第257話
現れた真っ黒になっている刀身に全員の目線が行く。禍々しいのに離す事の出来ない。心を鷲掴みにでもされたかの様だった。
そんな剣をオムニは勢いよく振ると地面に深々刺しこむ。その時に起きた音に全員が正気に戻る。
「あそこで魅せられてる3人が今回の敵だよ。遊んであげて」
オムニの言葉に呼応して黒いオーラが分かれて先程の幹部3人に向かって飛んでいく。黒いオーラの離れた剣は銀色ではなく、先程の黒色が嘘だと思い程に白かった。
「あれ何かしらねー」
「危険」
「に、逃げないとですね?!」
3人がそれぞれ反応する中で、急いで自分に被っていた瓦礫を退かすと急いで行動をし始める。
青髪の女性は腰に下げていた剣を抜いて黒いオーラを切りつけるが、全く当たらず、女性は驚きながら当たらないように急いで後ろに向かって跳躍を繰り返す。
白髪の女性は後ろを見ながら部屋を走り回る。そして、時々仲間である構成員のことをチラチラと見て様子を伺う。
眼鏡をかけた男性はみっともなくではあるが、紙一重で避けて魔法で生み出した雷を撃つ。だが、その魔法も当たらず魔法は壁に当たる。
黒いオーラがオムニに近づけさせないように3人のことを追いかけまわしていると、オムニは剣を抜いてカイ達に近づく。剣抜くのが合図だったかのように周りの兵士達と構成員達も戦闘を再開させる。
「オムニさん……あれは?」
「あれはー、まぁいっか。この剣はね、もちろん
あまりにも物騒な物を持っていることに全員が唾を飲み込む。そして、そんなの気にしないと言いたげにオムニは淡々と話す。
「この剣は
「似た物?その剣の能力はあの黒いオーラのことですよね?」
「うーん、半分正解で半分不正解。正確に言うなら、この
オムニが軽く叩くと、剣は反応するかの様に輝いて反応した。
「他にも色々出来るんだけど、今日はあれで追い詰めたかったみたいだねー」
「その
「そうそう。普通に炎とか水とかを纏ったり剣先から出す事が出来るんだよ。まぁ今回みたいに特殊な物を出したりすることも出来るけどね。強敵と戦うときは相談して決めるんだけど、今日は別に強敵とかじゃないからね。好きにやらせてみた」
カイ達に話しつつも3人から目を離さないオムニは、武器を抜いた時の冷たい声ではなくいつもの明るい声だった。
オムニが剣のことについて話している中で、黒いオーラから逃げ回る3人は声を出し合いながらオーラの正体を明かそうとしていた。
「物理もダメ。魔法もダメ。どうすべきかしらー」
「ど、どうしましょう」
青髪の女性と男性が焦る中、白髪の女性だけは冷静なまま部屋を走り回っていた。
今までは規則的にグルグル回るようにして走っていた女性は、突如方向を変えて兵士と構成員が戦っている所に向かい始める。
槍と剣が飛び交う中、女性は器用に避けて、兵士のことを盾にしようとする。
そのまま黒色のオーラが吸い込まれるように兵士に当たるが、オーラは兵士をする抜け、女性のことを追いかけ続ける。
今まで無表情だった女性はさすがに驚いたのか、足を止める。
「危ない!」
すり抜けた兵士と交戦していた構成員が女性を守るようにして前に出る。
「いいよ。見せつけちゃいな」
オムニがそう言うと、黒色のオーラが構成員に当たり包み込む。
「あぁああああああ!!」
包まれてから数秒、構成員は悲鳴を上げて床に膝をつける。
目の前でおかしな状況が起きたと言うのに兵士は気にせず他の構成員を倒しに行動を始める。先程、自分の体をオーラがすり抜けたと言うのに驚いていなかったと言うことを考えれば、オーラのことを知っているのだと分かった。
オーラが当たった構成員は力尽きたのか地面に伏した。その目からは正気が消えていた。
「あれが今のこの剣の能力。当たっただけで命を狩り取る。ま、弱点はあるんだけどねー」
先程構成員に黒いオーラが当たった瞬間、他の2人に伸びていたオーラも消えていた。
「これは一発限りだし、再発動までの時間はかなりかかる。それに防ぐ方法もしっかりあるんだよね。教えないけどねー」
今まで見ているだけだったオムニは、剣を構え前にゆっくりと歩き出す。
「さて、少し運動して温まったでしょ?今度は僕と遊んでね。命がけで」
再度オムニの声が冷たい物に戻る。それを注視して聞いていたカイ達と敵幹部3人は背筋が凍り出す。
「構えな。無抵抗だとやり辛いじゃん」
女性2人は合流して構えだす。
だが、男性の方は怯えて動けないでいた。その様子を一瞬だけ見た2人は、見捨てるかの様に舌打ちしてオムニのことを見る。
錯乱した男性は怯えながらも戦う意思を表すかのように雄叫びを上げてオムニに向かって突っ込み始める。
「ヤケになっちゃダメだよー。まぁいいや。しっかり食べて」
オムニは隙だらけの男性のことを一刀両断する。
「フレイム」
やる気が無さそうに呟くと遺体がすぐに燃え始める。
物が燃えるとき煙が出る。その煙が部屋に充満する可能性があると思い、カイは火を消そうかと考えたが必要が無かった。煙は天井まで上がることは無く、遺体を中心にして張られた結界によって閉じ込められていた。
「命がけで、2人は本気で来てよね」
白い刀身に着いた赤い血を振って落とすと、不敵な笑みを浮かべて剣先を2人に向ける。
少しだけ怯えた様子を見せたが、2人で同時に前に出てくる。
青髪の方が前から剣を両手で持ち全力で振り下ろすが、オムニは片手でいとも簡単に受け止める。刀身をお互いに押し付け合う。片手で受け止めているオムニが不利な様に見えるが、実際に押しているのはオムニの方で、青髪の方はとても苦しそうにしていた。
2人が剣をぶつけあっている中で、白髪の女性はオムニの後ろに回り込み足払いをする。かなりの威力で放たれた一撃だったが、オムニの足が動くことは無く、逆に白髪の女性が痛みで苦しんでいた。
片足をかばうようにしながらオムニに殴りかかるが、空いていた片腕がそれを受け止める。
オムニはちょっとだけ力を込めて剣をはじき返すと、白髪を青髪の方に投げつける。胴体ががら空きだった青髪は踏ん張ることも出来ず、2人して壁まで飛んでいく。
「足やった。援護する」
「分かったわー」
復帰した2人は、青髪が前、白髪が後ろの陣形になっていた。後ろの白髪は片膝を地面につけながらも、戦意は失っていない目をしていた。
「……力見せるって言ったけど、もういいよね」
オムニは心底つまらなそうに言うと、女性2人は酷く怯えた表情になる。オムニが一点だけに集中的に殺気を当てたからだった。今までとは比にならない程に強い殺気を受けて、2人は怯え切っていた。
本能が勝つことが出来ない、死ぬと理解した。それでも最後まで抗うと言う意思があったのか、青髪は手に持っていた武器は落とさなかった。白髪は懐に仕舞っていた投てき用のナイフを取り出す。
2人の手は震えていたが、真っすぐオムニのことを見ていた。
「もう終わりね」
オムニは瞬時に移動すると、青髪のことを一刺しする。刀身は青髪の胸を貫通し、背中から出ているのが見えていた。
オムニは躊躇うこと無く抜くと、白髪にも同じ様に剣を突き刺し抜く。
確かに刀身は貫通していた。それはカイ達もしっかり見ていた。だが、2人からは血が一滴も出ていなかった。
実は、オムニが行動を移す前に剣が少しだけ輝いていた。
剣の能力で外傷は作らずに内側だけを気づ付けたのだ。それは最後まで立ち向かって来た2人へのオムニからのせめてもの情けだった。
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