったら簡単に返り討ちにしちゃうんだよね」
あっけらかんとした様子で言い切ると、奥の部屋につながる閉ざされた扉のことを見る。
「さ、さっさと敵の親玉を倒して、かえって休もうか!!」
敵の本拠地にという現状に合わない、元気な声で言うと、真っすぐに扉に向けて歩き出した。
仕舞っている扉は鍵がかかっていたが、オムニが少し力を入れて引きと鍵どころか扉事外れた。
「脆い扉だったねー。早く行こー」
片手を上げて「おー」と気合を入れるために言うオムニに、ついて行けないでいると、オムニは付け加えるように話し始めた。
「たぶんだけど、ここからは皆にも戦ってもらうことになると思う。その時はよろしくね」
先程までは薄暗い部屋・通路だったが、進んだ先は、しっかりとした明かりが天井に設置されていた。突然な明暗の差に目に違和感を覚えながら進んでいくと、先程と同じ見た目の扉が出てくる。見た目は一緒なのだが、大きさが段違いで一回りも二回りも大きくなっていた。
「ここがボスの部屋、ですかね?」
「そうじゃろうな。無駄に豪華にしおって」
扉には大小多くの宝石が取り付けられており、見る人によっては悪趣味だろ感じる物だった。シャリアは軽く触れてから危険が無いことを確認すると、嫌そうな顔をする。
「よし、入るよ」
オムニが力を込めて扉を押し始めるが、扉はびくともしない。先程のオムニを見れば通常の人よりも力があるはずだ。そのオムニで開けられないと言うことにカイ達はどうしたことか考えだす。
「……ちょっと離れてて」
先程剣を抜いた時と同じ様に冷たい声で言い放つと、手に魔力を集めて扉を押し始める。
「っと、空いたね。僕が先頭で入ってこうか」
無理やり物を動かす音が響く中で、人が1人入れるくらいの幅だが開けることが出来た。
その代償でオムニは体力と魔力をかなり消耗したのか、息が切れ、汗を流した状態で話しかけてくる。その時の声色はいつもの物に戻っていた。
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