第256話


 全員が魔法陣を降りて魔法を四方八方に撃っていると、兵士達が10人程転移して来る。一瞬固まる兵士達だが、すぐに援護に周りの敵を撃退しながらオムニに指示を仰ぐ。


「クソッ!お前ら時間を稼げ!!」


 兵士達がドンドン増えて行き攻撃の手が増えて行く一方で、敵側は結界に阻まれて攻撃出来ない状態が続くと、相手の隊長格が叫ぶ。敵側は最初の方こそはいずれ結界が壊れるかと思って魔法を撃ち続けていたが、今では奥にいるであろう幹部や隊長格を逃がすのに尽力し始める。


「総司令!」

「分かってるよー。訓練内容1の通りにいくよー」


 オムニの言葉で前の方に盾を持った者達が集まり出す。他の者達はその様子がバレないように煙幕を張り始める。

 敵も様子が見えなくなったことに警戒して対策しようと動き出すが、敵よりも先にこちらが動いた。


「突撃ー」


 オムニの合図で前に集まった盾持ち兵士達が一斉に前に突進し始める。煙幕で見なかった敵は抵抗すること無く飛ばされていく。

 ある程度の兵士が飛ばされると、先程 隊長格が逃げた通路までの道が出来る。


「半分は扉と転移の魔法陣の前で陣形を作って敵を逃がさないで。残り半分は奥に進んで壊滅させるよ」

「カイ達は僕は行く殲滅の方に参加して」


 兵士達がドンドンと奥の通路に入っていく中、敵も遅れないように通路に入って行こうとするが兵士達が全力で阻止する。


「行くよ!戦いはここからだからね!」


 オムニは魔法を撃って敵を減らしながら通路に入っていく。カイ以外はオムニや兵士と同じ様に魔法を撃ちながら進んでいく。




 通路を進んでいく中で、兵士達が敵の構成員と戦っているのをカイ達は横目で見ながら先を目指す。敵の構成員も手練れが残っていたため、味方もかなりの数が負傷している。


「まだまだ奥に進むよ」

「奥には転移の魔法陣は無いんですね」

「逃げてないってことはそうなんじゃろうな」

「でも逃げるための道が無いっておかしいんじゃ?」

「そうだねー。まぁ行けば分かるよ」


 急ぎ足で進んでいると、先程転移して来た所と同じくらいの広さの部屋に出た。

 中には数人の兵士はいたが、多くが地面に倒れていた。


「強そうなのが来たわね。遊べそうで良いわー」

「……殺す」

「いつも通り物騒ですね?!」


 部屋のいたるところで倒れいているが、奥にいる目立つ3人の周りに特に多く兵士が倒れいていた。


 最初に話した女性は地面に着くのではないかと思われるほど長い青色の髪をしており、楽しみで仕方ないと言いたげに不敵に笑っている。

 次に一言だけ話した女の子は、最初の女性と同じ様に長い白髪を持ち、見た目の年齢はラウラやシャリアと同じだった。

 最後の男性は眼鏡をかけて、かなり大きくリアクションをとっていたが、キョロキョロして他の人が見ていると分かると急にオドオドし始める。


「幹部かな?」

「その通りよ!私達が幹部の中のトップ3よ!!」

「嘘」

「私はそんなに強くないですよ!?」


 それぞれが反応する中で、オムニが瞬時に3人の懐に入ってバラバラの方向に吹き飛ばす。突然現れたオムニに3人は反応することが出来ず、簡単に壁に衝突する。先程のオムニの速度はミカが高速移動を使った時と変わらに速度を誇っており、事前に情報が無ければ避けられないとカイ達は感じた。


「見ててよ。言った通り、ちょっっっとだけ力見せるからさ」


 いつの間にか戻って来たオムニがそう言うと、剣が鞘に納められた状態で地面から出てくる。出て来た瞬間、カイ達の寒気を感じ、鳥肌が立っていた。

 オムニが出したその剣からは、禍々しい黒色のオーラが見えていた。周りで戦闘していた者達も、カイ達と同じ寒気を感じたのか戦闘を止めてオムニのことを見る。

 オムニだけは何食わぬ顔をしながらその剣を掴む。そして慣れた手つきで剣を抜く。抜いた瞬間先程まで放たれていた黒色のオーラが強まり、兵士や敵の構成員の中には、その禍々しさから倒れる者が現れ始める。

 剣の刀身は、周りのオーラに影響してか真っ黒であった。


「さて、糧になってもらうよ」


 そうつぶやいたオムニの声は、今までの楽しそうな明るい物と一変して、とても冷たい物だった。

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