第254話
「ここまで何も無いのか~……」
現在カイ達はガラスで隣の部屋が見える部屋に来ていた。だが、カイ達が見ているのは隣の部屋ではなく、目の前に映し出された映像だった。
隣の部屋ではクリミナルが椅子に座り、頭に機械をはめた状態で寝ていた。そして同じ部屋でリオが何かを操作していた。
クリミナルがつけている機械、それこそが記憶を見る
「もっと深い所には行けないー?」
「無理です。これ以上は負荷をかけることになります。今のクライムの体では耐えられません」
まず初めに昨日の記憶が消えたことについて調べていた。
本人が忘れただけで、脳内のどこかにはあるのではないかと調べたのだが、きれいさっぱり消えていたのだ。
続いて、他の記憶についても調べたのが、赤ん坊の時から現在の見た目の歳までの記憶しか脳内に残っていなかった。その様子を映像としてカイ達は見ていたのだ。
「ここ数年の記憶がまるまる抜けてると」
「敵も思い切ったことする」
「これ以上は続行不可能です。外します」
映像が消えたことで部屋が真っ暗になる。その間にはリオは素早く機械を外す、クライムを横に寝かせる。
「まぁ、今頃兵士達もこんな感じで調べているよ。悪いけど今日は屋敷でゆっくりしててね。メイド達に言えば大抵のことはしてくれるから」
リオが入ってくると同時にオムニは部屋から出て行ってしまった。
「4日後ぐらいにはまた観光出来るようになると思いますので、それまでは屋敷でくつろぎください。色々あるので退屈しないと思います」
「これってここらへんだよな?」
「あぁ間違いない。でもおかしいな。こんな建物無かったはずだが……」
兵士2人は、右腕に狼の刺青をしてある者達の1人の記憶を覗いていた。他にも数人で分担して脳内を覗いて行くと、全員が同じ場所同じ建物に出入りしていたのだが、地図と照らし合わせながら建物のことを確認しても、兵士達には覚えが無かった。
「南区にこんな建物あったらすぐ気づくよな?」
「あぁ。とにかく他の部屋の奴とも話し合おう。たぶんあいつらもここを見つけてるはずだろ」
見たことも無い大きな建物に疑問を浮かべながら、発見したことだったためすぐに話し合い、上層部に報告しに行こうとした兵士だが、調査中の部屋に人が入ってくる。
「おう、どうだー?」
「ん?いや、今調べ終わった所だ。そうだ。お前の巡回場所って南区だよな?こんな」
「……何しに来たんだよ」
入って来たのは同じく兵士だった。
片方は仲良さげに話しかけたが、もう1人が映像を消して懐からナイフを取り出して構える。突然のことに入って来た兵士も、話しかけた兵士も驚くが、落ち着かせようとする。
「おいおい、どうした。こんな状況になってるからピリピリすんのは分かるけどよ、やりすぎじゃね?」
「お前にはわかんねえのか。こいつ臭いぞ」
咄嗟に臭い嗅ぐと、意味が分かったのかもう1人も同じナイフを抜いて構えだす。
入って来た兵士からは強い鉄の匂い、血の匂いがしていたのだ。
「2人して酷いな~」
「おい、右腕を見せろ」
「はいはい」
そう言った男の右腕には大きく、しっかりと狼の刺青が彫られていた。
「……余裕だな。2人相手に勝てると思ってんのか」
「勝てる勝てる。君達くらい楽勝だよ。ねぇ?起きてるんでしょ?」
後ろにいる者が起きたのだと思って、最初に警戒し始めた兵士が後ろを振り向くと、相変わらず寝ており、すぐに前を向くと、どこから出したのか分からないが、剣が目の前にあった。
だがその剣が届くことは無かった。
「潜入してたとは言え、性格は変わってねえんだな!」
後から気づいた兵士がしっかりと受け止め、相手のことをはじき返したのだ。
「あいつは嘘つくのが上手いからな。気を付けろ」
「あぁ、助かった」
兵士達は気を取り直してナイフを構えながら問いかけだす。
「大体予想がつくが、他の奴はどうした?」
「もちろん殺したに決まってんだろ。拠点がバレると厄介なんだよ」
「じゃあ俺達も殺さないとな。お前には無理だろうが」
挑発で笑いながら言うが、効果は無くただただ真顔で受け流す。兵士はつまらなそうに舌打ちをしてから一斉に攻撃する。
「いつからだ!いつから裏切ってた!」
「裏切った?違うな。気づいたんだ。クリミナルの思想が正しいって。俺は正義を執行してるだけだ。お前ら、国言うことを忠実に従う犬は悪だ。だから正義の名のもとにお前達を殺す!」
狭い部屋だったこともあり、剣を満足に振ることの出来ない男が段々と押され始める。
「黙って死ね!」
この部屋で炎を撃てば自分もただでは済まないが、男は自分が不利だと言うこともあり自爆目的で放つ。その炎は普通だったら部屋にいる全員を燃やし尽くす物だったが、相手が悪かった。兵士2人の魔力は水だった。そのため炎は簡単に鎮火される。
「お前に俺達を殺すのは無理だよ。諦めろ」
「……いずれ必ず、近い内に必ずお前らには天罰が下る。絶対だ。それまで怯えて待ってるがいい!」
2人を殺すことが出来ない、そう思い諦めた男は付けている指輪に魔力を通すと爆発が起きる。嫌な予感がした2人は、後ろにいる男も守るように水の壁を協力して生み出し身を守る。
「……見事にバラッバラだな」
「これじゃあ記憶を漁ることも出来ねえか」
爆発に反応して、他の兵士達が集まり出す。
2人の兵士が崩れた壁から隣の部屋を覗くと、兵士はおろか、男の仲間であったはずの者も斬り殺されていた。
「こいつらのおかげで生きることが出来たな」
「そうだな」
2人は集まった兵士に状況を報告して、すぐに敵組織を倒すために奔走し始めた。
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